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「どういうことですか」
素直に理由を尋ねることにした。私が白木院さんの助けになるなら、たとえ冗談でも本気でも二つ返事で承諾してもよかった。だけど、この人からは変な人って思われたくなかった。
白木院さんは至って真剣なようだ。その上、何か悪いことをして怒られる時のような、儚くて悲しそうな顔をしている。
「その、あの、いきなりごめんね。びっくりしたよね」
私をなだめるように両手を小さく振る白木院さん。愛想笑いをする余裕もなく、下を向いてさっきの言葉を取り消そうとする。
対する私も、不愛想に「いえ」とだけ答える。
しばらく沈黙が流れる。目の前の上級生は何を想っているのだろう。取り合えず楽しそうではない。どちらかというとネガティブで、苦しそうで。それが放っておけなくて。
私にはやりたいことがない。やるべきこともない。そして、何かをしようとも思わない。だったら、相手に頼まれたら事情はどうあれ何でもするのが道理だと、そう自分に言い聞かせた。
「今のは忘れて、とりあえず入部の手続きを……」
「わかりました」
「え?」
入部という言葉を聞いて、今更自分がこの「お花見部」の部室に来た理由を思い出した。あっさり入部させてもらえるようでよかったと、一瞬ほっとした。
「私、白木院さんの妹になります。どうすればいいですか」
白木院さんは目を丸くして固まっている。私に対して軽く引いているようだ。彼女の妹になってほしい理由を尋ねたのは私だった。なのに答えを聞く前に「なりますよ」と答えれば、誰だって驚くし、ともすれば不信感を持たれたかもしれない。
やっぱり私はどこか人とズレている。私は人付き合いに向いていない。……別にもういいけど。
相手を混乱させたという罪悪感に苛まれていると、いつのまにか白木院さんはその細い両腕で正面から私の両肩をぎゅっと握り、熱い眼差しを私に向けていた。