第六話 桃太郎・・・実の家族
戻った父親は村の様子を見てあぜんとした。
ほとんどの家が燃やされ、多くの村人は血を流して倒れていた。
「いったい・・・何が・・・まさかまた・・・鬼が・・・」
父親は自宅まで走って行った。
「おい!キヨ!小太郎!何処にいる!」
かろうじて燃えてはいなかった家の中を探したが、そこには誰もいなかった。
父親は家族を探しに家の外へ飛び出して行った。
「キヨ!小太郎!」
二人を必死で探して川のある方まで走って来た。
そして見つけた―――――――――
血まみれで倒れているキヨの姿を。
「キヨ!!」
キヨのそばへ走り寄り身体を抱きかかえた。が、彼女の身体は既に動きは
しなかった。
「キヨ!!!なんで・・・なんでだよ!!キヨーーーー!!!」
泣きながらふと川の方を見ると、遠くに倒れている見覚えのある着物を着た
男の子が見えた。
「小・太・郎・・・?」
父親はキヨをそっとその場に置き小太郎のそばへ走って行った。
「小太郎!!小太郎!!」
父親は小太郎の身体を抱き上げた。
「と・う・ちゃ・ん・・・」
「おい!小太郎!しっかりしろ!」
「と・う・ちゃ・ん・・・正・太・郎は・・・桃・の・中・に入れて・・・
流した・・・から・・・きっと・・・まだ・・・生きて・・・る・・・よ」
「桃の中?」
「うん・・・父・・・ちゃん・・・が・・・作った・・・桃・・・」
小太郎の身体は力を失った。
「小太郎・・・」
小太郎はそのまま息をひきとった。
「小太郎!!!!おい!だめだ!!死ぬな!!!小太郎ーーーーー!!!」
父親は夜が明けるまでそこで泣いていた。