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強くてニューゲーム(仮)  作者: しゅがぞう
第二章 聖槍・勇者・加護・王編
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第79話 リスクマネジメント

翌日は日の出とともに出発し、馬車の中でおにぎりを頬張った。予定では今日の夕方ごろには目的地に到着するだろう。


目的地の名前は「ロザンスパイア」、ブランケットの町である。


ロザンスパイアには、ダウラスさんの友人でもあり、以前ダウラスさんが冒険者としてパーティを組んでいた時の仲間がいるのだそうだ。


特別にダウラスさんから、その彼女に思い入れがあるわけではないが、時折連絡をくれる一人なのだそう。


そのパーティは、どこか決まったところに拠点を持って活動していたことはないらしいのだが、二人はギルドの依頼以外でも、行動を共にすることがあったそうで、パーティの解散後にメンバーはバラバラとなったそうだが、偶然をきっかけにダウラスさんとその彼女は、互いがいる所在を知ることになり、今に至るらしい。


彼女は後輩になるらしく、これまでも困ったことがあると、それとなく文を寄こすことがあったそうだが、文は何かアドバイスを求めるわけでもなく、世間話や最近の出来事、それに愚痴に近い内容が書いてあったと言っている。


ダウラスさん本人が言うには、「これまでもわたしからの返事で、何かが解決したわけでもないだろうに」と言っていた。


ダウラスはそう説明してくれたのだが、俺は、もしかしたらダウラスさんの認識とはちょっと違うのかもしれない、なんて思ったのだ。


それは昨日の出来事がそう思わせたのだ。


ダウラスさんが過去に組んだパーティや、冒険者としての腕前は気になるところだが、わざわざそれを聞くような野暮ったい真似はしない。ダウラスさんなら「あら?女ひとりにそんなことを聞くなんて...随分野暮な男だね?」なんて言いそうだ。


ただ、ダウラスさんはアローレとユウリの戦いを見て、ひと目でアドバイスができる程、戦闘の経験、もしくは人材の育成、または指揮能力に長けているのだろう。以前クオーツさんがそんなことを言ってたような気もする。


ダウラスさんは文をくれた彼女に、そんな言いぐさをしていたわけだが、その彼女はダウラスさんの返事にこれまで助けられたのかもしれない。


きっとそうなんだろうと思うのは、今回の文の内容からもそうだ。


文はノクトームさんが説明してくれたので、俺が直接みたわけではないが、ダウラスさん自身を頼った内容だったのだろう。


説明を聞く限り、魔物を討伐してくれとか、そう表現したものではなかったと思うのだが、もしかしたら、ダウラスさんなら良い解決策になるヒントをくれるかもしれない、その彼女は恐らく、そう思ったことは間違いないのだろう。


...


途中でお昼休憩をし、予定通り夕方にロザンスパイアに到着する。


正直びっくりした。ロザンスパイアは左程大きな町でもないらしいのだが、二階建ての建物が多く、町の整備も行き届いている。トライデント国の王都オベリクスに近い印象だ。


これが首都でもないのだから、ブランケットの持つ「技術力」は相応のものなのだろう。よくよく考えてみれば。小国と表現される国だが、メイン産業であった、鉄の輸出を停止しても、国としてやってこれたのだから、辻褄は合うのかもしれない。


何も、自国で使う分の鉄の生産を、やめたわけではないのだし、相応の国力はありそうだ。議会制民主主義を取り入れているのも政治的な発展と考えることもできる。


...


そして、ある服屋を訪ねる。時間的にはそろそろ閉店を迎える時間だろう。


「リンドル?いるかい?」


「...その声はダウラス...?」


店の奥から女性の声が聞こえた。


「あら、リンドル、久しぶりだね」


「あぁ、わざわざ来てくれたのね?」


「そうね、たまにはあなたの顔を見ないと忘れてしまいそうだからね」


「フフフ、ダウラスらしいもの言いね。...なんだかとても久しぶりに感じるわ」


女性はうっすらと目に涙を浮かべ、久しぶりの再会を喜んでいるようだ。

もちろんそれはダウラスさんもそうなのだろう。二人は再開を喜び軽く抱き合う。


...


