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第八十四話「厄災の到来」

 早朝、北ギルドを訪ねて一通り掲示板を確認する。特に変化はないので、いつものように外に出て近くで待つ。


 ベルナールたちが掲示板のクエストを受けることなど滅多にない。訓練主体で常設クエストのダンジョンか、時には森に入り探査した魔物を相手に訓練をするからだ。数日地下に潜ったので今日は森かと考える。


 デフロットたちは今朝も律儀にギルドに入っていた。これはメンバー同士で朝一番の意思疎通を図る儀式のようなものである。


 ベルナールたちも昔はそうだった。勇者パーティーはギルドからの特命の依頼もあったから全員で顔を出す必要もあったからだ。


 一方バスティたちと朝のギルドで会うことはほとんどない。好き勝手に森を飛んで気ままに獲物を探すか、気が向いたらダンジョンに潜っているのだ。報酬目的ではないのだろう。ならばそれで良い。


「おっはよー。ベルさん今日も時間より早いわね」

「おはよう。ただの昔の習慣だ」


 セシールがやって来た。通りの先にはアレット、ロシェルの姿が見える。待ち合せの時間は農家の手伝いなどがある二人の時間に合せているのだ。


「ん?」


 突然、足元からビリビリと振動が伝わってきた。細かな揺れが地面を揺らす。


「なっ、これって何っ?」


 セシールは驚いて地面を見てから、アレットたちに視線を移す。この地方では珍しい地震かと思ったが、続いて聞こえてきた遠雷がその予想を打ち消した。


「ベルさん。何なの? この音は……」

「まさかな……。厄介な話だよ」


 そう言ってベルナールが周囲を見回すと、北東の森の先が煙っていた。しかしあれは煙などではない。崩壊した大地が上げる土煙である。地獄の釜の蓋が開いたのだ。


「なんてこった……」

「師匠―っ! あれは?」


 アレットが異変に気が付いて走って来た。ロシェルも後に続いている。


魔境大解放ダンジョン・クライシスだ。新たな(マウス)が開いたな」


 問題はその大きさだ。ベルナールにはあの(・・)土煙がかなりの規模に思えた。ずいぶんと昔、西の開口が開いた時に同種の体験をしている。


 ギルドからデフロットたちのパーティーが慌てて跳び出す。仲間の冒険者たちも同様に後に続く。


「なっ、なんだ~、あれは?」

「岩盤の大規模崩壊だよ。新たなダンジョンが誕生したんだ」

「えっ? ダッ、魔境大解放ダンジョン・クライシス~? この街で??」


 傍らにいる魔法使いの少女が素っ頓狂な声を上げ、他の冒険者たちやギルドの職員も続々と外に飛び出して来た。


「おっ、おい。新ダンジョンだってよ!」

「新階層じゃなくてダンジョン?」

「これから、どうなるんだ?!」


 若い冒険者たちが迫り来る現実を実感出来ないのは当然だった。大解放(クライシス)を初めての見るのだから無理もない。


「セシール、二人を頼む。ギルドマスターの指示に従え」

「ベルさんは?」

「様子を見てくる。偵察は必要だ。エルワンには俺が行ったと伝えといてくれ」

「分かったわ」

「よし、俺たちも行くぜ!」


 デフロットの宣言にメンバー同士は顔を見合わせ、そして頷き合う。


 ベルナールは魔力を発揮して北東への道を走った。デフロットが並び掛け、そしてベルナールを追い抜く。


「先行するな。ペースを合わせるんだっ!」

「へっ!」


 とは言ったものの、ロートルのペースに合せるのが正解だとも思えない。デフロットは構わず先へ行く。まるでベルナールに挑戦するかのようにだ。そして空に浮かび上がる。


「ちっ……」


 これは仕方のない現実だと思い舌打ちする。すると突然ベルナールの体をアシスト魔法が覆い、体がふわりと中に浮いた。


「御助力いたします」


 同じパーティーの魔法使いの少女がベルナールに並びかかった。確か名前はステイニーだと思い出す。


「ああなったら彼はもう止まりません」

「ったく……」

「それを皆で支えるのが私たちのパーティーなんです」

「くたばりそうになったら、また報酬をふっかけて助けてやるさ」

「よろしくお願いします」


 ステイニーはそう言って舌を出し、二人はデフロットを追って力強く上昇した。後方の左右に二人の仲間が続く。



 森が終わる先に荒野が見えた。ここは地下から湧き上がる魔力の影響で草木が生えないのだ。だからこの地も魔力透視の調査を受けていて問題なしとの結論がでている。にも係わらず(マウス)が出現したのだ。


 嫌な感じだった。北東はゴーストたちが跋扈(ばっこ)していた場所である。


「あれか……」


 眼下は森が切れて荒野となり、その先の大地に魔境がぽっかりと口を開けていた。


「新たな開口――か」


 周囲で蠢いている魔物の群が見える。ベルナールは呑気にも、ギルドはここにどんな名前を付けるのか、とふと思った。


「周辺にいる冒険者の動向は分かるか?」

「大勢接近中ですが、先行している人たちは遠巻きに様子を伺っているようです」


 魔法使いのステイニーが探査を使って状況を説明する。


「当然だ。それが定跡だからな。突っ込むバカはいないよ」


 だがこの状況でもデフロットはぐんぐんと開口に向けて距離をつめる。穴から続々と魔物が湧き出しているにもかかわらずだ。


「どうすれば良いでしょうか?」

「あの穴を塞ぐにはまだ戦力が足りん。森まで引いて遊撃戦で時間稼ぎに切り替えねばならん。しかし俺は強行偵察してエルワンに報告しなければならない。悪いがデフロットを利用させてもらう」

「はい……」


 開口がどんどん近づいて来た。


「遠距離攻撃が出来る者は左右に分かれて、あいつの着地点に何でもいいから露払いの攻撃をぶち込め! その後は周囲に陽動攻撃だ。ステイニーは俺をアシストしてデフロットの背後を守る。出来るな?」

「「「はいっ!」」」

「さあっ、あの無謀なリーダーに続けっ!」


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