第30話 悪代官と越後屋
「なぁカノン。俺達にできることあるか!?」
「なんでも言って欲しいんだ!」
「そうね、あたしも頑張るよ!」
「...デザイアも...」
クオーツさんが整備計画作成のため、村の数人と場所を移した後、三人がそう
言ってくれた。
「だってあたし感動しちゃった!」
「昨日は全然気づけなかったけど、話が出て、そういえばそうだったって
気づいたんだ!」
「皆様...本当にありがとうございます...」
「なーに言ってるのユウリ!こっちが勝手に押しかけて勝手にそうするって
言ってるだけじゃない!お礼だなんて必要ないんだから!」
「...本当にそう...」
「...そうしたら、ウィルとシーアは自由に街を見て貰って、何か参考になりそうな
意見を見つけてくれないかな?俺達じゃ気づけないことが思いつくんじゃないかと
思うんだよね?」
「それいいな!」
「俺達こうみえて色んな街に行ったこともあるからな!」
「うん!それでいいと思う!」
「デザイアはさ、村の子供達を中心に魔法を教えてあげてくれないか?
昨日話してただろ?」
「...うん...いいと思う...」
「デザイアさん!わたくしも是非お願いしたいですわ!」
「...ユウリ...わかった...大丈夫...」
「オッケーじゃあ早速色々みてくるよ!」
「ウィル!いくよ!」
「シーア!レイミーのとこも後で寄るからな!」
「...。」
「ゴホン...じゃあ俺はちょっとルメリオさんのところに行ってくるから」
「カノン様、お買い物ですか?」
「あぁ...まぁそれもあるけど、ちょっとね」
「?」
「まぁ行ってくるわ!」
「デザイア!ユウリをよろしく頼むよ!」
「...任せて...」
「カノン様、いってらっしゃいませ」
...
...
「ルメリオさーん!こんにちは!」
「あぁ!カノン殿!いらっしゃいませ!」
「今日はお一人ですか?」
「えぇ、ユウリは留守番です。すみません」
「いえいえ、とんでもない」
「今日はいかがされましたかな?」
「えーっと、どちらかで座ってお話できますか?」
「?」
「えぇ、じゃあ奥でお話お聞きしましょうか」
...
...
「カノン殿!これは面白い!いい!いいですね!」
「でしょ?いけると思うんですよ!」
「これは流行りますよ!間違いない!」
...ルメリオさんに相談したのは娯楽のひとつであるゲームだ。
前世の知識を使って一儲けできないかと考えた結果だ。
ひとつは「チェス」。将棋でもよかったのだが、デザイン性を優先したのだ。
世界観的にも馴染めそうな要素ということもあり提案してみた。
もうひとつは「リバーシ」。庶民向けに流行ると踏んでの提案だ。
チェスに比べルールが分かり易く、誰にでも手軽である。
販路を持ち、領主様や王都にも顔が効くルメリオさんだから相談できたものだ。
うけるんじゃないかと思い、密かに村で伐採した木材を利用して作ってみたのだ。
「ルメリオさん、これを貴族用と一般用で材料を変えて販売するんです」
「なるほど...貴族用には高級感をだしたもので、
一般用には安価に求めやすいものに仕上げるということですな...」
「そうです...一般用には木製のもの、貴族用にはガラスや鉱石や金属で...」
「箱やボードに装飾品をあしらって...」
「...いやぁ...たまげました...まさにウチの得意とする要素が盛り込まれています...」
「長らく在庫になっているウチの商品の一部を加工しても良い...」
「しかも面白い...素晴らしいアイデアです...」
「それで、一度試作品を作れないかと...」
「えぇ!やってみましょう」
「試作品は一段階目に木製で試作します。そしてデザイン的によしとなれば、
ガラスや鉱石で第二段階を試作します」
「もう素材を変えて作成されるのですか?」
「えぇ、ここがポイントです。出来の良いものが完成次第、
それを領主様や王様に献上してしまうのです」
「な...なるほど。作成の許可を暗にいただき、作成者として名を立てるのですな...」
「そうなんです。チェスもリバーシも作りが簡単なので、類似品が出てくると思うのですよ」
「なので先行して位の高い方に認めてもらうことができれば「ブランド化」できるわけです」
「なるほど...類似品については商業ギルドへの申請で三年間、販売を独占することが可能です」
「この場合、作成方法などの開示は必要ですが、作成方法の開示も何もないですし...」
(なるほど...特許みたいなシステムだな)
「商業ギルドへの登録はルメリオさんにお任せさせていただきますので、
この商品のアイデア料として利益の一部と、木製の商品の一部受注権ですね。
それを私に頂ければそれで構いません」
「...や...やります!やりましょう!是非ルメリオ商会でやらせてください!」
「こんなに儲かることがわかる商談は初めてですよ!カノン殿!」
...
こうしてルメリオさんに試作品の作成をお願いし、基本的にルメリオさんに
投げてしまうというスタイルで、村に安定的な収入が入るよう商談を行ったのだった。
そしてこの商品の完成が新しい出会いを生むことになるのだった...。
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