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第九十八話「最強の援軍」

 睡眠不足と連日の戦いで、全員が疲労困憊(ひろうこんぱい)していた。街を守るとの使命感、冒険者としてのプライドが皆を奮い立たせていたが限界は近い。


 アンディックが連れてきた部隊も、輜重隊すら一部が街の見回り、警戒線などに加わり協力してくれている。

 


 今日も戦いが終わりギルドへの報告を済ませた後、ベルナールとセシリアはアンディックたちが宿舎として使っている、中央ギルド隣にあるホテル訪ねる。呼出しの伝言を受けたからだ。


 一階のロビーには騎士が数名とアンディックがいた。


「どうしたんだ?」

「王都から品物が届きましたよ」

「品物?」

「少し席を外します。ベル、セシリアこちらに……」


 アンディックは若き騎士たちにそう伝えてからホテルの廊下を歩く。ベルナールとセシリアもそれに続いた。


 地下に下りて更に進み鉄の扉を開けると、そこはベルナールにも見覚えのある場所であった。中央ギルドの地下通路である。


 更に三人は薄暗い魔導の明かりの中を奥へ奥へと進む。ここまで来るのはベルナールも初めてであった。


「ん?」


 突き当たりにある扉の前に、警備の兵が二人立っている。それは王宮の近衛兵団の制服であった。王都からわざわざ出向いて来ているのだ。


 ベルナールはこの厳重な警備に既視感を覚える。何が待ち受けているかを察した。


 アンディックがカギを取り出して解錠すると、兵もまた無言で自身が取り出したカギを使う。二重の施錠が解放される。


「さて、久しぶりの御対面ですよ……」


 中に入ったアンディックは、そう言ってテーブルの置かれている大きな革のケースを指差す。


「ああ、あれ(・・)ね! 今回の件程度で出してくれたの?」


 見覚えのある大ぶりのケースが三つだ。セシリアもすぐにそれが何かを察する。


「当然です。王国の危機だと王とは理解しておられます」


 ベルナールとセシリアはそれぞれお目当てのケースを開けた。


「久しぶりだな……」


 真っ赤なビロードに包まれた、光輝く豪奢な一振り。特性を持ついくつもの魔核を内蔵し、様々な魔力に反応する驚異の神器(じんぎ)。聖剣ディアロンドである。


「これで相手をする魔物になんて現われるのかしら?」


 そしてセシリアが手にしたのは聖弓ディアメネシスだ。アンディックも聖剣ディアアークスを取り出した。


「本当によく王都からこいつを出せたな」


 ベルナールは聖剣を抜いて、剣肌に刻まれている複雑な刃文(はもん)と久しぶりに対面する。何層にも重ねられ、鍛えられた魔導金属が作り出した文様だ。


「国の、いえ世界の危機ですからね」

「それにしてもなあ」


 この波紋から内部の魔核に蓄えられた魔力が、使い手の意思により放出される。常に大地から湧き上がる魔力から、取捨選択(しゅしゃせんたく)されたとびきりの魔力だ。


「高級貴族の一部は今でも反対していますよ。しかしこの危機を放置しては王都が危ないと説得したのです」


 神器(じんぎ)が地方に持ち出されれば、王都に反旗を翻す大儀にもなりかねない。この街に三種の神器(じんぎ)がそろったのだ。


「申し訳ないのですが、朝ここから持ち出して。夕方に返却となります」

「当然だろうな」

「そして使用は最低限、作戦開始のその時といたします」

「分かってるわ! やたらめったら、放ったりしないって」


 セシリアには前科がある。以前使用した時にやたらめったら打ちまくって、大いにひんしゅくを買っていたのだ。恐るべき力が人目に付くのも良くない。


「それと次の一手も打ちますよ。王都から令状も届きました。全冒険者をこの戦いに参加させます」


 それはいまだ戦わず様子見を決め込んでいる、二大勢力のことである。


「もう十分に猶予しましたから、ここまでですね。この街の膿を出しましょうか……」


 ベルナールはその言い回しに強行策の行使を感じた。ことここに至っては致し方あるまい。


「どうするんだ?」

「王都はゴースト事件を含めた今回の事態を、国家危機と認定しました。超法規を持って速やかに鎮圧せよとの指示です」

「……」


 もはや街の防衛は限界に近づいている。アンディックの判断もやむを得ない。近衛兵団の仕事は三種の神器(じんぎ)を護衛するだけではないようだ。


「連中は何人来ているんだ?」


 ベルナールは外で待機している近衛の兵へ向かって顎をしゃくった。


「騎馬二十を含む五十名です。ことが済めば戦いに参加しますよ」

「そうか……」


 終りの見えなかった戦いに終りが見えた。


「この三つがそろったんだから楽勝でしょ。さっさと片付けましょう」


 セシリアは簡単に言うが、未だにゴーストの真意は不明のままだ。


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