第8話 マジックリングの実験(魔法)
魔法によるマジックリングの結果を待つまでに、タイレンとシュウレンに加え、
ユウリを交えて、今後の村の方針について話し合う機会を設けた。
タイレンとシュウレンだけでもよかったのだが、
ユウリも是非にということだったので来てもらったのだ。
「あれ?ユウリのマジックリングのテストは?」
「ハイ。私は「誘導」と「威力」だったのですぐに終わりましたわ」
「「誘導」と「睡眠」でテストしているフェゼットが時間かかっているようで
ございまして」
「「睡眠」は動物に当てないとなんとも言えないので、
狩りをするメンバーと動いておりますようですわ」
「結果をお纏めしたうえでご報告させていただきますわ」
「うん。わかった。じゃあこれからのことなんだけど...。」
「食料事情は大きく改善したと思うけど...これからはどう考える?」
「ハイ。今後は更なる食料事情の改善として、農作業に力を入れる傍ら...
村の防衛についても強化したいと思います!」とシュウレンが言った。
「カノン様はいかがお考えでしょうか?」とユウリが聞いてきた。
「んー。俺はその優先順位はわからないけど、いくつか気になる点はまだまだ多いよねー」
「と申されますと?」とタイレン
「シュウレンの提案の他で言うと、大きな要素に街の整備だよねー。
湧き水の装置自体も整備して、より清潔に使いたいしー。でも整備の仕方も
わからないからねー」
「タイレンに聞きたいんだけど、もう少し積極的に他の街と交流をすることは
叶わないのかな?」
タイレンが少し考えた様子で口を開く。
「カノン様、我々はこれまでは狭い世界に生きていましたが、この間発生した
病気の蔓延で、我々も異文化や他種族との交流を、考えなくてはならないと
思っていたところですじゃ」
「もしもカノン様が村を訪れてくださっていなければ、
この村は恐ろしい結末を迎えていたかもわかりません...。」
「他種族との交流は、我々の先祖にとっては「恐怖」で
あったのかもわかりませんが、先日のようなことの方が、今は脅威と考えます。」
シュウレンが続く
「少し以前から「他種族との交流」が、村で議題にあがることもあり、
カノン様のお導きがあれば、我々はそのように対応しようという結論に至りました」
「うーん。そうか。やや重いから無理にとは言えないけどね」
「じゃあこうしよう!とりあえず目の前にある小さな課題をクリアしてみよう!」
「と言われますと?」とユウリ
「ふっふっふ。農作業と防衛はその可能性もあるんだろうと、
試作でマジックリングをいくつか作ってみたんだ!」
ごそごそとポケットからまた十二個のマジックリングを取り出す。
今度は農作業にも使える「軽量」が八つ。クワを振るときに使えそうだ。
その他に「剛力」と「切断」を二つずつ。
「これまでに作成した「誘導」六つ、「睡眠」四つ、「威力」「消費」が
一つずつ、 にこれが加われば、万一有事の際にも村の防衛力は上がる
だろうし、 「軽量」もいい仕事するんじゃないかと思うんだよ」
「「「さすがカノン様でございます!」」」
「魔法のテストが落ち着いたら、今度は今渡したマジックリングのテストを
する間に、 ラクレットの村にいって何かいい情報がないか調べてくるよ!」
「武器とかは村にあるのかな?」
シュウレンが答える。
「最低限のご用意はございますが、十分とは言えない状況です」
「何せしばらくは平穏に暮らしてましたし、生産できるものもないものですから、
外部との取引は行っておりませんでしたので」
「うん。そうだろうね」
「冒険者もいるってことは、冒険稼業でお金を稼ぐこともできるかも知れないし、
武器やその他のものを揃えるのに「外貨」を稼がないといけない面も、
否定できないからな!」
タイレンが口を開く
「そういうことでございますれば、ユウリをお連れください」
「ユウリはこう見えて冒険者登録をしておりますので、冒険者として登録されるの
であれば、きっとお役に立つことがあると思われます」
「カノン様!是非私をお供にお連れください!」
(うん。採取などはともかく、何せ魔物とも戦ったことないからな...。)
「助かるよ!」
「まあゲートがあるから外で食べ物に困ることもないだろうし、
パーティーを組むような仕事でなければ基本的に村に戻ってこれると思うから」
「留守にすることもあるだろうけど、食料なども含めて問題ないよね?」
