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強くてニューゲーム(仮)  作者: しゅがぞう
第一章 聖剣・魔剣・伝承・呪い編
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第4話 エルフと伝承

三日目。あと数日はこの宿屋を拠点とすることができるので、

今の俺に足りないものを整理してみる。


① お金

② 世界の知識

③ 魔法の種類

④ スキルの使いどころ

⑤ 今後の方針


(お金に関してはいわゆる冒険者的な活動をすればいいのだろう。

圧倒的に足りないのは知識だ。そしてこれから何をしていけばいいのかさえも

わからない...。)


不親切な俺の強くてニューゲーム。普通であれば神託やイベント、チュートリアル

など、冒険をガイドしてくれてもよさそうだが、それが俺にはない。


(どれから手を付けていいかさえもわからない。)


そう思いながら、宿屋で出された朝食をいただく。朝食にでてきたのはパンと

シチューだ。 味はなかなか悪くない。ただパンは想像以上の硬さだ。


(とりあえずカミュとラヴィにもご飯を上げなきゃだな)


召喚された龍だから、食事が必ず必要なのかはわからなかったが、

折角できた相棒と楽しく過ごしたいのだ。


そう思い、街の外にでた俺は、人気のない森に入り、カミュとラヴィを召喚する。


ゲートから魚を取り出しカミュとラヴィにあげた。


(生のままでも食べれるみたいだな)


そう思っていると、


...ガサガサ


(しまった。何かいる?)森のなかだと油断していた。

聖剣を召喚し、臨戦態勢に入ろうと思った瞬間、森の茂みから、小さな女の子が

現れた。


「凄い!可愛い!」


少女はカミュとラヴィに警戒する様子もなく、近づいてきた。


「お兄さん!この子龍はお兄さんのペット?」


「う...うん、まぁね...。」


よくみると少女の耳が尖っていて、少女はエルフではないかと察知する...。


「お嬢ちゃんは人間??じゃないの??」


「うん。わたしはエルフだよ?あ、でもこれは言っちゃ駄目ってお父さんが

言ってた気がする。ごめんお兄さん!今のなし!」


「ところで...お兄さん?この子龍...なでてもいい?」


「え...あ、うん。構わないよ??」


カミュとラヴィも全く嫌がる素振りはない。むしろウェルカムといった様子だ。


...


「お嬢ちゃんはどこから来たの?」


と質問をしたところで少女が少し焦った様子になる。


「わたしね、村から助けを求めに街にいくところなの...。」


「助け?助けるって何を...?」


「うん。わたしのお母さんとお父さんが病気になっちゃって、

村の大人たちもみんな同じ病気になっちゃったみたいなんだ。だから街に...。」


こんな小さな子が助けを求めている。ここは大人として力になってあげたい...。


「街に行ってどうするの?」


「街にいけば浄化か回復の魔法を使える人間がいるかもしれない、

お薬があるかもいれないって大人たちが話してたんだ。だから...。」


(...浄化と回復かあ...俺、できそうだな...。)


よく見てみると少女もあちこちに傷ができてる。


「お嬢ちゃん。ちょっとお兄さんに傷をみせてごらん?」


少女の手に右手を翳し、聖光回復:(シャイン・ヒール)と唱えてみる。

少女の傷が見る見るうちに癒えていった。


「お兄さん凄い!」


少女は驚いた様子でこちらをみている。


「お兄さんわたしの村にきてみんなを助けてくれない?」と少女がお願いをしてきた。


(ついにイベント発生か!?)


そう思うがあまり自信がもてない...。


少女にここで少しの間、カミュとラヴィと一緒に待つように言い、

一度街の出入り口まで行き、門番の男性に聞いてみる。


「あぁ昨日のお兄ちゃんか」といいながら門番の男性が俺に気づいた。


「門番さん、この街に医者か回復魔法が使える人はいますか?」


門番の男性は少し間を置いて話した。


「この街は小さな街だからどちらもいないよ。

どちらも貴重な人材だからね...。何かあったのかね??」


事情を話そうとしたが、少女がエルフであることを思い出し、

事情を説明するのをためらう。そういえばこの街に入って人間以外を

見かけていないことを思い出した...。


「いえ、なんでもありません。ありがとうございます!」


駆け足で少女のもとに戻る。


「お嬢ちゃん、この街にはお医者さんも、回復の魔法も使える人は、

お兄ちゃん以外にいないみたいだ。」

「役にたてるかわからないけど、お兄さんだけでもいいかな?」


「うん!村まで案内させて!」




(本当に俺で役にたつのだろうか?)


