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強くてニューゲーム(仮)  作者: しゅがぞう
第一章 聖剣・魔剣・伝承・呪い編
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第35話 アイラブチェス

フィンドールさんからお願いされて数日が経過する。この間それぞれが思うまま

村の発展のために動いているようだ。


俺はと言うと、あの「照明」を村に設置したり、「冷凍庫」の状況を確認したり、

マジックリング作成に力を入れたり、魔法の練習をしたりとなかなか忙しい。


結局、マジックリング★5 永続:(コンティニュー)はノーリスクで効果を持続する代物であることが判明し(まぁ限界を迎える可能性はあるが)、経過とともにマジックリングのやりすぎ感に軽く不信を覚えているところだ。


俺の心労をよそに「照明」は少しずつ必要な個所に設置され、「冷凍庫」は

その効果を遺憾なく発揮しているようで何よりだ。「冷凍庫」はレイミーを

中心とした女性陣に好評で、複数人が意味もなく「冷凍庫」に出入りする姿が

目撃されている。


レイミーを見かけると、その傍にウィルが必ずいるという謎の現象があることと、

デザイアがこの不思議な現象の謎を追及するべく、俺のことをストーキング行為

しているようだ。


その辺シーアとクオーツさんは「カノンだから...」みたいな感じで

ほぼ諦めているようで、こちらとしては楽で助かる。


ユウリはラクレットに行ったり(主にシェーラさんに会いに行ってるのだと

思う)、デザイアから魔法を習ったりしているらしい。元々中位魔法を使える

こともあり、メキメキと腕前が上達しているみたいだが、何故か俺には詳しく

教えてくれない。


デザイアの影響は村の他のエルフにも波及していて、元々魔法に親和性のある

種族であるため、魔法が使える村人が増えたりしていて、頼もしい限りだ。


クオーツさんの整備計画もついに着工を迎え、目玉である取水装置は場所を移し

工事中である。なお、クオーツさんには俺の所望する設備計画も相談中であるが、

この話はまた後日に改めるとしよう。


地域的に貴重である魚の販売も順調なようで、ラクレットでもルミナーゼでも

喜ばれているらしい。


そして俺は今、ルメリオさんのところへ出向き、あの商品の進捗を確認するため、

ルメリオ商会を訪れたところだ。


「やあやあカノンさん!木製の試作品はすでに完成し、続いて素材を変更した

二号について、試作を進めていますぞ!どうぞこちらを確認ください」


そう言って木製の試作品一号を手渡してくれた。


「いやぁ、これはなかなかいい感じですね」


「そうでしょ?木製とは言え、手触りが重要だと知って、素材を変えて何度か

トライしました!」


「えぇ、いい感じだと思います」


ルメリオさんが普段より鼻息荒く説明してくれる。いいものができて、興奮が抑え

られない様子だ。


「で、試作二号の素材の件なんですが...」


「ええ、素材...ですか」


「そうなんです。当初頭で描いていた「ガラス」は技術的に加工が難しいみたいで...」


「なるほどですねー」


「代理でいくつかの「金属」でできないか提案したのですけどね、やはりこれも難しいと...」


「なるほど...」


「で、で、困ってたんですが、装飾品に使われる「魔物の素材」を思いつきまして...」


「おぉなるほどー」


「ウチで倉庫にあった「角」とか「牙」で加工してみたらいい感じになりまして...」

「今ちょっと試作のため手元に無いのが残念ですが、

これならいけるのではないか...と言った感じです!」


「あぁ...何となく伝わってきます!いいイメージかも知れませんね!」


「そうなんです!このルメリオ!...今や寝ても覚めてもそればかり考えてまして...」


「ハハハ」


「そう!...ただ「色味」がちょっといまいちなんですよね...」


「「色味」ですか...」


「えぇ...どうしても「魔物の素材」ですから、斑があるというか...」


「うーんなるほど。」


「それでどうしたらいいかカノンさんに相談しようとしていたんです...」


「そうですか...そうですね...」

「俺のイメージだと、先手と後手は濃淡はっきりした素材でわけるイメージ

でして...可能であれば斑が出ないくらいはっきりとした濃淡にしたい

ですよね...例えば...真っ白と真っ黒みたいな」


「ふむふむ。なるほど」


「まぁそれでもある意味「自然素材」ですから、多少の斑には目をつぶってもいいと思います」


「ほぉ...そういう考え方も確かに...」


ルメリオさんは俺と違い、現代のチェスのイメージがないのだから、色味に迷う

ことは自然だ。流石に前回の打ち合わせで仕上がりのイメージまでは共有できない。


「で、俺としては「色味」よりもさっきルメリオさんがおっしゃっていた

「手触り」の方の考え方が重要だと思うんです」


「ふむ。...それは具体的に...?」


「えぇ、一般用は手触りだけでいいと思うのですが、高級品には「重さ」とか

「重心」とかも重要だと思うんですよね...」


「う...それは考えが及びませんでした...」


「そうですね...恐らく単一の素材だけでは、「重さ」も「重心」も、

加工で「コントロール」しにくいと思うので、...そうだな...例えば底面には

ガラスの台座を設けるイメージでしょうか」


「はぁ~、なるほど凄い...」


「リバーシはそうでもないと考えますが、チェスは駒を立てますので、

安定感は重要だと思うんですよね...。なので底面はガラスの台座で、

本体はやや軽めだけど手触りよく仕上げられる素材があれば...いいのではないかと思います」


「むむ...いやなるほど」


「えぇ、ほら駒を動かす際に、手とか袖とかを引っかけてしまう可能性もありますからね」

「「重心」はとても重要だと思います」


「おっしゃる通り!」


「「重心」はガラスの重さで、言い換えればガラスの「厚み」で調整できる

でしょうから、使用する本体の素材に合わせて調整すればいいと思いますね」

「それで...できればガラスの底面は極力丸みを帯びせる感じで...」


「丸みですかな?」


「えぇ、底面がガラスだと今度はボードの方が傷ついてしまう可能性もありそうだなと」


「いやぁ、素晴らしい。そうかなるほど」


「えぇ、そんな感じでいかがかなと...」


「いや本当にカノンさんは凄い!まるで見てきたかのようなイメージです!」


(まぁ実際見てきたし、やったことあるんだけどね...。むしろそれに気づける

ルメリオさんの直感のが凄いと思うわ...)


「いやまぁあくまで想像ですよ?想像」


「そうですね...それであればいくつか...」

「ふむ...。悪くないかもしれない...!」


「心当たりあります?」


「えぇ!いくつか...いや...いけそうか...いやでも...いけると思います!」


「お!?いい感じのがあるって感じですね!?」


「いけます!いけます!」

「いやしかし凄いなこれは...」


「凄い?」


「いやぁほんとに惚れ惚れするというか...」

「今、共有いただいたイメージで完成したとすると...ルールの目新しさも勿論ですが...」


「勿論?」


「えぇ、もうこれ自体が美術品ですね...。」


「そうですね...。そうなるといいなぁ」


「いやもうそうしましょう!そうしたい!」

「あぁなんだかもう、愛でたいですよ私...それをこう...愛でたい」


「ハハハ」


ルメリオさんが鼻息荒く注力してくれるのは嬉しいものの、

試作品二号が完成した後のルメリオさんを想像し、若干ひきながら打ち合わせは

終了する。


だが上手くいきそうな予感はするし、仕上がりが楽しみである。

ご覧いただきありがとうございました!モチベに繋がりますので、よろしければブクマと評価頂ければ幸いです!

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