表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

旦那様が、妖の王? それでは、妃殿下というのは、文字通り、王の妻ということ?


 でも。妖の王は最も力ある妖がなるのだという。だから、私はその力の一部とするため、喰らわれるのか。


 そんなことを考えていた、私に旦那様はひとつ笑みをこぼして頬を撫でた。


 「美冬、あなたには俺の妻になってもらう。そして、いつか俺の子を産んでくれ」

つまりは、子を産むまでは生かされるけれど。子を産んだら用済みで、喰らわれるのかしら。


 「わかりました」

なんにせよ。私は箏蔵に与えられたものの恩を返さなければならない。


 頷くと、旦那様は、私を抱き抱えた。

「雅楽様!?」

慌ててしがみつく。美しい旦那様は力持ちなのか、それとも妖にとってはこんなこと朝飯前なのか。全くふらつくことなく、屋敷へと進む。



 屋敷の中は、外観から想像されるよりもずっと広く見える。もしかして、妖術でも使われているのかしら。


 屋敷の中にはいっても、旦那様の足は止まらない。いったいどこに向かっているのだろう。



 屋敷の最上階にたどり着いた。部屋の窓は開け放たれており、月がよく見える。


 その美しさに息を飲んでいると。


 旦那様が私を布団の上に寝かせた。

「!」

こ、これってそういうことかしら。そうよね、私は所詮子供を産むまでの道具──。


 「ずっと、夢を、見ていた」

旦那様が私に覆い被さるようにして、手を重ねる。

「美冬、あなたの夢だ」


 私の、夢?


 「夢の中で、あなたはいつもただ一人の男を見つめていた」

「!」

それって、もしかして。もしかしなくても。亮平さんのこと。どうしよう。まだそのときは結婚してなかったとはいえ、旦那様という妖がありながら別の人に恋心をもっているなんて、浮気、よね。


 今すぐ怒りで喰らわれたって、おかしくない。


 けれど、旦那様は相変わらず穏やかな瞳をしていた。そして、その瞳のまま顔を近づける。

「夢を見ながら、何度も思った。どうして、俺はあなたのそばにいけないのかと」

妖は本来なら世界の行き来は自由にできるけれど。盟約により、現実世界にいけるのは、花嫁契約を結ぶときと、花嫁を連れ去るときだけだ。


 「あなたを見ない男のことなんか、忘れてしまえばいいのに。俺なら、あなたを。あなただけを愛するのに。ずっと、そう思っていた。だが、」


 旦那様の指先が優しく頬に触れた。

「あなたが、あの男のことをまだ恋しく思っているのは知ってる。あなたの心が俺に追い付くまで待つから。こうして、そばにいることを許して欲しい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