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十三

「美冬が美冬として俺のそばにいてくれれば、他に何も望むことはない」

 そう言って優しく旦那様は微笑む。



 ……でも。


「ふふ、納得してなさそうな顔だ」

 旦那様はさらりと私の頬を撫でた。


 その通りだわ。

 

「何かーー私でもお役に立てることはないでしょうか……?」


 私は、旦那様の役に立ちたい。

 そして、旦那様のことをもっと知りたい。


「……そうだね」


 旦那様は体を起こすと、首を傾げた。

「美冬、子供は好き?」




◆◆◆


「妃殿下だ!」

「きさきって何?」

「陛下の奥さんってことだよー!」


 口々に話しながら、興味深そうに私を見つめる三対の瞳。


 私は今、現世でいう教卓のような机の前に立っていた。

 旦那様が私に与えてくれた役割、それは、幼い妖の教育だ。


「初めまして、みなさん」


 私が一礼するとーー。



「初めましてー!」

「うわ、しゃべった!」

「当然だろ」


 妖の子供達は、ころころと鈴を転がすような声で、可愛らしい。


 それぞれ鬼と妖狐と鴉天狗の子供、かしら?


「妃殿下の笑顔すてきー」

「陛下の奥さんなのに羽がないのー?」

「花嫁だからだよ」



 ごほん。

 私が咳払いをすると、三人は私の方を見て、静かになった。

 それでも、相わらず瞳はきらきらと輝いているままだ。


「あなたたちに、私が人間や現世についてなど知っている限りのことを教えることになりました。

ーー美冬です」


 私が名乗ると、三人は椅子から転げ落ちた。

「僕、陛下に殺されない?」

「真名って、やばいよね?」

「陛下が先に知ってるに決まってるよー!」


 ……真名?

 どこかで聞いたことがある言葉だわ。でも、それよりも。

「大丈夫? 怪我はない?」


 慌てて三人の元へ駆け寄ると、三人はうるうると瞳を潤ませた。


「妃殿下、優しいー」

「優しいのすきー!」

「名乗りたくなっちゃうよー」


 三人に泣き止んで欲しくて、頭や背中を撫でる。


 どうやら、怪我はなさそうだけれど。


「……この世界では、名乗るのはよくないの?」


 少し落ち着いたのを見計らって、そう尋ねると、三人は教えてくれた。


「初めてがよくないよー」

「縛れちゃう」

「どこにも行けなくなるよー」


 その後も口々に知っていることを必死に話してくれたことを頭の中で整理する。


 この世界……妖閻の界では、初めて名乗った相手は、その人のことを従わせることができるのだという。


 だから、真名……本当の名前の代わりに、渾名を使うことが一般的なようだ。

 真名を名乗り合うのは、基本的に夫婦だけ、らしい。

 妖にはそれが真名か渾名かが感覚的にわかるのだという。


 ……あれ、じゃあ。


「玲凛や、雅楽様も……」

「陛下のは真名だよー!」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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