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鴉の運命の花嫁は、溺愛される  作者: 夕立悠理


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十六

「……それが嬉しいの?」

 3人ともぽかん、とした顔で私を見つめた。

「ええ」

 そんな3人に大きく頷いて微笑む。

 私だって、最初は旦那様に食べられると思っていた。他の花嫁だって、妖閻の世界にくることが不安でないはずがない。


「花嫁は違う世界からきて、とても心細いと思うの。だから、あなたたちが花嫁を思ってくれることが、一番嬉しいのよ」

 3人は、しばらく考え込んだ後、ぱっと顔を上げた。

「それなら僕、すっごく得意かも!」

「おれも! 花嫁の一番の味方になる!」

「あっずるい、オイラだって!」


 紅玉も時雨も飛翔もみんなキラキラとした顔で、頷いている。

「……そう。あなたたちの花嫁は、とても幸福ね」


 心の中で、私も、と付け足す。

 私の気持ちが追いつくまで待つと、そう言ってくれた旦那様。

 旦那様と出会ってまだ日が浅いけれど、妖と人の価値観は違うことは知っている。

 

 それでも、待つとそう言ってくれた。


 300年も待った花嫁を、まだ待つと。


 そんな旦那様に嫁げて幸せだ。

 でも、私はーー旦那様に幸福を与えられる存在になれるのだろうか。


「でも、僕たちが花嫁と会うのはずーっと先」


 紅玉の言葉に、時雨と飛翔が頷く。


「だから、おれたち、まずは妃殿下にたくさん優しくする」

「オイラたち、妃殿下にも笑ってほしいもん」


 まっすぐな三対の瞳が私を見つめた。

 私も3人に微笑もうとしてーー。

「ふふ。思った通り大人気だね、美冬」

「!?」


 ぐいと後ろに手を引かれ、すっぽりと抱き込まれた。

「あっ、陛下!」

「陛下だ」

「こら、頭を下げなきゃ!!」


 飛翔の言葉に、紅玉と時雨も必死で頭を下げる。


「楽にしていいよ」


 私を抱き込んだ張本人である旦那様は、穏やかな声でそう言った。

 ……それにしても、旦那様はどうやってここに?


 私の後ろには扉なんてなかった。


 いえ、ここは妖閻の世界。

 現世とは違うのだ。

 何が起こっても不思議じゃない……けど。


「子どもたち、俺は愛しい妃に用があってね。悪いが今日は、ここまでだ」

 頭を上げた3人は、旦那様の言葉に大きく頷く。

「わかりました!」

「妃殿下、また明日!」

「明日も楽しみ!」


 そう言ってすぐに部屋を出ていく。

 あまりの展開の速さについていけない。

「え、ええ……また明日」


 3人にそう言って手をふり返すのが、精一杯だった。

 


「さて、美冬」


 相変わらず旦那様は私を後ろから抱きしめられたままだ。


 そういえば、後ろから抱きしめられたのは、これが初めてではないだろうか。


「……は、はい!」

 

 意識すると、急に心臓が緊張で高鳴り出す。

 そのせいで、返事も声が裏返ってしまった。


 けれど、旦那様は、そんな私を笑うことなく、上から覗き込んだ。


 旦那様の瞳は、相変わらず穏やかで、でも確かな熱を感じる瞳だった。

「……っ!」


 かあっと、頬が熱くなる。

 ……だって。だって、その目が言っていた。

 どんな言葉よりも雄弁にーー私を愛していると。


「ねぇ、美冬」

 まるで、この世の宝物のように、名前を呼ばれる。


「…………はい」


 頷いてその続きを待つ。

 喉の水分がすべて蒸発したかのように、緊張で、乾燥していた。


「俺とーーデートしない?」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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