俺が女になった日【3】
投稿始めて1週間未満なのに評価が100を越えたので、ビビっております。やっぱTSは神だわ
さて、そんな感じで第3話です
さて、場面変わり、清潔感溢れる校舎を歩いているのは俺と姉の叶である。
食事を終え、両親を見送った後、俺は姉に連れられ自宅から電車で20分、駅から徒歩10分のところにある国立大学に来ていた。
施設は全国で一二を争うレベルであるらしい。また、敷地も広く、東京ドーム3個分に相当するらしい。よく聞くこの例えだが、正直よく分からない。あれが3つ分ってなんだ?って感じだ。もっとわかりやすい例えばないんだろうか。例えば自宅何個分とか。いや、それはそれで分かりにくいな。
と、そんなくだらないことを考えていると大学についていた。そして、その敷地は姉から聞かされた話に勝るものであると知る。まず、正門から入るのだが、すぐに左右に現れたのは研究施設などではなく、コンビニであった。
姉曰く、この大学で一生過ごせるまであるという。コンビニはもちろんのこと、映画館、ブランドショップ、服屋など、なんでもござれであるらしい。
一瞬大学ってなんだっけ?と思うほどの充実ぶり。国よ。これが国立大学でいいのか。まぁ、ここに存在しているのだからいいのだろう。俺には分からない。
そして、まずは姉の研究室に向かうことになったのだが、これもまた遠かった。正門通りと呼ばれる正門から真っ直ぐに伸びる道をひたすらに歩き、半分ぐらい歩いたところで右に逸れる道が現れるから曲がり、突き当たりの建物が姉の研究室のある施設らしかった。
歩くだけで体力を盛大に持っていかれて、途中で姉にお姫様だっこされたのは内緒だ。絶対に教えてやらん。
しかし、俺はこんなに体力がなかっただろうか。普段から暇さえあれば父親と遊ぶような俺がなんでただ歩くだけでこれほど疲れてしまったのか。おれの胸の内に秘める疑問だったが、図らずもお姫様だっこされている時に姉のつぶやきで答えを得た。
「体が女になった影響で体力が落ちているのかもな」
なるほど、どうやら女の俺はか弱いらしい。まったく自分のことながら可愛げがあるから憎らしい。女になるんだったらどこかの霊長類最強になってみたかった。いや、それはそれでなんか嫌だな。これでもいいか。
と、そんな経緯があり、無機質な施設を2人で歩くが、姉の研究室は一体どこなんだろうか。
姉を見ると鼻歌交じりに軽くスキップをする始末。話を聞いてくれるモードではなさそうである。姉は時折こういうことになる。そんな時はだいたいテンションが高く、なにかいいことがあったに違いないということはこれまでの経験で分かっている。いま、機嫌がいいのは俺が自分の研究室に来るからだと推測される。姉は普段から俺に連絡をよこし、研究室に来てと言っていたほどブラコンな節がある。しかし、呼び出される度に俺は何をされるか分からないことを理由に断っていた。
それが、俺が女になり、研究対象として、断らずに着いてきたのだ。こうなるのも頷ける。こちらとしては複雑な気持ちだが。
「私の研究室はここだよー」
姉はそう言ってひとつのドアの前で立ち止まる。周囲の壁と同じく真っ白なドアであり、備え付けのフックに無骨なフォントで「叶」と書かれたプレートが掛けられているだけのドアであった。俺としては大学ではきゃぴきゃぴした風に装っていると思っていたのでドアの無骨さに少なからず面食らった。
俺の動揺を察して、叶は話す。
「ここは基本男しか居ないからね。わかりやすく女の子しちゃうとメガネくんたちからのアタックが止まらないんだよね。だから大学では基本男らしい格好してるよ。こうやって髪を下げたのも久しぶりなんだ。普段は後ろに結んでいるか、カツラをしてるからね」
なるほど、道理で家族会議の時などで研究室に籠る以前のような女らしい喋り方をしていなかったのか。以前の彼女はゆるふわした普通の可愛い女の子であった。服装も女の子らしい服装を好み、学校ではよく告白されたそうだ。まったく羨ましいというべきかかなんというか。まぁ、その時からそういう告白が鬱陶しいと思っていたらしい。聞けば、今となっては告白してくる男はいなくなったらしい。代わりに女が告白してくるそうだが、まぁ、それも頷ける。叶は中性的な顔つきをしており、彼女自身が女らしくすれば儚げな美少女に、男らしくすれば美形の王子様だ。どっちに転んでも美の文字は取れない。
「さて、では、待ちに待った巡の検査に入ろうか」
そう言って叶は無骨なドアを開いた。
研究室に招き入れられる形で俺が先行して入室した。
後ろで叶がドアを閉める音と鍵を閉める音が聞こえたが、無視。俺の目にまず入ってきたのはドラマとかで1度は見た事のある横に倒された円柱形のやつが置いてあった。一体どうやってあの狭いドアからねじ込んだのかは知らないが、通常ここにはないであろう代物だということは分かった。
一研究者の研究室にあるべきでは無いものだ。
そして、その大きなものに場所を譲ったように部屋の隅に追いやられている机が目に入る。机の上には何かの本やら書類やらでごちゃごちゃぐちゃぐちゃである。姉はこんなに片付けができない人間だっただろうか?
