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第八十一話「魔導闘士ディオン」

「一体C級を見つけました。ディオン、やってみますか? 私がアシストしますよ」

「ぜひ! よろしくお願いします」


 アンディックの先導で主回廊に戻ってから更に奥へと進む。いつもと同じで支道の奥からは他のパーティーが戦っている息吹が聞こえてきた。


「ここですね」


 そして細い分岐道に曲がり、アンディックは道を空けてうながした。ディオンが剣を抜きつつ先頭に立つ。


 一体の燃えるような獣が二本の足で立ち上がる。この赤熊(ロート・ベーア)はC級の中位といったところだ。


 ベルナールはディオンが戦う姿を見たことはない。アンディックは魔導師(マスターソーサラー)の力でその力を計り、この相手ならば危険なく戦えると判断したのであろう。


 魔法を操る魔導剣を構えてディオンは前に出る。アンディックもまた抜剣し、後方に配置した。


 ディオンは剣を下に引いてから飛び掛かって打ちかける。赤熊(ロート・ベーア)は長い爪が付いている腕を振り下ろすが、ディオンの剣が先に胴体にぶち当たった。そしてそこから同時に円形障壁が展開し熊の爪を食い止める。


 攻撃の魔力発動と同時に防御も発揮させる魔導闘士(ソーサエーター)特有の技である。


 二撃、三撃と互いに攻撃を合わす。剣一本が二本の腕の攻撃を上手くしのいでいるが、体格差はいかんともしがたい。


 徐々に後退するディオンは体を入れ替えて後ろに回る。すかさず剣を引いて相手の体に突き立てた。


 瞬間切っ先が光を帯びて伸び、赤熊(ロート・ベーア)の胴体を貫通した。魔力の刃である。胴が破裂するが傷口は小さくすぐに修復されてしまった。


「魔力がまだ弱かったですね。もう少しでした……」

「面白い戦い方だわ。矢で炸裂させるのと同じね……」


 アンディックは残念そうに呟き、セシールは弓使い(アーチャー)らしい感想を漏らす。単純に魔撃を飛ばすよりも強力であるが、ディオンの力でまだこの敵は荷が重い。


「アシストするのでもう一度やってみて下さい」

「はいっ!」


 アンディックは手をかざしディオンの剣へ魔力充填を始めた。そしてディオンはタイミングを計り再びの攻撃を仕掛ける。隙を突いたディオンは正面に剣を突き立てて飛び退いた。


「やったわ!」


 炸裂が背中に抜けて赤熊(ロート・ベーア)は崩れ落ち、腹から魔核がこぼれ落ちる。


「お前のアシストを上手く受け止めたな」

「ええ、彼はセンスがありますよ。成長が楽しみです」

「ああ」


 シャングリラの子ならばベルナールとアンディックの弟、いや、息子みたいなものである。


 それから六人は数体の弱い魔物を打ち倒した。


 ベルナールは最小の魔撃を糸のように変化させる制御を披露した。


 セシールは実体を使わない魔撃の矢を試してみた。


 アンディックは障壁に攻撃魔法を仕込んで、防御で魔物を倒して見せた。


 互いの力を披露し合い、あくまで訓練と見学として少量の魔物を倒しす。あまりハデにやっては他の冒険者の稼ぎを圧迫しかねないからだ。


「こうやってみると魔力って色々な応用があるのねえ」

「自分は何が得意か、それを極めるんだ」

「うん」


 アンディックとディオンの戦いはセシールの刺激にもなったようだ。



 午後になり獲物の数も減ってきたので引き上げとした。ベルナールたちは地上を目指す。


「そうだ、少し寄り道していこう」


 ベルナールは思い出し第四階層に入る。回廊を進んで問題の壁を指差した。


「この先に何か感じるか?」


 そこは以前ロシェルが、先があると言っていた場所だ。アンディックは側壁に歩み寄り手を当てる。


「支道があるかもしれん」

「空洞は確かにありますね。大きいですがかなり遠い」

「別段気にすることもないか……」


 このダンジョンから繋がる空間でなければ問題はない。この深さでは地上に口が開くこともないだろう。



 街に帰り着き、セシールたち若手は魔核の換金をする為ギルドに入っていった。ベルナールとアンディックは表で待つ。


「この街も変わりません……」


 そう呟いて周囲を見回す。クエストを終わらせた若い冒険者たちが悲喜こもごもの顔でギルドに帰還する。


 稼げたであろう笑顔、全員が落胆に顔を曇らせているパーティー、喧嘩している男の剣士と魔導闘士を仲裁している魔法使いの少女。本当にこの風景は変わらない。


「ただ昔のような活気はないよなあ。たいして獲物が出ないから」

「平和ってことですね」

「そう、それはその通りだ。平和だから酒も飲めるしな」

「はは、ベルはいつもそれですね」


 災害と呼べるほど魔物の群が襲いかかる絶望感に比べれば、これは本当に平和で幸福な光景である。


「これ~」


 戻って来たロシェルが、アンディックに数枚の小さな銀貨と銅貨の乗った手を差し出す。


「いえ、私は――」

「俺たちは頭割りとしているんだ。受け取ってくれ」


 アンディックは遠慮するが、今日は全員が何らかの魔物を倒しているので問題はない。


「分かりました。ありがたく頂戴いたしましょう」


 そして跪きロシェルと目線を合わせ、王宮魔導師(マスターソーサラー)としてはささやかな(・・・・・)報酬を受け取る。


「クエストの報酬なんて何年ぶりですよ。感激です」

「いえ~……」


 とロシェルは少し照れた。アンディックも本当に嬉しそうだ。


「なあ、冒険者は良いだろ?」

「ええ、昔を思い出しました」



「ちょっと待って下さいよ!」


 せっかくの雰囲気をぶち壊すように、ギルドマスター殿のエルワンが飛びだして来る。


「ここの責任者に挨拶もなしなんて……」


 セシールたちの話を聞いた職員が上司に報告でもしたのだろう。


「久しぶりだね。エルワン」

「御無沙汰してます。アンディックさん」

「昨日来たんだ。しばらく滞在するから、そのうち紹介しようと思っていた――」


 エルワンのことをすっかり忘れていたベルナールは言い訳する。


「――お前に話すとすぐに話を大袈裟にするからな」

「ひどいなあ……」

「ギーザーに行くが来るか?」

「もちろんです! すぐ仕事を終わらせますから先に行ってて下さい」

「待ってるぞ」


 アレットとロシェルは村に帰って、セシールとディオンはセシリアの店で食事だ。ベルナールとアンディックは共に懐かしい店を目指した。


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