そう思いながらも少女に森の深いところまで案内された。


...


...



一時間ほどは歩いただろうか、薄暗い森のなかで霧がかったもやを抜けると、

エルフが暮らすという村に到着した。


「お父さん!お母さん!お医者さんを連れてきたよ!

このお兄さんが魔法で私の傷を治してくれたの!」


ベッドに伏せていた人物は意識レベルが低いようで、反応をみせない。


相当な重症なのかもしれない。


男性のエルフにむかって手をかざし、聖光回復:(シャイン・ヒール)と唱えてみる。


...


右手が少し発光したが、男性の様子は変わらない...。


今度は聖光浄化:(キュア・エーション)を唱えてみる。


...すると男性の顔色が見る見る内に明るくなったのだ。


「こ...これは!?」


すっかり顔色も良くなり、身を起こせるほどに症状が改善したエルフの男性は、


「御仁!妻を...妻を!」


と俺の手を握り、懇願してきた。


今度はベッドで伏せたままの女性に手をかざす。


「聖光浄化:(キュア・エーション)」


お父さんに続き、お母さんの顔色も見る見るよくなっていった。


魔法による症状の改善に確信を得て、俺は少女に案内されるまま、村中をまわった。


何という状況だろう...。大人はそのほとんど...いや全員が病に侵されているじゃないか...。


聖光浄化:(キュア・エーション)


聖光浄化:(キュア・エーション)


聖光浄化:(キュア・エーション)


...


努力の結果、ほとんどの村人が魔法で回復した様子が見られたものの、

栄養が不足しているのか、身体は瘦せ、元気とは言い難い様子だ。


それでも比較的症状の軽かったエルフの村人は、俺に手をあわせ拝んでいるようだった。


その後俺は、歩ける程度に改善した数人のエルフの村人と、一緒に食事をつくる

ことにした。


村にはあまり食材もなかったが、ゲートからとりだした魚をぶつ切りにし、

いくつかの食材をいれて水で煮て、家にあった塩で軽く味付けし、

食べやすいようにとスープを作った。


病気により暫く食事がとれなかったのだろう。食事をするとエルフの村人たちは、

少しずつ回復している様子だった。


...


村に夜が訪れる頃、長老を名乗るエルフがお供数人を連れ、挨拶に来た。


「この度は本当にありがとうございます...。御仁...お名前は?」


(ああ、そうだった。名前を言うのも忘れていた。)


「ご丁寧にありがとうございます。私はカノン タイガと申します。

それよりも皆さん症状が良くなっているようで本当によかった」


「カノン殿。本当にありがとうございます。

村人たちも次第に回復しているようで、

なんとか元の村に戻れるのではないかと思います。」


長老が続ける


「しかも一緒に料理まで作っていただいたそうで...」


「いえいえ。あまり食材もなかったですが、皆さん栄養がとれていない

ご様子でしたので作ったまでですよ。本当はもっと消化にいい食事の方が

よかったでしょうに...。」


「村にはろくな食材はありませんでしたのに、

魚まで入ったスープなんて...。この魚はどちらから?」


「ああこれですか?これはですね...。」とゲートから魚を取り出してみる。


村長さんが絶句し、驚いた様子だ。


(あれ?魔法の存在はしっているはずなのに、これには驚くんだな?)


「素晴らしい...。カノン殿は回復魔法の他に魔属性の魔法までお使いになられるのですね。」


「長寿である我々エルフでも、魔属性の魔法、「ゲート」の使い手を目の当たりに

することはありません...。しかも文献で残る程度にしか、

その存在が知られていない魔法でございます...。

確かエルフの文献では...ゲートは本来移動魔法だったと聞き及んでおります...」


(しまった。やってしまったのか)


村長!お兄ちゃんはね!かわいい子龍も連れているんだよ!


村まで案内してくれた少女のエルフ(アリア)が子龍についても

紹介してくれたので、 カミュとラヴィを召喚してみた。


村長さんとエルフの村人が目を丸くしている...。


(あれ?やっぱりまずかったかな?)


