第1話 冒険の始まり
初めまして。ご覧いただきありがとうございます。第一章は導入部分として世界観を共有させていただきました。物語は大まかに第二章から進みますので、退屈かも分かりませんがお読み頂ければ幸いです。
なお、第一章は物語の伏線となる要素を散りばめていますので、その辺りも気にして見て頂けると、第二章からグッと面白くなるかと思います。
...こうして俺は、神々しい「二本目の聖剣」を手にしたのだった。
...
...
時はほんの少し遡る...
...
...ここは一体どこなのだろうか?
上手く身体が動かない。目が上手く開かない。
(なんだかあたまもぼんやりする...。)
そう思いながらも、少し開いた目で辺りを見渡す。
(あれ?今俺は、どこかで横になっている状態?)
携帯電話をいじりながら思わず寝落ちしてしまったとき、力の抜けた手から携帯電話がすり落ち、顔面を直撃し一瞬我に返った。あの瞬間の感覚だ。
携帯顔面を直撃しても眠いときはそのまま寝てしまうので問題はないが、今はその逆。 脳が少しずつ覚醒していってるハズの状態だ。
「身体が上手く動かない」という異常にハっと気が付いたところだ。
眠っていたのであれば横になった状態であろう俺は、感覚的に「手」であろう部分を視野に入れてみる。
(なんだこれは?猫の手?白い猫の手?あれ...足もか...?)
目に飛び込んでくる情報が「自分の身体であること」を察した俺は、焦って立ち上がろうとした。
しかし...起き上がろうと脳が指示をするが、上手く起き上がれないのだ...。
(あれ?やっぱり身体がいうことを聞かない)
起き上がれないとはいえ、多少は「身体」を動かせる。
起き上がれないなりに、その少し動く身体を使い、情報を集める。
時間とともに感覚的に「手」であろう部分が動かせるようになったので、目をこすろうと、「手」を動かすが、「顔に触れる感覚」が反応しないのだ。
...正確に表現すると、「手」という感覚の手を使い、目をこすろうとするが、顔まで「手」が届かない...。
いま起きている事象に驚いているのだが驚きの「声」もでない。
いや正確には声?はでるのだが「ガオ」と声帯の調子が悪いようで上手く喋れないのだ...。
このままでは状況が呑み込めないと、なんとか地面を這いつくばりながら動いてみたところで、やっと「金縛り」のような状態が解け、なんとなく動けるようになってきた。
目に飛び込んでくる情報に「水たまり」があることを認識できたので、水の反射を利用し自分の顔をみようと覗き込んだところで衝撃を受けた。
水面には白い猫?いやこれは...虎?が写り込んだのだ。
決していい顔とは言えない俺の顔だが、長年付き合ってきた顔なので愛着もある。その愛着のある顔は水面に写らず、「白い虎」が俺をお迎えしてくれたのだ。
水面に写ったその白い虎には、目の下にキラリと光る宝石のような物体が確認できたが、「手」が顔に届かないので、それが何であるかわからない。
しばらくの間、水面に写った白い虎を眺めながら考える...。
...
あたりを見回すとどこか既視感のある風景であることに気が付いたが まだ辺りは薄暗くはっきりと記憶に重ならない。
...
少しずつではあるが、あたりが明るくなってきた...。
明るくなってきたことで辺りの様子がはっきりとわかってきた。
「水たまり」はどうやら大きな池であり、光が差し込んだことで非常に透明感がある池であることに気づく。
この綺麗な池のまわりには大きな森がひろがり、湖畔のような様子であることを認識した。
池の真ん中に神殿のような中世風の建物がある。
(ここ、やっぱり俺は見たことがあるな...。)
暫く考えた後、答えが導き出される。
(ここって子供のころにやっていたゲームの世界に似て...いる?)