叶は不敵な笑みを浮かべている。
「ふふふふ。ようこそ、私の研究室へ!」
家族会議と同様に手を左右に広げて大袈裟に言う姿はなんというか、滑稽でもあったが、その実、似合っていた。
格好は先程までの普通の服の上に白衣をしている。そんな格好でそんな仕草をするものだからどこかのマッドサイエンティストを彷彿させる。しかし、あちらが厨二病ならこちらはマジモノの科学者である。迫力が違う。
「それで、俺はどうすればいいのさ?」
俺が若干気圧されながら言うと、叶は俺にゆっりと近づいてきた。俺かずるずると後ずさるとどんと壁にぶつかる。
え?俺ここでまさかの貞操の危機?とかそんなくだらないことを思っていると叶は俺の服に手をかけながら言った。
「服を脱げー!!」
あ、まじで貞操の危機かもしれない。そう思った時には服はスポンと脱げていた。
俺は為す術もなく、全裸にされた。曰くジャージは金属があるから検査に適さないらしい。結果的に俺はTシャツとブリーフの上に白衣をするという若干変態な格好を強いられていた。恥ずかしい。以前の俺なら別に構わないのだが、今は俺は一応女だ。体に引っ張られているのか、それともそもそも俺が男なのが原因なのかは分からないが、以前に比べ羞恥心が増大しているように感じる。
「じゃあ、まずは……」
叶は楽しそうにその円柱の機械を操作し始めた。俺はその姿を突っ立って見ていた。だって、仕方ないだろ?やることないんだもん。はぁ、まったくなんでこんなことになってしまったんだ。と、今日何度目かは分からない嘆きを心の内で呟いていると叶の準備が出来たのか、先程まで備え付けのディスプレイに向けていた目をこちらに向けてきた。
「それで、俺はどうすればいいのさ?」
俺が尋ねる。俺は複雑な要求をされるんじゃないかとビクビクしていたが、叶の応答は存外単純なものであった。
「その機械に寝転がってて。まずは巡がちゃんと女になっているのかどうかを確かめる」
すこし、引っかかる言い方だが、実際今は女だ。であるなら俺の感覚だけでなくより客観的な判断が必要であるということだろう。そして、この機械での検査はそのためのものであるのだろう。
俺の思考は幼いながらも叶の言動にこうやって説明づけた。しかし、この時の叶の発言は後におかしい事に気づくことになり、問いただしたのだが、未だ回答は得られていない。
俺は若干の疑問を頭から振り払い、機械に備え付けられたベットに横たわった。叶は俺寝方に若干の物言いをし、結果的にはうつ伏せになり、自分の腕を枕にする形となって落ち着いた。
「じゃあ、始めるよ」
叶のその言葉と同時に機械は稼働を始めた。つまり、検査である。
俺はその稼働音のなさに若干の嫌悪感を示した。あぁ、はやく終わってくれ。俺のこの時の思いはこんなものであった。
次回「俺が女になった日【4】」
予定では若干の残酷描写あり。
更新の際にもお伝えします