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ひとみ視点に戻ります。


 彩瀬から「ひーちゃん」のことを聞いた次の日。


「ねえ瞳、私もお花見部に行ってみたい。いいかな?」


 部活動に入ってない1年生はもう彩瀬だけになってしまったらしい。半ば無理やりクラブという居場所を与えられて、そこに居られなくなった人はどうなるのだろう。


 彩瀬は部活に入ってないし、髪は明るいハイライトに染まり、側面は刈り上げてツーブロックにしている。私を含めほとんどの人はマイノリティな彼女に積極的に関わろうとしないと思う。


 そんな彼女と私は友達になった。昨日の寄り道は向こうから誘ってきたし、断る理由もないから一緒にいる。そして、放課後になってすぐ私の席までやってきた彩瀬のお願いを断る理由もない。


 だけど「ひーちゃん」の友達だった彩瀬を、白木院希しらきいんのぞみつまり「のんちゃん」に会わせることに不安を覚えた。彩瀬にのんちゃんを取られやしないか、とか。断る断らない、連れて行く行かない……色々考えると疲れる。


「いいよ。一緒に行こっか」

「やった」


 お花見部の活動場所は校舎1階の端にある小さな和室。まだ綺麗な状態の畳と襖、穴ひとつ開いていない障子が利用者の少なさを物語っていた。掛け軸も生け花もない。和室が和室として必要とされていない様子に親近感がわいて、結構気に入っている。


 引き戸を開けると、今日も中には誰もいなかった。少しホッとした。


「あれ、誰もいないの?」

「最近は誰も、コホン」

「ん?」


 昨日彩瀬に、私は最近お花見部の先輩にビビって部活をサボっていると嘘をついていたのを思い出した。私の嘘で彩瀬には気を使わせた。それがきっかけで友達になったわけだけど。正直に「誰もいない中一人で昼寝したり本を読んでいる」と言っていたら、どうなっていただろう。今日も一人だったかもしれない。


「最近は来てなかったけど、誰もいないね」

「……のんちゃんに会いたかったな」


 彩瀬は、あくまで偶然のんちゃんに会ったということにしたいらしくて、彩瀬とひーちゃんとの関係は言わないでくれと口止めされた。亡くなった親友の姉に会うってどんな感覚なんだろう。親友も姉もいない私には、彩瀬が奇抜な髪形にした理由と同じぐらい見当がつかない。彩瀬が見ている世界はどんな世界なんだろう。


「とりあえず座ったら?お茶でも淹れるよ」

「ありがとー。瞳って優しいね」

「どうして?」


 気遣いなら彩瀬の方ができている。人付き合いはきっと気遣いの連続で、疲れると思う。最初の一歩は尚更。


「昨日の行き先は瞳が決めたし、今日はお花見部に連れてきてくれた」


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