第37話 ミンステイルの猫耳
それからラヴィに再度咥えて貰って移動し、目的のミンステイルに到着した。
ラヴィにはすまないが一度俺のなかで眠りについて貰う。
このミンステイルはルミナーゼの南東、ラクレットからは北東に位置する街で、
貴族家がある。街としてはルミナーゼに負けない活気があるようだ。
元々農業が盛んな自然に恵まれた地域だったようだが、
現在では食品加工や醸造業なども盛り上がり、引っ張られるように商業も活性化
しているらしい。
とりあえずフィンドールさんに言われた通り、冒険者ギルドに顔を出そう。
道すがらすれ違った冒険者に場所を尋ね、冒険者ギルドに行ってみると、
ルミナーゼと同じくらいの立派な支部で、冒険者も多いように見えた。
受付で名を名乗り、支部長さんを指名すると、受付の女性は怪訝な顔つきでやや
不振なものを見る目でいたが、戻ってきた時にはニコニコしていた。
二面性のある女性である。
続けてスクエイトさん風の風貌の男性が出てきた。
「おぅ、どうもこんにちは、支部長のハインケルだ」
「初めまして、カノンと言います」
「ちょっと場所移すか」
見慣れぬ冒険者のためにわざわざ支部長が出てきたことで、やや視線が痛い。
気づいたハインケルさんが気遣ってくれた。
「ちょっと狭くて申し訳ないが」
「いいえ、わざわざ申し訳ないです」
「で?兄ちゃんがアレだろ?噂の?」
「噂ですか?」
「あぁすまねぇ。噂かどうかは本人じゃぁわからねーもんな!」
「ハハハ」
乾いた笑い
「で、何だか聞くところによると、色々面倒見てくれるんだって?」
「え?いやそんな感じで聞いていらっしゃるんですか?」
「え?違うのかい?」
「いや...フィンドールさん次第かなって」
「あぁなるほどね。そんな感じか...。」
「でもそれならフィンドールさんに気に入られてるってのは間違いなさそうだな?」
「えーっと、気に入られてるんですかねこれって」
「まぁ分かりづらいよな、あの人は...。」
ハインケルさんも苦労してるのか、意味深い様子である。
「いやでもマスターとしては凄腕だ、俺も認めざるを得ないわな!」
「...とまぁこっちの話は置いておこう」
「...そしたらよ?また日を改めることはできるか?」
「えぇ、まぁ大丈夫ですけど」
「すまねぇな兄ちゃん!ほらよ、いつ来るとかは聞いてねぇもんだからよ」
「こっちもいくつか厳選したいっつーかな」
「いくつかあるんですか?」
「そりゃああるわなー」
「ここはよう、冒険者の数はいるんだけど、ミスリル、ゴールドは少ないっ
つーか僅かでよ?北部に比べると依頼の数が少ないからな!」
「そうなんですか」
「まぁそういう意味じゃあ平和ってことかも知れないけどよ」
「切迫している事態でもねぇならいいことだしな!」
「でも本当にいいのかね?Sランクの魔物なら単独でも大丈夫だって連絡だったぜ?」
「えーっと、大丈夫...ってフィンドールさんからですか!?」
「そうだな...まぁフィンドールさんが言うなら大丈夫だろ?」
「えぇ、まぁ」
「おぅじゃぁ兄ちゃんに世話になるぜ!よろしく頼むよ!」
「えぇ、お手柔らかにお願いしますね...」
フィンドールさんからの伝わり方に不安を覚えつつも、ハインケルさんの力強い
握手に押し負けてしまう。まぁでもきっとそれで普通なんだろう...。
ギルドを出たときに、時刻は夕刻を迎えていたが、村に戻るよりは街を楽しみたい
ので、今夜はここに泊まろう。
辺りの様子を伺いながら散歩し、みつけた露店で串焼きを多めに購入した。
ついでに宿の場所を尋ねたところ、丁寧に教えてくれた。ここから近いみたいだ。
「すみませーん今日こちらで泊まれますかー」
宿の雰囲気とは似つかわしくない、綺麗よりも可愛らしいといった感じの褐色の
猫耳の女性が対応してくれる。
「はい、いらっしゃいませ!大丈夫ですよ。一晩で銅貨12枚ですね」
「あ、すみません。一晩で朝食付きで銅貨14枚でした」
「間違えちゃった、ウフフ」
「是非お食事もウチでどうぞ」
やばい。ちょっとかわいいかもしれない。
(でも間違えちゃったのはなんでかよくわからないわ。料金一律だろ?間違えるか?) とは思いつつも銅貨を支払い一泊することにする。夕食もここでいいか。
...
夕食後、部屋でラヴィを召喚し、露店で買った多めの串焼きをご飯にあげて、
明日も早いし、そのまま一緒に眠ることにした。
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