タイレンが言う
「ハイ。何も問題ございませんですじゃ」
「じゃあそういうことで、魔法テストの結果を待ってから出発としようか」
「その間、カミュとラヴィのお世話も頼めるかな?」
「「「もちろんです!」」」
…
その晩、狩りのチームが獲物を仕留めて帰ってきたこともあり、
魔法によるテストの結果が報告された。
「カノン様にフェゼットからご報告申し上げます!」
フェゼットが続ける
「カノン様より賜ったマジックリングは、今回についても絶大なる効果を発揮しました!」
「フェイム報告を!」
「誘導」と「威力」のテストを行ったフェイムが口を開く。
「使える火魔法の火炎の槍:(ヒート・ジャベリン)でそれぞれをテストしました
ところ、「誘導」は先のテスト結果と同じく、
通常直線的な火炎の槍:(ヒート・ジャベリン)に
誘導効果が加わり、的への命中率が大きくあがったようでした。」
「また「威力」についてはおおよそ1.5倍以上の出力は間違いありません。
言いすぎでなければ体感的には二倍近い出力であろうかと思います!」
続けてユウリが口を開く。
「私は「誘導」と「消費」のテストでございましたが、
誘導はフェイムと同じ感想でございますわ。」
「「消費」についてはステータスで確認しました。
土魔法の岩礫:(ブロック・スロー)、
岩の防壁:(アース・ウォール)、
岩操鉄槌:(アース・マニュアル・ハンマー)に加え、
火炎の槍:(ヒート・ジャベリン)で試したところ、
通常の半分のMP消費で間違いございませんわ」
「ちなみに上書きの効果については呪文詠唱後、発動までに意識を
切り替えることで上書きされるようで、発動後に急いで意識をむけても
上書きされることはございませんでした」
(ふむふむ)(ってゆーかユウリは二属性が使えるのか)
「魔法ごとの打ち分けも可能で、二つのマジックリングを片手に装備し、
火炎の槍:(ヒート・ジャベリン)で誘導を意識し、
直後に詠唱から始めた岩の防壁:(アース・ウォール)で消費減を
意識したところ、それぞれの魔法で効果があったことを確認いたしました」
(ふむふむ)
「なお、この際にマジックリングをよく見ていると、マジックリングの
効果発動時にわずかな時間でほぼ一瞬ですが...リング自体が発光していた
ようでございます」
「何度か試しましたのでこれは間違いございませんですわ」
(おぉっ。俺もしらない事実が出てきましたよ)
「最後は私フェゼットからです!「誘導」と「睡眠」のマジックリングの
効果ですが、先のテストと同じ結果となりました。「誘導」では命中率が、
「睡眠」では50%程度の確率で効果が見られるようでした。」
「今回獲物を追って、普段はあまり踏み込まない森の奥地までいったところで、
フィリンググリズリーと遭遇しましたが、マジックリングのおかげで難なく
狩ることができました!」
ザワザワ
数人の村人がどよめく、
「フィリンググリズリーっ?!」とユウリが言う
「フィリンググリズリーってモンスターランクC級から、
個体によってはB級にもなる魔物じゃないの?!一体どうやって?!」
「いやそれが流石に魔法の力だけでってわけにもいかず、
「睡眠」のマジックリングを持った弓使いと、
数人でひたすら弓を射ながら、魔法を打ち込んで...」
「寝込んだところを急所に剣をたてるって方法を繰り返して...。」
「普段であれば一目散で逃げるところですが、
マジックリングのお陰で気分があがってしまっていたので...」
(フェゼット...。温厚そうな見た目によらず、お調子者なところもあるんだな)
「ふう...」タイレンが大きめの溜息をついた。
「フェゼット...。無茶をするでない」
「すみません...」
「ただマジックリングには、とてつもない可能性が秘められていることを実証
できたものと思います!」
(確かにそれはチートだわ。一度睡眠の効果を及ぼした魔物に対しても、
続けて効果を加えることができたってことだもんな...。)
(ずっと俺のターン!ってやつじゃん...。)
「うん。皆ありがとう!フェゼット、次からは無理しないようにね!」
「ハイ...。」
こうして二回目のテストの結果の報告を受け、
いよいよ明日からはラクレットの街にいくことになったのだ。
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