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 部屋の中に舞い降りたのは、一枚の羽根だった。

 白い羽根は、淡く発光しておりとても美しい。


「雅楽様とは、反対の色……」

 先ほど見た旦那様の羽根は、黒かった。

「この世界にも鳥がいるのかしら?」

 窓から空を見上げたけれど、この羽の持ち主は見つからない。

 近くで見ようと、その羽を拾い上げる。


 ――そのとき。


「!!」


 羽がちかちかと強く発光する。

 間近での眩さに目を開けていられない。

「……あ」

 光が収まり目を開けると手に持っていたはずの羽根は消えていた。

「残念だわ」


 綺麗だったから、旦那様にも見せたかったのに。


羽がなくなった手を握りしめる。

「……?」

 固い感触がして握った手を開く。すると――。

「なにかしら、これ?」

 手の中にあったのは、銀の指輪だった。指輪にはダイヤモンドのようなきらきらと輝く石が九個はめ込まれていた。

「きれい……」

 思わず月にかざして、その指輪を見る。


「はめてみないの?」

「!?」


 誰の声!?


 明らかに玲凛の声ではないその声の主を探す。

 どこかしら?

「……こっちだよ、こっちー」

 

 窓の少し上から聞こえた声に、窓枠から身を乗り出して、上を見る。

「ふふ。やーっと気づいた」

 窓の上の木の枝から、楽しげに細められた緑の瞳と目が合う。

 緑の瞳に、さらさらな長い銀の髪。そして、柔らかそうな銀色の耳。


 ――人間じゃない。

 妖狐……かしら?


「ねぇ、ねぇ。身に着けてくれないのー?」

「身に着けるって……」

「僕からの贈り物、気に入らない?」


 妖狐と思わしき美しい男性は、私の手にある指輪を指さした。

「これは、あなたのものなの?」

「そうだったけど、もう君のだよ。僕が君に贈った」


 くるくると、長い髪を指に巻き付けながら、男性は、というかぁ、と頬を膨らませた。

「あなた、っていう呼び名気に入らない。僕は、銀葉」

「ええと……銀葉さん?」

「銀葉でいいよ。君は?」


 緑の瞳が私をまっすぐに見つめる。

「私は、美冬」

「そう、美冬――。……ちぇっ、名乗りは僕が初じゃなかったか」

 ……真名で縛れないな。

 小さく呟かれた言葉に首を傾げる。

「真名?」

「なんでもなーいよ」

 銀葉は明るく首をふると、窓から部屋に入ってきた。

「それより、指輪、どう? 即席にしてはいい出来だと思わない?」

「……ええ、とても綺麗、だと思うけど――」

「よかったー。気に入ってもらえたみたいで。ねぇ、美冬」


 さすがに近すぎるわ。


「なにかしら……っ」


 銀葉は真摯な瞳で、あっという間に距離をつめ銀葉は私の手を掴んだ。

 そしてさっと私の手から、指輪を抜き取ると、――私の左の薬指にはめた。

「!? な、にを――」



いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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