俺の心配をよそに、アリアはカミュとラヴィと遊んでいる。


「...カノン殿、是非ともおもてなしさせて頂きたいと存じますが、

今日はもう夜も遅い。今夜はお泊りいただける場所をご用意いたしますので、

そちらでお休みになってください。」


「ええ、ありがとうございます。おもてなしは必要ありませんが、

ご厚意に甘えてこちらで一晩お世話にならせていただきます。」


こうして俺はエルフの村で一晩泊まることになった。


...


...


次の日


朝目覚めて部屋からでたところ、村長を先頭に100人を超えるエルフの村人が平伏していた。


「カノン殿。いやカノン様!昨日は本当にありがとうございました!

エルフの村人全員で、あなた様を歓迎申し上げます!」


「えええ、いやいやそんな大したことではありませんよ!みなさんおなおりください...。」


伏していた村人が顔をあげる中、村長は平伏したまま続ける。


「いえ。カノン様!カノン様は伝承に伝わるお方とお察しします!

どうか歓迎と同時にこの村をお導きくだされ!!」


(歓迎はありがたい...。けど。伝承??とか?一体なんの話だろう?)


村人全員が平伏しているのもアレだと思い、場所を移し、代表の数人から話を聞くことにした。


エルフの村にはこう伝わるらしい。


【魔王が顕現せし時、世界は争いをやめた。各国が精霊の力を持って魔王に

対抗するが、

魔王が放った呪いと配下の力は強大で、やがて世界の半分が魔王のその手に落ちた。

各国は魔王を討つため互いの協力を持って精霊の力を集約し、精霊の力を宿した

勇者が現れる。

勇者はその精霊の力で魔王を滅ぼし、世界に平和が訪れる。】


【魔王の消滅を世界は喜ぶが、魔王の消滅とともに、聖なる剣と勇者は

どこへともなく世界をあとにする。】


【訪れた平和が当たり前になるころ、また世界は混沌の影を知る。魔王よりも強大な混沌の渦は知らぬ間に世界を巻き込み人々を苦しめる。世界の全てが混沌に染まる前、龍を従えた使者が魔王に代わり顕現する。使者は扉より出る知を持って世界の礎を開く、使者は新たな理の万物である。

天が使者を連れし時、その奇跡を目の当たりとするならば、全てを委ね、全てを持って応えよ。】


【世界の礎が築かれる時、人はまた最悪の厄災に焼かれたことに気づくが、礎はまた人に温もりを与える。愚者がそれを歪める時、まだ見ぬ災禍が燻ぶるが、愚者がそれに気づく時、災禍はやがて礎になる。使者が賢者を知る時また、消えた勇者は再臨する。象徴たる証しを大地に収めることで目覚めた使者は、天使こそが使者であることを喜ぶ】


どうやら伝承にある人物、それがまさに俺のことだと思っている様子だ。


伝承では、魔王は勇者によって滅ぼされている。

ということであれば、強くてニューゲームであることが裏付けられる恰好だ。


仰々しいのも苦手だが、歓迎の善意を無下に断ることもできない。


村長によれば特に直近は作物も不作で、森の恵みも薄く、

このままでは村が立ち行かなくなるとのことだった。


このエルフの村は隠れ里になっていて、たまに魔物が迷い込むことはあるものの、

村自体を知る人が少ないらしく、外部との交流は意図的に行っていないのだそうだ。


それでも長く平和に暮らしてきたエルフであったが、急に村で原因不明の疫病が

流行りはじめ、村の存亡がかかっていた状況であったのだそうだ。


そんな中、子龍を連れた俺が現れたのだから、伝承を鵜呑みにする気持ちも

わからんでもない。


俺自身が伝承を信じているわけではないが、困窮したこの村の状況を放って

おくわけにもいかない...。しばらくはこの村の復興に、尽力してもいいのかも

知れない。


何より俺はこの世界で何をしなければならないのか。全く目標もないのだ。

色々聞きたいこともある...。


「わかりました。仰々しい歓迎は結構ですが、しばらくは村に滞在し、

できることを協力させていただきます!」


「おお!カノン様!本当にありがとうございます!!!」

ご覧いただきありがとうございました!モチベに繋がりますので、よろしければブクマと評価頂ければ幸いです!

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