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第八十二話「サン・サヴァンの夜」

「ほ~、これはまた久しい顔だな……」

「マスター、御無沙汰してました」

「ああ、最近街は騒がしくてな。お前さんが来てくれて心強いよ……」

「いえ……」


 ギーザーのマスターは何かを見透かしたように言い、アンディックも強く否定はしない。ダンジョンの街サン・サヴァンは、いつ何が起こってもおかしくはないのだ。


 ゴースト事件に続いて何かあるとはマスターの勘である。そして手早くビールを二つ出してくれた。


「エルワンは昔のままでしたね」

「あいつは偉ぶらないな。ギルドマスターとしての威厳はないが、北ギルドは上手く回っているよ」


 人の上に立つ資質があっても、弱くてはパーティーを率いるリーダーにはなれない。しかしギルドマスターには強さ以外の様々な力量が求められる。


 ベルナールは新階層突入やゴースト事件について話をした。アンディックも王都の新ダンジョンでの戦いを話す。マスターの口は堅いので気兼ねする必要はない。



「お待たせしました……」


 しばらくしてからエルワンが店にやって来て、カウンターに座った。


「忙しいんだろ? 無理するなよ」

「いえいえ……、これも仕事です。貴重な話を聞けるんですから」

「そうだな。気ままに魔物と戦うだけの俺とは違って、お前は責任ある仕事だしな」

「今頃、何言ってるんですか……」


 まずエルワンはレディスとアルマの派遣について礼を言う。そしてアンディックは、それは自分の采配で近郊の駐屯部隊は自分の指揮下だと明かした。


 ゴースト出現に対して王都は強い危機感を持っているとも話した。王都の新ダンジョンと共に警戒しているとのことだ。


 そしてもう一人の仲間、魔導闘士(ソーサエーター)のブラッドリーの消息についても語った。


 他国を点々と転々と旅しながら、王宮にいるアンディックに手紙をくれるそうだ。内容は各地における魔物の動向とゴーストについてなど。ブラッドリーの旅はこの国、アルトワ王国の情報要員としての側面もあるようだ。手紙は大使館経由なので検閲されることはない。


「あいつめ! 他の国ばかりじゃなくて、この街にも来いってんだ」


 ベルナールは冗談まじりに毒づいた。世界中を旅するのが夢と言ってこの街を出て行った男は、今も夢の途中らしい。


「そのうちに顔を出すと手紙に書いてありましたよ」

「そうか!」

「他国でもゴースト事件は起こっているのですか……」

「全てではありませんがね」


 エルワンの興味はやはりゴーストの情報だ。ベルナールはある可能性に思い至る。


「そして全くゴーストが出現しない国があるってことか?」

「そうです。その辺りもはっきりさせたいのですがね」


 アンディックの答にエルワンは小さく頷く。どこかの国があの三人の背後にいる。ありえる話だとベルナールは思った。



 ギーザーでの宴は解散となり。ベルナールとアンディックはセシリアの店に場所を変えた。ディオンがホールを手伝っている。


「感心だなあ」

「食事を頂いたお礼です。シャングリラの食堂でいつもやっていますから」

「そうか」


 厨房からセシリアがやって来てカウンターの中に入る。


「ベルたちも座ってよ。まだ飲むの?」

「ああ、ビールをくれ」

「どうせ食べてないんでしょう。何か出すわ」


 カウンター席に座ると、セシールがビールと焼いたパンが入ったシチュー、サラダを持って来た。


「悪いな、こんな時間に」

「余り物だから気にしないで」


 もう時間は閉店間際であった。


「セシリアの手作り料理をまた食べられるなんて感激ですね」


 今日のアンディックは感激してばかりだ。そう言ってスプレーでシチューをすくう。


「うん、旨い。昔と同じ味です」


 ベルナールも少し昔を思い出す。


「そうだな。前は鍋を焦がしたりもしていた」

「嫌だ、変なこと言わないでよ」


 後ろからテーブル席を片付けているセシリアの声が飛ぶ。勇者などと呼ばれていても、セシリア昔から小さな食堂をやりたいと言っていて料理などしていたのだ。試食係はベルナールたちであった。


「さて、今日はもうおしまいね。ベルもアンディックも御苦労様でした」


 そう言ってサンドイッチの包みをカウンターに置いた。ベルナールの明日の朝食である。


 シャングリラでは朝帰りの客の為に朝食の提供もしていた。アンディックとディオンはそちらで食べるのだ。


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