第73話 トライデント国、王都オベリクス
短めですので、第73話と第74話を同時公開です。
王との謁見が終わった翌日、俺は村で何もすることなく、少し考え事をしている。
昨晩は村に戻ってから、早めに食事をし、早めに休んだのだが、あまりよく眠れなかったのだ。慣れないことをしたので、疲れていたのは間違いない。身体も多少疲労を感じていたはずだ。
だが、頭の中で昨日の出来事が繰り返し思い返され、少し心が落ち着かないのだ。
そう。昨日俺の知っているワードが二つ、他の人間から出たからだ。
ひとつは王が言っていた「トライデント」
もうひとつがアイオロスさんが言っていた「オベリクス」だ。
俺はこれまで知らなかったのだ。この国の名前が「トライデント国」で、王都の名前、そして勇者の名前が「オベリクス」であることを。
なんで気にもしなかったのだろう...。
「トライデント」は俺が持つ聖槍の名前であり、「オベリクス」は聖剣の名前なのだ。
何か関係があるのだろうか?ただの偶然...には思えない。
そういえばあの時と一緒だ。地底湖で体験した不思議な出来事。
こう...頭に、もやのようなものがかかっていて、その先、これから先の思考ができなくなるのだ。だけど...考えられないのだから考えようがないのだ...。
...
えらく天気のいい今日は、気温もちょうどよく気持ちがいい。
なのでとりあえず、朝食をパンですませてから外に出て、そんな事をそんな風に...顔に頬杖をつきながら思っていたのだが...そういえばと言う人物?が歩いているのを発見する。
玄武である。
「なぁ玄武、ちょっといいか?」
「おぉ白虎か!なんだなんだ?もう飯の時間か?」
「いや、まだお昼までは時間あるぞ」
「ん?じゃぁなんだ珍しいな?」
「ところでお前ぇのその姿も最近見慣れたぜ?」
「あ、そう?最初は変って言ってたじゃん?」
「まぁ、そりゃそうだろう?白虎だってわかってるのに、見た目が違うんだからよ?」
「まぁ、そうかもしれないな」
「それでさ、ちょっと聞きたいんだけどさ。...玄武さ、なんか思い出した?」
「いや。全くだな!」
「ハハハ、そうかそうか」
「なんだよ白虎?どうしたんだ?お前ぇさんはなんか思い出したのか?」
「いや俺は全然だよ」
「そうだよなー。不思議なもんでなー」
「でもさ最初あった時さ、顕現したてだとそうなることもある...とか言ってたよな?」
「あぁ。そう言ったな」
「それってなんでそう思ったの?」
「うううん?なんでだろうな?よくわからないな」
「わかんないのかい」
「そうだな。わかんないんだけど...感じるとか言うのが正しいのかもな?」
「わかんないけど感じる?」
「おう、そうだな。オイラぁオイラがなんでここにいるのかはオイラにもよくわかんねぇんだよ」
「ふむふむ」
「だけどな?別にそれで平気なんだよ。これまでも...こうだったような気がするんだな」
「なるほどぉ。これまでもねぇ...。そう感じるってことなんだな?」
「そうだな白虎。そんな感じだ。そう感じるんだよ」
「感じてることが自然だとすると、「そう感じることが全て」かぁ。それが「行動の動機」でもあり...
「あぁ待て待て白虎!そりゃオイラぁにゃわかんねぇよ?難しいよ」
「でもよ?それがオイラぁ達の普通だとするとな?いつかわかるだろうから大丈夫だろ?」
「なんか哲学っぽい?」
「テツガク?なんだそりゃ?美味しいのか?」
「いや美味しくはないな」
「なーんだ、じゃぁ考えてもしょうがないかぁ」
「ハハハ、玄武っぽい」
「んぁ?なんだそりゃ?褒めてんのか?まぁいいか」
「いや玄武助かったよ、なんか少し楽になったわ!」
「おういいぜ白虎、長として当然の責務だからな?白虎に連れてこられたこの村も、居心地いいしな?なにより飯が美味いのがいいな!地底湖のアガダデは美味くなかったからな?」
「うんうん。そうだろ?玄武サンキューな!乾かない内に水浴びしろよー」
「おうおうわかったよ!先に飯に気づいたら呼んでくれー」
「あぁ!...でもまださっき朝飯の時間だったんだから、お昼までは全然まだまだだぞー」
アガダデが何なのかはよくわからなかったが、俺は玄武に礼を伝え散歩をした。さっきまで何か重く...気になってたけど、玄武と話したらどうでも良くなった。
俺の知らない知識を埋めるには、まだピースが足りないだけなのだ。
玄武言うように「自然にそれを知る」機会を待てばいい。
心も軽くなったし、天気もいいし、村のパトロールをするとしよう。
主人公の知らなかった国名と王都の名は第71話と第72話で初めて知ったものでした。
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