(そうだ、結構やりこんだRPGのゲームの世界に似ているんだ...。)
ゲーム自体は大人になった今も好きで、新しいゲームがでればチェックは忘れない。 気に入ったゲームともなればレベルを上げまくり、最強の武器を手に入れ鍛えに鍛える。これ以上することがないとなった時に初めてラスボスに挑むタイプだ。
やりこんだゲームだったのに、タイトルは忘れてしまった。
(あのゲームでこの建物は...たしか聖剣が封印されていた神殿だったような...。)
少しずつ記憶のパズルを解析し、神殿に向かって歩いていった。
神殿前まで歩いたところで、威厳のある扉に行く手を阻まれる。
ずっしりとした重厚感。体積的にも開けることはできなさそうだ...。
扉をよく見ると埋め込まれた宝玉が光を帯びていることに気がついた。
宝玉に触れようと更に近づいてみると、宝玉に共鳴するように俺の身体がぼんやりと光りだす...。
すると音をたてて扉が開いた。
それと同時に光が俺を包み込み、直接頭の中に情報が飛び込んでくる...。
この世界が剣と魔法の世界であること、俺が強くてニューゲームの状態でここを
訪れていること。
(ああ、俺は転生したんだな。)
断片的で不確かな情報であるにも関わらず、なぜかそれを理解してしまったのだ。
...
しばらくすると急に胸が熱くなってきた。そう感じていると、
やがて「熱さ」が目の下の宝石に集中していった。
ボフッ!
(ん?)
これまで地面に近かった視界が、見慣れた位置まで移動した。
(ん?これは...。)
と思い、改めて身体を確認してみると、
見慣れた手がある!足がある!
(人間に戻ったんだ!)
疑うことはなかったが鏡がないので客観的にみることができないのが残念だ。
(そういえば顔にあった石...。)
と思いながら手で触れてみる...。
(...なんだか顔に引っ付いていて、とれそうもない。とりあえず放っておくことが懸命だろう。)
宝石に触れていた右の掌に文様が浮かんでいて、ぼんやりと光っていた。
今度はさっき胸に感じた同じ「熱さ」が右の掌に移動していく。「熱さ」が掌に完全に乗ると同時に発光した。
ボンッ!
音はなかったが、光輝く神々しい剣が召喚された。
(この剣、もしかして...。)
...タイトルを忘れてしまったあのゲームで苦労して手に入れた聖剣...。まさに公式ブックにのっていたあの聖剣が、今、俺の手に握られている。
(そういえば...。)
あのゲームでもラスボスを倒しエンディングを迎えると、セーブしますか?
と問われ、 そこでセーブをすると、いわゆる強くてニューゲームを
選択できるようになるのだ。
引継ぎ要素はレベル、ステータス、スキル、魔法、アイテム...。
(たしか...。)
あのゲームで引き継げるアイテムは選択式だったことを思い出した。
当時の俺が選んだのは...。
聖剣オベリクスと進化の秘宝
(進化の秘宝?進化の宝石...ああそうだ、顔にある宝石...。)
顔の宝石が進化の秘宝であることを理解した。
当時せっかく選択式で手に入れた秘宝だったが、何をしても使用することができず、様々な憶測を呼んだのだ。
海の中のあるポイントで使うと、新たなクエストが発生するとか、裏面にいけるとか...。
ネットもない時代の話だ。アイテムの利用方法について情報を集めることも
できず、 ただの謎アイテムとしてハズレ扱いだったこと...。
(だいぶ思い出してきたな。なつかしいな...。)
召喚した聖剣は戻れと念じたことで消えた。
...
(進化の秘宝に魔力を注ぐことで人型になるのかな?)
...転生したのであれば是非確認したい。
(ステータスオープン!)と念じてみる。
パッ!
