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俺は10歳で女になった。  作者: ミーケん
1章 女になる
6/9

番外(1)叶の怒り、そして後悔

小説って書きたいところを書くまでが苦痛なんだよね

そんなわけで、番外(1)です。

本編での裏で起こっていた出来事について書いていくつもりです。

今回は叶視点です。

胸糞だけど、がんばって!

 巡の検査結果は紛れもない「女性」であった。つまるところ、巡の身体に関してのみ言えば、完全に女である。男性器特有の形はなかった。代わりにあったのは女性器。本来なら発達していないはずの乳房には幼い体にしては膨らんでおり、将来はボインさんだろう。乳房に若干恵まれなかった私としては羨ましい限りである。

 さて、この結果を巡に伝えようと思い、研究室を見回す。しかし、巡の姿は見当たらない。

「あ、あれ?巡?」

 まて、確か検査結果を分析している時、巡に話しかけられた。確か、飲み物を買ってくるとかなんとか言ってなかったっけ?あの姿で行ったのか?いや、その前になんで私はそれに許可を出した?たしか、今日は「アイツ」がいる!アイツに見つかったら巡はどうなる?いや、考えるな!

 巡が出ていってから何分たった?時計を見ると検査が終わってから20分ほど経過していた。20分?そんなに経って戻ってこないってどういうこと?どこかで遊んでる?いや、それはありえない。巡は他の10歳児とは異なり、比較的大人びている。下手に知らない場所で遊ぶなどということは無い。大方迷子になってしまったというのが妥当だ。でも、だからって泣きわめくことはしないから困る。

 1人で行動したがる癖に自分をアピールしないから頻繁に迷子になる。遊園地などで迷子になった時は1人で迷子相談所に向かっていて、アナウンスでこちらが呼び出されたことすらあった。しかし、ここは完全な大人の施設だ。迷子なんて想定されているはずがない。だから、たぶん巡は1人で解決しようとする。

「でも、どこに行けばいいんだ?」

 困った。どこに探しに行けばいいんだろう。そう思って考えたが、しかし、こんな考えに至る。「とりあえず、探そう」と。

 私は男装して勢いよく研究室を飛び出した。


「はっ……はっ……はっ……」

 廊下に私の荒れた呼吸と足音が響く。この施設は比較的音が反響するために、余計にノイズがわかりやすくなるため、時々音の研究に使うこともあったりする。私の専門は音ではないから興味はないが、私に惚れているであろう女子が研究に誘ってきたことはあった。叶わない夢を叶えさせまいと断ったが。

 しかし、巡はどこにいる?飲み物を買ってくるとか言っていたということはどこかの自販機か?でも、ここの施設には5ヶ所以上に自販機が設置されている。それぞれ回ってたら正直体力が持たないんだけど。私だって人より若干上手く体育をこなせるってだけで一般の女子と同じ程度しか体力はない。いや、たぶん平均以下だ。普段は研究したり、論文を読んでいるから座ったままだし、運動の習慣もないからね。仕方ないよね。

 でも、今に限っては私の体力のなさが恨めしい。

 私は足の代わりに頭を働かせる。目的は簡単である。つまり、巡の行きそうなところを予想するのだ。少なくとも巡のする事だから3階以上に行くことは無いはずだろう。性格的に巡は安全策を取りがちだ。上の階よりも下の階の方が自販機がある確率が高いことを自然とわかっているはずだ。さらに巡は記憶をたよって出口に向かいがちだ。ならば、向かう場所は出口から最も近い場所にある自販機。

 私は走る。


 そこに居たのはあいつだった。普段から汗にまみれ、汚らしい匂いを周囲に撒き散らしているが、今日はより一段と汗にまみれて、汗臭さに紛れ、男特有のイカ臭いものが立ち込めていた。

 こいつの名前は国岡忠。研究対象をこどもに絞って、どうやってこどもは成長するのかを研究している。また、幼女に対して異常な興味を持っており、以前私に対して「女の子と話すコツ」について尋ねてきた。私はその時から国岡に対し警戒をしていたため、特に何も言うことなく話を切り上げた。また、国岡の研究室に入ったことのある友人曰く、幼い女性の等身大のフィギュアがあったとか、ポスターが貼られていたとか、様々な犯罪臭のする噂があった。

 そんなあやしい国岡は私に対して後ろを向いて、なにやら動いている。見るに腰わ腰を中心に動かしているようだ。腰を中心に動かすこと。それを想像した途端、私は不安に駆られ、国岡に接近した。

 どうか間違いであってくれ。そんなことになっていたら私は巡になんて言えばいいんだ。私にとって唯一の弟をお前が、。

 近づくにつれ、国岡の汚い荒れた呼吸が聞こえてくるようになった。はっ、はっ、という一定の呼吸音に合わせ、腰も動く。

 図体のでかい国岡に近づき、国岡が誰かに対して腰を突き動かしていることを理解する。瞬間、私は強い口調で後ろから叫ぶ。

「おい!国岡!」

 私の声によってようやく国岡はこちらに気づいたようで首だけを私に向かって顔が見えるように回す。その顔は歪み、汗をダラダラと垂らしていた。

「あぁ?なんだよ。俺は忙しいんだよ………。あぁ、最高だ」

 嫌悪感溢れる歪んだ顔は私を向いてはいてもどこか別のところを見ているようであった。意識をどこかに置いていったような目は私をちらりと見ただけですぐに背を向ける。国岡のは何かに覆いかぶさるように腰の動きを再開する。

 その瞬間、私は理解する。国岡にされている人間のことを私が知っていると。

 国岡の動きによって脇からちらりと見えた黒いジャージ。それは紛れもなく巡のものであった。

 刹那、私は蹴った。全力で国岡の顔を蹴った。私はこれでもこれまで大学ではある程度男らしい生活を送ってきたのだ。それに伴う筋力は一般男性には負けるが、それでもある程度の自信はあった。歪んだ顔をより歪ませて国岡は転がっていく。蹴られた衝撃で気絶したようで1メートルほど離れたところでピクついている。

 お前は死刑でも生ぬるい。私は国岡に近づき「それ」を潰した。

「あぐぃぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 醜い叫び声だ。

 私はそれを無視して巡に近づき、意識のない力の抜けた身体を抱き抱える。ごめんね。私が着いていなかったから。こんな所に連れてこなければこんなことには……。

 後悔の念が尽きない。

 あぁ、私は愚かだ。そういう風に私は嘆く。後悔する。なぜ、あの時、私は止めなかったんだ。

 いつも、私は過ぎた時に後悔する。いや、もとから後悔というのはなにか終わった後に訪れるものだ。しかし、私は思う。もし後悔が先に訪れてくれれば全て思い通りに行くのではないかと。こうして後悔することも無いのではないのかと。

 私はただ、そう思うのだ。

次回→番外(2)

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