第八話 ネーミングセンス
「ただいま!」
「お帰り!」
翔太朗が柴刈りから帰って来た。
「そらっ!今日は大収穫だっ!」
「わおー!さっすが!私も獲ったよっ!魚は1尾だけだったけどほら!見て!
ジャーン!!」
「うわ!でけェ!!何だ!その桃!!」
「でしょ!もうびっくり!!今日、川で洗濯してたら流れてきたの!こんなの
初めて見たっ!」
「おお!俺もだよ!そんなもん何処でなってるんだろ。すっげーうまそう!!早速
そいつから食おう!!」
「そう?じゃあ切ってみよっ!」
キミエは台所から包丁を持ってきた。
その時・・
「おぎゃー!!」
「ん?ね・・・翔太朗、今・・・赤ん坊の泣き声聞こえた?」
「え?気のせいだろ?」
「そっか。じゃあ切るよ!」
「うん!」
「おぎゃー!」
「やっぱ聞こえるって!」
「だな・・・俺も今聞こえた」
「おぎゃー!おぎゃー!」
「なんかこの桃の中からじゃない?」キミエは桃に耳を澄ませた。
「まさか・・・」
二人は桃をじっと見た。
「ねえ・・・見て・・・ここに切れ目がある」
「本当だ・・・」
「開けてみよっか・・・」
「あ・・・ああ」
キミエはそっと桃の切れ目に手を入れその大きな桃を開いた。
「おぎゃー!!おぎゃー!!おぎゃー!!」
「し・・・翔太郎・・・見て・・・」
「こ・・・これは・・・」
「あ・・・赤ん坊だよ・・・可愛い・・・男の子よ!」
キミエは桃の中の赤ん坊をそっと取り出しその腕に抱いた。
「翔太朗・・・きっとこれは天からの授かりものだよ!」
「何言ってる!この子はきっと今頃親が探してるはずだ!返しに行かないと!」
「返すって・・・いったいどうやって返すのよ!」
「何か・・・手紙みたいなものは入ってないのか?」
そう言って翔太朗は桃の中を探してみた。
「何も入ってないな・・・」
「でしょ!仕方ないわよ!これはきっと私たちにこの子を育てろって事なのよ!ね!
翔太朗!いいでしょ!私この子を立派に育てるから!お願い!」
「キミエ・・・」
「ね!」
「まあ・・・親を探すあてもないしな・・・まあきっと川の上流に住んでるんだとは思うけど
あそこに行くのはちょっとおっかないしな・・・鬼がよく出るって噂だし・・・」
「うん。そうよ。やっぱりこのまま私たちが育てた方がいいよ!」
「そうだな。で・・・名前はどうする?」
「あ・・・そっか・・・じゃあ・・・桃から出てきた子だから・・・桃太郎ってのはどう?」
「桃太郎か・・・お前・・・センスないな・・・まんまじゃねえか・・・」
「えー!じゃあ他になんかいいネーミング思いつく?」
「あー・・・わかんね」
「じゃあ決まり!お前は桃から生まれた桃太郎!!よろしくね!私はあんたの母ちゃん
キミエ!そしてこっちがお前の父ちゃん翔太朗だよ!」
「おぎゃー!おぎゃー!」
桃太郎はそれに答えるように大声で泣いた。