ステータス画面が開いた。お決まりのパターンなのか...。
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【レベル】 測定不法
【職業】 クリエイター
【種族】 六獣(虎)
【性別】 なし
【 HP 】 9999
【 MP 】 9999
【称号】
聖精霊の加護:ウィプス
【装備】
聖剣:オベリクス
武器効果 反射:(リフレクション)
旅人の服
【常用スキル】
万能言語
レアドロップ
【習得済魔法】
雷光の轟:(サンダー・ボルト)
雷光矢 :(スパーキング・アロー)
聖光護化:(セイル・デクション)
聖光浄化:(キュア・エーション)
聖光回復:(シャイン・ヒール)
【聖剣印スキル】
龍種召喚
(剣技上昇)
(身体強化大)
(聖属性魔法極大化 魔力増大)
(聖属性耐性)
(魔力回復速度上昇)
▼聖光護化:(セイル・デクション)
▼聖光浄化:(キュア・エーション)
▼聖光回復:(シャイン・ヒール)
【ユニークスキル】
進化
分身
マジックリング作成 ▽
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強くてニューゲーム状態だけに強靭なステータスだ。
レベルは測定不能の表示だが、HPとMPがカンスト。
いやしかし。気になる点は多い。
まずは種族。種族が虎ってことは基本的に人間じゃない扱い...。
性別。性別ないんかい...。
人型になれたのはユニークスキル...進化の秘宝の効果ってことでいいのかな。
スキルは強そうだな...。
聖剣印スキルってのは聖剣を持ってるからだろう。龍種召喚かぁ。
スキルも魔法も使い方がわかんないよ。普通チュートリアルとかあるんじゃないの。
とりあえず一定の理解はできたであろう。
何かを試すにしても広いところがいいだろうと、せっかく開いた扉はくぐらず、
後退する。
(客観的な見た目も気になるしなあ)
と考えながら試しにスキルを念じてみることにした。
(とりあえず客観的な視点も確認したいし...分身かな...。)
フオン!
出てきた分身に驚くことになる。
「おおお、これがたぶん俺...。なのか!?だいぶ美形だぞ?補正ってもんじゃないわ!」
思わず声が漏れてしまった。
どちらかと言うと女性的な見た目に近い。
(転生ものだと見た目は完全に変わるのが普通だよな。)
と無理くりに自分が納得できる着地点で着地する。
「戻れ」と念じることで分身が消えた。
(うんうん。わかってきたわ...。スキルは念じることで発動ね。)
そしてその他に試したいスキル...。龍種召喚だろう...。
他にも色々試したいが、分身のスキルを使ったときに、俺のなかの魔力がわずかながら減った感覚があったのだ。
魔法とかができたとしても、これから何が起きるかわからないし、今は控えるほうがいいだろう。
だが、龍種召喚はそう考えても魅力的である。
召喚できるんだから俺に歯向かうなんてことはないだろう。背中に乗って空を飛んだりできるのかもしれない。
しかも属性的に聖なるドラゴンであることは間違いなさそうだ。
俺は胸の意識を右の掌に集中させ念じる。
「龍種召喚!」
掌が発光し光がはじけた。
ボフッ!
「ぴえ~!...。」
圧倒的にこれじゃない感。
確かに龍種なんだろうとは思う。角も羽あるし...。何より浮いてるし。
召喚された薄い青緑色の赤ちゃん龍がつぶらな瞳でこちらを見ている。
サイズはぬいぐるみサイズ。
ちょっと撫でてみる。
言葉も発っさず、鳴き声もないが、しっぽがフリフリされていることもあり、表情と仕草で喜んでいる様子がわかる。
(よしよし、なかなか可愛いじゃないか)
(ご飯とか食べるのかな?)
湖畔だから虫はいるのだが、召喚された龍は興味を示さない。
(ご飯か...そういえば俺も少しお腹がすいてきたような...。)
(とりあえず街とかも探さないとな...。)
...
期待を裏切る恰好となった召喚だったものの、可愛い相棒ができたようで嬉しい。
(まあいーやせっかく開いた扉の先を確認だけして、街でも探そうかな。)
そう考えながら歩きだすと龍はフワフワと飛行し、俺の頭に乗った...。
(そこがお前のポールポジションかよ!)
...
たしかあのゲームではここには聖剣が封印されていたはず。
(だが今は俺の手に聖剣があるわけだし、中は空かな?)
そう考えながら扉をくぐり抜けて神殿の中に入った。
...
元々大きな神殿でないことは記憶のとおりだった。間もなく開けた空間にでた。
(おおぉ。)
いかにも聖剣が刺さっていた空間という感じだ。
...ふと聖剣が刺さっていた位置に目をやると、遠目に何か刺さっているように見える。
とても静かな空間で靴音が反響する。
カツンカツン
...だいぶ近づいたところで聖剣を召喚してみる。
バフッ!