少し落ち着いたところで、俺達のことを紹介してくれた。


その後、文を出した経緯を説明してくれた。大まかな状況はノクトームさんが説明してくれた通りだった。


..


「ごめんねダウラス、あなたにこれを伝えても、それで解決する内容でないことは理解していたのにね」


「リンドル、それは構いやしないよ?あなたも辛かったのだろうからね」

「それよりも、少しは元気になれたかね?こんな、しおれた店で、店主もしおれてるようじゃ、商売にもならないだろうにね」


「あら随分な言いようね...でもそうね...ダウラスに言われないくらいは頑張らないとならないわね」


リンドルさんはダウラスさんの後輩ってくらいなのだから、決してしおれてるわけではない...いやむしろ男性的には魅力を感じる身体つきのタイプなのだが...「しおれている」と表現するのは流石のダウラスさんである。


「それで...こちらのカノンさん達は冒険者なのね?」


「そうね。カノンは腕利きの冒険者なの。どこの国にも属してない冒険者よ」


ダウラスさんが説明してくれた通りだ。先日俺達は、勲章の授与を受けたわけだが、騎士団に認知され、その功績を称えられただけで、決してトライデント国に属した冒険者だというわけではないのだ。


ポッと出の俺達なので、他国にまで名前が轟いているわけではない。そう...今回の魔物の討伐には、これ以上ないほど条件を満たした冒険者なのである。


「まぁ、見た目は華奢かもしれないけど...少し期待できるかもしれないわね?」


「でも...ダウラスもカノンさんも信じていないわけじゃないけど...魔物は...」


「ロック...だろ?」


「そ...そうね。腕利きでも...冒険者数人でなんとかできるレベルじゃないわ」


個体名:ロック(ロック鳥)

モンスターランク:SS-S級

巨大妖鳥と言われる超大型の鳥型の魔物。肉食であるがその生態までは詳しく解明されていない。小高い丘に巣を作り、長くその地を根城とする。基本的に単体でいることが多いが、子と見られる個体が一緒にいる姿も目撃されたと記録もされている。巨体の維持のために大量の食事が必要であり、幼体から成体にまで成長をしたという記録はない。その為発見される場合は幼体であることが多く、直接的に人的な被害をもたらすことはほとんどない。未確認ながらも「魔法」を個体スキルとして使用したという記録もあり、成体は知能的にも発達しているのではないかと思われる。身体は繊維の細かい羽に包まれ、剣であっても羽の超繊維を切断することはできないとされている。


「それに...仮にロックを討伐したとしても、国として礼をするのは難しいわ...」

「今回は個人的にダウラスの相談をしたから...議会を通したわけじゃないの...」


「あら?そんなことが心配なのかい?わたしが連れてきた冒険者よ?」

「礼なんか必要ないわ?そうでしょ、カノン?」


「いやまぁ、そもそも討伐できるかわかんないわけですし...、その辺は置いておいてもいいんじゃないかと...」


「リンドルそれにね?礼なら...カノンには別の形でお礼を尽くすって方法もあるだろうね?」

「しおれていてもそれくらいなら...できるだろ?当然わたしも...考えておかなきゃね?」


アローレが顔を真っ赤にして、口を開けたまま固まる...。

ユウリが「いえ!そういうのは結構ですので!」と強い口調で言い切った。


「カノン様は報酬とかそういうのは固辞するタイプですので!」


ユウリがさらに重ねて言い切る。よほどそういう危険から俺を遠ざけたいらしい。

今回、なんだかんだ同行したこともそうだが、リスクマネジメントとしては、ユウリを見習うべき会社員のおっさんは多いのではないのだろうか。


「ハハハ、まぁどうなるかわかんないですし、期待されてもアレなんで...討伐の期待よりは、今後への備えを優先してください」

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