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強くてニューゲーム(仮)  作者: しゅがぞう
第二章 聖槍・勇者・加護・王編
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第85話 王女:リネア・ミレイユ・トライデント

また約一週間が過ぎようとする。再度、トライデント国王との約束があった俺達冒険者一行は、ダウラスさんを迎えに行ってから、村の食材を持ち込み、王宮へ向かうことになる。


約束の時間まで少し余裕があったので、ひとりでルメリオさんのところへ顔を出した。


「ルメリオさん、先日はありがとうございました!」


「あぁ!カノン殿、こちらこそ!」

「ちょうどお知らせしたいこともあったのでちょうど良かったです!」


「あぁ本当ですか」


「えぇ、大まかに三点ですね。まず、チェスとリバーシの商業ギルドへの登録が完了しました。これ以降量産できる体制を整えて、順次販売活動に入っていきます。量産の手配は私共で進めていいですか?」


「えぇ、進めてください」


「以前はカノン殿のところでの製作という話もありましたが?」


「あぁ、多分、今は難しいので、それは問題ありません」


「えぇ。ではわかりました。そのように致しますね」

「あと次はこれですね...リバーシの献上品です。完成したので確認が終わりましたら、また献上に上がる予定でおりますが」


「はい...おぉ!これもいい具合に仕上がりましたね!」


「でしょう?表と裏にまた魔物素材を使ってますので、チェスにもひけをとらない出来に仕上がりましたよ!」

「いやぁ...またこれはこれで美しい...。なんていうのでしょうか...チェスよりも身近なのに愛着が沸きやすいんですよねぇ」


「じゃぁちょうどいいので、ルメリオさんもこれから王宮へ行きましょう!」


「えぇ!?こ...これからですか?」


「はい、この後に王宮へ入る予定なんですよ!ノリ的には前回と同じ感じなので、気楽にリバーシを紹介できると思います!」


「じゃぁ急ですが...そうさせていただきましょう!」


「じゃぁ、あとひとつは?」


「それは行きがけにお伝えしましょう!」

「ちょっと準備してくるので、お待ちいただけますか!」


ちょっと急がせてしまったようで申し訳なかったが、また改めるよりは手間も省けるし、かしこまっていない分だけ紹介しやすいのは、その通りだろう。


こうしてルメリオさんを連れ、冒険者一行とともに、早めに王宮へ入る。早めに入ったのは食事の準備もあるからだ。


...


「ふむ。カノンとその一行よ、よくぞ来た。今回は私的な食事への招待である。非公式なもの故、かしこまらずに楽しむがよい」


こうして、また食事会がスタートしたのである。


「カノンよ、あいすまぬな、この押し寿司は手間がかかると言っていたというのに」


「いえいえ、ユウリとあそこに座らせていただいている彼女達と、分担して作りましたので、前回より多く準備できましたから、問題ありません」


「ふむ。エルフの者達にも感謝を伝えねばならぬ。よくいっておいてくれ」


「はい。」


国王とそんな風に話していると、見かけない女性は席に着いていることがわかった。


「国王様、あちらの女性は...」


「おぉすまぬな。押し寿司に夢中になってしまった」

「ゴホン...リネア!ここへ」


「はい。お父様」


(お父様...国王の...娘!?)


...


「あぁ、すまない。紹介しよう、娘のリネアだ」


「カノン様、初めまして、リネア・ミレイユ・トライデントでございますわ」


「初めまして!カノン タイガと申します!」


急な紹介だったので、なんか不自然な感じになってしまった。


「あぁ、カノン、よいのだ。まぁ座れ」


「えぇ。ありがとうございます」


「うむ。リネアは第四王女でな、王位継承順位は八番、まぁワシのところでは末っ子だ」


「可愛らしい素敵な王女様でいらっしゃいますね」


「うむ。リネア、ヌシはいくつになった?」


「お父様、わたくしももう十五で御座いますのよ」


「おお、そうかそうか。すまんすまん」


「えぇ、いつまでもお子様扱いではリネアは不満で御座いますわ」


「ハハハ」


「カノン、恥ずかしいところだが、国王といえど娘の前ではこんなものだ」


「いえ、恥ずかしいだなんてそんな」


「カノン様、お聞きしてもよろしでしょうか?」


「はい。なんなりと」


「カノン様が持ち込まれた、あの「唐揚げ」ですが...あちらは何のお肉をお使いでいらっしゃるのですか?わたくしとても気に入りましたの」


「えぇ。ありがとうございます。前回は鶏肉だったのですが、本日は珍しい食材が手に入りましたので...」


「カノン...ちょっと待て。珍しい...肉だと?」

「何か嫌な予感がするのだが...」


「はい。今日の唐揚げはロック鳥の唐揚げです!」


「...。」


「カノン...ヌシは...」


「えぇ。ちょっと試してみましたら、抜群に美味しかったものですから」

「ダウラスさんにも食べて頂きたかったですし、国王様もあの時そう言ってましたので」


「...あぁ。そうであったな。確かに...ワシがそう言ったな...」


「カノン様?ロック鳥でございますか?」


「はい。美味しいでしょう」


「えぇ。わたくし本当に気に入りましたの」


「あちらにたくさんご用意がありますので、たくさんお召し上がりください」


「カノン様、ありがとうございます!」


タッタッタ...


...


「いや待てカノン...ふぅ...まぁよいか。確かに美味いからな...」

「呆気に取られて...言いたいことを失念してしまったわ」

「いやしかし...まさかロック鳥を唐揚げに食べてるとは知らずにいたわい」


「国王様も唐揚げを随分お気に召していたようなので、頑張りました」


「むう。カノンと話すときには、今後もっと注意せねばなるまいよ」

「ふむ。...そうだ、思い出したわ」


「えぇ。いかがなされましたか?」


「うむ。明日からでいい。リネアをカノンに預けたい」


「「え?」」


隣にいるユウリも目を丸くする内容である。


「ファハハ、こちらも驚かされてばかりだったからのう」

「いい気味である。」


「国王様?それは一体どういうことでございますの?」ユウリが思わず質問する。


「うむ。リネアは末っ子であるからな。王女とは言っても、王位を継ぐことは恐らくないだろう」

「リネアは外の世界への興味が強くてな、せっかく本人が外の世界を見たいと言っておるのに、ワシではそれを叶えることもできん」


「だからのう。この機会に...カノンに預けようという考えじゃ」

「カノンであればワシも安心だ。しかもユウリ達もおる。寂しい思いもせぬだろうよ」


「国王様?わたくし達は冒険者でございますし、王宮のような生活は望めませんですわ...」


「うむ。それも構わん。本人たっての希望じゃ。あまりにワシ達が構ってやれなかったもんだから、反動であろうか、冒険者になりたいなどと言うのだ」

「あれでいて、聖属性の魔法に適正があるようでの、才は皆が認めるほどじゃ」


「お待ちください国王様!?理由はわかりますが...」


「カノン。...これは命令であるぞ。ファハハハ」


...


「リネア、もう一度ここへ」


「はい。お父様。」


...


「お父様?お伝え頂けましたかしら?」


「うむ。国王として命令しておいたからの。断れまいて」


「カノン様。ご迷惑はお掛けせぬよう努めますわ...これからよろしくお願い致します」


「あぁでは...よろしくお願いします...」


「なんだカノン、いつものような元気が見えぬな?クックック」


こうして、また俺のしらない間にしらない話は進行し、また後日、リネア王女を迎えに来るハメになったのだ。

本話の食事会は前話84話の詳細報告とロックの魔物素材の買取について打ち合わせるものです。


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