表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/68

-13-


 下校時刻を知らせるチャイムが鳴る。5月の陽は長くて、日暮れにはまだ早い時間だった。適度な夕日の眩しさが心地いい。


 夕日に向かって彩瀬と2人で歩く。彩瀬は私が寝ている隙にこっそり膝枕をしたことを凄く気にしているみたいで、ちらちらと私の顔(頭?)を見ながら、何かを言おうとしていることが伝わってくる。


 彩瀬の膝枕の感触はもう忘れてしまった。


「瞳、引いちゃったよね」

「膝枕のこと?」


 こくりと頷く彩瀬の顔は気の毒なほど罪悪感に満ちていた。


「私の首を気遣ってくれたんでしょ」

「それはそうだけど。普通友達に膝枕はしないでしょ」

「そうかなあ」


 確かに今日まで膝枕とかされたことなかった。

 友達……最後に友達と呼べる人がいたのは小学校まで遡る。その子の名前は憶えているけど、中学が別になって、それっきり。


「膝枕って言ったら、恋人がやるもんじゃん」


 恋人の「こ」のボリュームが大きくて、しりすぼみに声が消えていった。


「気にしてないよ」


 それ以降、私たちの間に会話は生まれなかった。せっかく友達になったんだから、もっと色んな話をするのかと思った。具体的に何かと自分で考えてみたら、残念ながら一つも思い浮かばなかった。正確には、絶対に会話が成り立つと確信できる話題が出てこなかった。私は失敗を恐れてばかりだ。


「それじゃ、私の家はこっちだから」


 電車通学の私と違って、彩瀬の家は高校から徒歩圏内にあるらしい。駅へ続く道の途中でお別れとなった。


「ん。また明日」


 言ってから、明日が土曜日で学校がないことを思い出した。彩瀬はぎこちない笑みを浮かべ軽く手振って去っていく。やっぱり人付き合いは向いてないなと思った。なぜか私は人とズレてしまう。


 心の反省会を終えてふと気がつくと、見覚えがあるようなないような、多分通ったことのない裏道に出ていた。何となく駅に近いことは分かるけど、最短ルートがわからない。

 辺りを見回していると、同じ高校の制服を着た見覚えのある人物と目が合った。


 腰まで伸びた長い黒髪と痩せ過ぎと言ってもいいぐらい細い体躯。5月の終わりだというのに長袖ブレザーに厚手のニーソックス。僅かに露出する肌は儚いほど真っ白で、まるで彼女だけ冬の季節に存在しているようだった。


「のん……白木院さん」

「藤原さん、こんにちは。いや、もうこんばんはの時間かな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