第83話 名案?迷案?
第82話と第83話の同時公開です。
巨大妖鳥ロックの討伐を終えた俺は、ゲートでロザンスパイアに戻った。
...
「あら?カノン早かったじゃないか...その感じだと、やっぱり難しかったようだね」
「可哀そうなカノンだ...お姉さんが慰めてあげようかしらね」
「ダウラスさん!そういうのは結構でございます!わたくしがカノン様を...」
「あら?お嬢ちゃん?カノンを...なんだって?」
またアローレが、顔を真っ赤にして口を開けたまま固まる...。
「ハハハ、いや本当にこれまでにない強敵でしたけど...
「えぇ!?戦ったってことかい?...ということは逃げられたんだね?」
「ダウラス...いいのよ...誰もカノンさんを責めたりする奴はいないんだ...隊を組んだ討伐隊だって、何もできずに何度も取り逃がしてきたんだもの...」
「...。」
「それより...これからの身の振り方を住民と相談しなくてはならないからね。議会の決定が、住民の動揺を誘うようになってしまうだろうし...、先に住民に情報を共有しないと、動揺が混乱になってしまうわ...」
...何やら討伐失敗が前提になって、目の前で話が進んでいるようなのだが...。ダウラスさんもリンドルさんも、やや悲壮感に囚われてしまっているので、口を挟みにくい雰囲気である。状況を察したユウリが助け舟を出してくれた。
「カノン様...察するにその感じですと...」
「あぁ、ユウリすまんすまん。なんか劇場型の展開が目の前で進むもんだから、ついつい見入っちゃってさ。いやぁ、悪意はないのよ?」
そう言いながらゲートを開き、ロックの嘴と頭部をこんにちはさせる。
「あぁ...そうね...ロックっていうのは、そういう鋭い嘴をしていてね...って...え!?」
リンドルさんとダウラスさんが口をパクパクさせている。いい反応だ。俺の苦労が報われる。目の前で起きていることが理解できなかったのだろう。二人はそのまま白目を剥いて倒れてしまった。
「カノン様!やりすぎでございますわ!」
アローレも固まっているので、二人が倒れたというのに動き出さない。
「えだって、わざとじゃないって!やりすぎとかじゃないじゃん!」
とりあえずアローレの石化を解きつつ、二人をリンドルさんの家に運ぶ。
...
「は!?わたしは気を失ってしまったの!?いや...ちょっと頬が痛いわね...なぜかしら...」
気が付いたダウラスさんが、少し赤くなった頬に触れるが、それはユウリのせいである。ダウラスさんを起こすため、ユウリが頬をピシピシしていたのだが、傍目にも、ちょっと強めにピシピシしていたと思うのだ。
「ダウラスさん!気づかれたのですね!?倒れられた時にお顔を打ったようですわね...大丈夫ですか?」
ユウリも大概である。
リンドルさんも気がついたので、やっと落ち着いて、話をすることができた。
...
「まだ信じられないわ...これは夢?夢なのね?」
「リンドル!いい加減に正気を取り戻しなさい!」
「はぁ~。それにしても...わたしもちょっと現実に追いつけないわね...」
「あぁ...わからなくはないんですが...リンドルさんには、そろそろ議会へのアクションを考えていただかないとですね...」
「ごめんねカノンさん」
「いえ、別に大丈夫ですけど」
...
とりあえずリンドルさんは明日に議会場へ報告に行くと言う。どうやって話すかは考え中らしいが、悪いことを報告するわけではないので、俺達に悪いようにはしないとのことだ。
議会での結果を、俺達に報告したいので、暫く村に滞在していてくれないかとのことだった。
まぁ、リンドルさんが不在のお店を利用できれば、人目につかずゲートで出入りすることもできるし、三日間かそこらとのことだったので、とりあえずこれを了承した。村に戻るとかそういうのは後で考えよう。
リンドルさんに嘴の一部と羽毛の一部を渡して、また今晩は宿に泊まることにし、翌日早朝にリンドルさんを見送った。
「...さて、どうしようかしらね」
「ダウラスさん?それは?」
「うん。わたし達も国内への報告を考えておかないとならないわ」
「報告ですか?」
「そうよ。ブランケットの議会がどう動くかによるけどね?」
「ブランケットの...議会ですか」
「そうね大まかに考えると二通り...いや三通りくらいね」
「議会は魔物の討伐を、当然発表するでしょうけど...どう討伐されたのかをブランケット国内に発表するのか...その方法よ」
「はぁ」
「ひとつは、発表しないで危機が去ったことだけの発表」
「ひとつは、異国の冒険者が討伐したとだけ伝え、それ以上は発表しない」
「ひとつは、異国の冒険者の討伐を、国として認め、礼を尽くす」
「あぁ。もうひとつかしら...物語をでっち上げ、国内勢力で討伐したことにする方向とか」
「まぁ...こんなところかしらね?カノンあなたは...どうしたいの?」
「ええっと...なるべく穏便に...」
「そうよね。そういうとは思ったわ。そうなると...」
ダウラスさんが腕組みをして、少し空を仰ぎながら考え事をする。ちょっと見た目にカッコイイし、胸も強調されていい感じだ。眼福である。
「そうすると...どうあってもカノンに悪くないようにするには...うん。これならトライデント国もきっと大丈夫ね...」
「何か名案でも?」
「うん。わたしに任せななさい...」
「じゃぁ行くわよ!」
ダウラスさんが、また俺の腕にくっついてくる。
「行く?どこに行くんですか?お留守番もありますからね!?」
「わかってるわよ!」
「ほら、坊やもお嬢ちゃんも行くわよ!」
こうして俺達はダウラスさんに導かれるままに、リンドルさんのお店に入るのだった。
ダウラスさんの名案は次回明かされます。
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