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「んみゃ?」


 のんちゃんは甘え上手だ。メリハリがあるというか、彼女の情緒の不安定さが私の胸をざわつかせる。


「おはよ、のんちゃん」


 私を抱き枕にして寝ていたのんちゃんが目を覚ました。外はすっかり暗くなっていて、室内は闇に包まれている。何分経ったかは分からないけど、1時間は経ってないと思う。


「ひーちゃんだ」


 私の名前を呼んで安心を表現した。


「ひーちゃんだよ」


 私も私の名前を呼んで安心を表現する。

 ついでに、酷く痺れている右腕を何とか動かしてのんちゃんの髪を撫でると、「んふふ」と笑った。努力は裏切らないな。


 のんちゃんはゆっくりと立ち上がって、暗闇でも迷うことなく紐で引っ張る照明を点灯させた。眩しさが収まってから部屋の中を見渡す。

 到底女子高生が暮らす部屋とは思えないほどあまりにも物が少ない。目についたのはカバー付きの大きな組立式クローゼットとテーブルだけ。放り投げたスクールバッグのそばには教科書とノートが散乱していた。布団は押し入れに入っているんだろうけど、衣食住が成り立っているのか心配になる。


「ひーちゃん、お風呂入る?もう寝る?」

「晩ごはんは食べないの?」


 のんちゃんの表情が固まる。白木院家の仕組みが分かるまでは我慢するしか……衝撃に備えて目をつぶる。


 べしっ!


 今回は肩を小突かれるだけで済んだ。


「いつもは晩ごはんは食べないけど、特別ね」


 そう言って冷蔵庫から取り出してきたのは、薄皮の小さなアンパンだった。細長い袋にパンが3つくっついて並んでいる。

 満腹感を得るためゆっくり少しずつ食べている間に、のんちゃんはお風呂に入る準備を始めた。クローゼットのジッパーを開けて下着とパジャマを取り出してからキッチンへ姿を消した。


 のんちゃんの入浴中、「今日は先輩の家に泊まります」と母にメッセージで連絡すると「はい」とだけ返ってきた。しばらく携帯を使う必要はなさそうだ。


「ほんとに何もないし。食事もこんなんだからやせ細っちゃうんだ」


 ポツリとのんちゃんへの不満が漏れる。シャワーの音にかき消され自分でもほとんど聞き取れないぐらいだから大丈夫だろう。


「ご飯は、食べたいなあ。座布団の一枚もないからおしりが痛いし」


 言ってて自分がわがままな人に感じてきた。彩瀬あやせから、のんちゃんと光梨は親と親戚に捨てられて2人暮らしをしていたと聞いていなかったら、直接のんちゃんに不満を漏らしていただろう。わたしも家にはあんな母しかいないから居心地はよくないけど、それでも唯一の家族から色々してもらっていたんだなと実感した。


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