第九十三話「膠着する戦線」
予想通り戦いは持久戦となり、森の中では散発的な戦闘が繰り広げられていた。冒険者たちはパーティー単位で連携しつつ一進一退を繰り返している。
そんな最中ベルナールとアンディック、エルワンと補佐のロッティは街の東に位置する広場にいた。材木が積み上げられ、軍の輜重隊と街の職人たちが協力して加工作業をしている。
「更に離脱が数名でました」
「なんだと?」
「怪我で治療が必要です。東と西から来た応援と、北では二名です。森の中で突然AかB級上位と遭遇したようです。それと軽傷者はもう十数人を超えています……」
「くそっ!」
エルワンから報告を聞いたベルナールは思わず悪態をついた。逃げられたのなら幸いではある。
「東側で魔物の攻勢があったようで……」
森の中で出会い頭の接触を防ぐ手立てはないし、荒野まで出れば囲まれるだけだ。危険が伴うと分かってはいても、森の中での牽制を続けるしかない。
「複数のパーティーで連携して、周囲を警戒しながら引く時は引けと徹底しているのですが――」
エルワンは冴えない表情で説明を続けた。
「――数さえそろえば……」
そう戦力不足を愚痴る。街の冒険者の総数は、通告前は三百程度、通告後の現役はおよそ二百を越えるほどである。
ギスランのパーティーが百程度を押さえてフィデールのパーティーが五十近く。現在ギルドの傘下として動いているのは五十人以上で、他に戦力外のヘルプ、元冒険者たちが多数だ。
アンディックたちの応援がなければ防衛線はとうに瓦解していただろう。
今や警戒線の一部を遊撃隊として魔物討伐に参加させている状態だ。王都の騎士団も含めて皆、疲労の色は隠せない。
材木を満載したいくつもの馬車がやって来る。あの開拓地で伐採していた木々だ。エルワンが仮置き場の指示を出し、ロッティは数をチェックする。
アンディックの読みで用意していた、封鎖用の資材である。しかし、しばらく出番はなさそうだ。
「これで最後の荷ですね。馬は休ませてから騎馬とします。更に十騎が加わりますよ」
「用意がいいな?」
「最悪の事態に備えたのです。資材は他にも転用できますしね」
「まあな」
アンディックは勇者パーティーの優秀な参謀でもあったのだ。
「ただ、今は集積するだけです。封鎖できる状況にはほど遠い」
突発的に大規模戦闘が起きなければ、森の中ではしばしの小康状態が続いていた。魔物とて無限に湧き出す訳ではない。冒険者たちは、疲れ果ててはいたが一息ついていた。
この膠着を利用して、こちらから何か先手を打たねばならない。
「資材の手当がついたのは助かりましたよ」
戻ったエルワン、ロッティと共にベルナールとアンディックは対策本部への通りを歩く。街中も当面直接的な脅威はないと分かり、落ち着きを取り戻していた。
「そろそろどうですかね?」
「この隙に各ダンジョンの魔物を掃討しましょう。騎士団を分けて向かわせます」
ギルドマスターのエルワンとアンディックは既に打ち合わせていたようだ。
「私も行きますよ」
そう言ってアンディックは手順を説明する。
レディスは赤の騎士を率いて東のサント・ロペ。ダレンスは青の騎士と共に西のシス・フール。そして北のラ・ロッシュにはアンディックが黄の騎士と緑の騎士と共に向かう。
「ダンジョンの魔物を一掃すれば封鎖部隊を編成できる。各守備隊から半数を抽出しろと、守備隊長に伝えてくれ。新ダンジョンに備えよと」
「はっ」
エルワンの指示を受けたロッティが各ダンジョンを回り守備隊長を説得する。開口の街を根城にしている冒険者たちも多数がこちらに移動出来るずだ。そうなれば五十名以上の増援を期待できる。