手にしている聖剣はいかにも聖剣といった感じだ。
それに比べて刺さっている聖剣は神々しい感じに変わりはないが色が黒っぽい。さながら魔剣といった様子に伺える。
だが見た目とは反し、いわゆる禍々しい感じは一切しない。これなら触れても大丈夫そうだ。
...
少し警戒しつつ、慎重に剣の柄に手をかざす。
...これといった変化はない。
...これなら触れても問題なさそうだ。
よしっと左手で剣の柄を握った瞬間、胸の魔力が大きく減った感覚。
疲労と同じ感覚といえばいいのだろうか。軽くランニングした程度の疲労って感じだ。
(この剣に試されているのだろう。なんたって聖剣の入手イベントだ。)
なんてことを考えている内に音もなくと剣が抜けたのだ。
...
こうして俺は二本目の聖剣?を手にしたのだった。。。
...
剣が抜けたのと同時に今度は左の掌に文様が浮かびあがる。
右の掌の文様に似ているが違う文様である。
たぶんこれでこの剣は俺のものになったのであろう。
(よしよし。)
少しほっとしたところでステータスを確認してみる。
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【レベル】 測定不法
【職業】 クリエイター
【種族】 六獣(虎)
【性別】 なし
【 HP 】 14300
【 MP 】 10100
【称号】
聖精霊の加護:ウィプス
魔精霊の加護:シェイド
【装備】
聖剣 オベリクス
武器効果 反射:(リフレクション)
魔剣 エクスキューション
武器効果 停止:(ザ・ストップ)
旅人の服
【常用スキル】
万能言語
レアドロップ
【習得済魔法】
雷光の轟:(サンダー・ボルト)
雷光矢 :(スパーキング・アロー)
聖光護化:(セイル・デクション)
聖光浄化:(キュア・エーション)
聖光回復:(シャイン・ヒール)
次元の門:(ゲート)
重力監獄:(グラビティ・プリズン)
【聖剣印スキル】
龍種召喚
(剣技上昇)
(身体強化大)
(聖属性魔法極大化 魔力増大)
(聖属性耐性)
(魔力回復速度上昇)
▼聖光護化:(セイル・デクション)
▼聖光浄化:(キュア・エーション)
▼聖光回復:(シャイン・ヒール)
【魔剣印スキル】
龍種召喚
(剣技上昇)
(状態異常無効)
(魔属性魔法極大化 魔力増大)
(魔属性耐性)
(魔力回復速度上昇)
▼次元の門:(ゲート)
▼重力監獄:(グラビティ・プリズン)
【聖魔印スキル】
(全属性魔法適正:(オール・マジック))
(体力上限突破)
(魔力上限突破)
(弱点鑑定)
(連続魔法)
(魔法無詠唱)
(並列魔法展開)
(魔法合成)
【ユニークスキル】
進化
分身
マジックリング作成 ▽
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「う...。これは...。」
また驚きでついつい声がでてしまう。
頭にのったままの子龍も首を傾げていることが不思議とわかる。
「聖剣じゃなくて...魔剣じゃね。」
(それと魔法欄がいくつか増えてるな。
次元の門 (ゲート)
重力監獄 (グラビティ・プリズン))
(悪そうな名前だわ...。)
(聖魔印スキルってのも増えている...。これはあれか?聖剣と魔剣を携えて
いるからなのか?)
内容がさらに豪華である...。
(全属性魔法適正:(オール・マジック))
(体力上限突破)
(魔力上限突破)
(弱点鑑定)
(連続魔法)
(魔法無詠唱)
(並列魔法展開)
(魔法合成)
完全にチートということが理解できてしまう内容だ。
(いやむしろ異世界転生には是非とも欲しい内容だ。)
魔剣の入手イベントが終わったのでとりあえずどこかで休みたい。
入りづらい方用に、二章および三章に各設定資料を用意しましたので、そちらをご覧頂ければ世界観や設定がわかるかと思います。そのまま二章から読み進めていただいてもいいと思います。