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第八十話「それぞれの核心」

 総勢六名が北ギルドの前にそろった。


 今日からアンディックを交えての訓練やクエスト、特にロシェルとディオンへ魔法系の指導など出来ればとベルナールは考えていた。


「彼はアンディック、魔導士(ソーサラー)だ。今は王都にいるが、昔はこの街で俺とパーティーを組んでいた」


 アレットとロシェルは目を見張って小さな歓声を上げた。勇者パーティーの話は当然知っている。


「そして昔世話になった、この近くの開拓地から来たディオンだ。アレットと同じ年頃だな。魔導闘士(ソーサエーター)だ」


 ベルナールは、今度は弟子の二人を紹介する。


「アレットとロシェルだ」

「二人も弟子を取るなんて、さすがベルですね。よろしく、私はベルの古い友人のアンディックです」

「ディオンです。よろしくお願いします」


 続いて弟子の二人が挨拶を返す。


「アレットです。よろしくお願いします」

「ロシェルです~。よろしくです~」


 二人共に新たな勇者を前にして緊張ぎみであり、ディオンを含めて少々ぎこちない。


「ディオンは一週間ほど街に滞在する予定だ。その間はこの六人でパーティーを組もうと思う」


 近い将来、この三人が街を守る強力なパーティーに成長するのかも知れない。最初の出会いとはこんなものだ。



 一行は森の道を歩き、北を目指した。セシールが先頭を歩きディオンに話し掛け、アレット、ロシェル共に加わる。

 ベルナールとアンディックは周囲を警戒しつつ、並んで最後尾を歩く。


「王都の様子はどうだ?」

「今は落ち着きました。小康状態ですね。大解放(クライシス)の時は大騒ぎでしたけど……」

「以前のに比べては?」

「うーん、早い段階で封じ込めに成功出来ましたから、今回の方が楽ですかね」


 以前とはベルナールのパーティーに参戦要請があった事件だ。山岳部の奥から魔物の群が押し寄せ王都は危機に陥った。



 ラ・ロッシュ開口の前ではマークスが若い守備隊員たちに指示を出していた。こちらに気が付いて一瞬、呆けたような顔になる。そして破顔しこちらに駆け寄って来た。


「中の様子はどうだ?」

「いつも通りだよ」


 ベルナールの問いにいつものように返してからアンディックに向き直る。


「王宮魔導師(マスターソーサラー)様に見ていただくのには、恐縮するほど平和さ」


 そして二人もまた握手を交わす。別のパーティーであったがこの穴蔵で共に死線をくぐり抜けた。アンディックが王宮に入ると聞いて自分のことのように喜び合った仲間でもある。


「今日は私的な里帰りです」

「その恰好、心得ているさ。お帰りアンディック」

「ええ、マークス」



 再会の儀式もそこそこに、大所帯になったセシールのパーティーはダンジョンの最下層を目指した。


「第六階層への突入はバスティのパーティーが先鋒だった。リーダーはアレクという女性だ。知ってるか?」

「ええ、王都のダンジョンで面識があります」

「そうか! 次がデフロットという若手で、俺たちは三番手だったんだ」

「本来なら我々が行くべき地でした。ベルだけでも突入に参加出来たのなら良しですよ」

「うん、セシリアだって来られたんだが、今は店が一番大事だからなあ」

「またベルと一緒に、ここに潜れるなんて感激ですね」


 二人の話は尽きない。一行は第六階層にたどり着く。


「基本、報酬より若手の訓練主体で戦っている。適当な獲物を探せるか?」


 Sクラスの魔導士(ソーサラー)ならばこの程度の階層は隅から隅まで探査できる。ベルナールより若く、たとえ魔力が衰えていたとしても制御で弱いなりに力を集中させられるのだ。


「そうですね。何組か戦っていますが……、こちらにしましょうか」


 そう言ってアンディックは巨大ホールとは逆に歩き出した。


「犬系の群――ですかね? 数頭が中程度のホールにいます。それにしましょう」

「ああ、大丈夫だ」


 それならばここの攻略戦で、セシールたちは狂犬(マッド・ドック)の群を掃討していた。


「ここです」


 アンディックの先導でぞろぞろと六人が支道の先へと続いた。稼ぎ主体ならパーティーを二つに分けるのだが、これは訓練なので見学も勉強なのだ。


 ホールの奥には魔物がかたまってうずくまっていた。そしてのっそりと首をもたげてこちらを見る。


「ミニ・フェンリルが五頭か……」


 それはフェンリルとは違い普通のオオカミサイズで、耳まで裂けた大きな口を持つ。人間の頭から胴体まで食らい付いてくるような攻撃力を持っていた。狂犬(マッド・ドック)よりは危険な五頭である。


「私たちでやってもいいかな?」

「ああ、構わんが――」


 セシールの言葉に、ベルナールが視線を移すとアンディックも頷いた。


「――注意してな」

「うんっ、アレット、ロシェル! やり方は分かっているわね!」

「はいっ!」

「はい~!」


 アレットは剣を抜いて前に出、ロシェルは弓を構えて矢を抜く。セシールも同様にした。


 少し身をかがめたアレットがミニ・フェンリルに向かって飛び出す。飛び掛かってくる相手に止まってから横に飛び退いた。ロシェルの矢がそのフェンリルに突き刺さり、ひるんだ隙にアレットがトドメを刺す。そして後退した。


「やるじゃないですか……。さすがベルの弟子ですね」


「いや、教えているのはセシリアの娘だ。昔から一番偉いのは弓使い(アーチャー)なんだよな」

「あはは、なるほど。私たちもそうでしたね」


 余裕のある戦い方なのでアンディックもベルナールも軽口まじりである。


 アレットが牽制しロシェルが遠距離で攻撃してから再びアレットが仕留める、パーティー単位で戦う教科書のような作戦だった。フェンリルが同時に二頭襲い掛かるが、その時はセシールが弓を射る。


 一対一ならば苦戦するであろう二人も、このような作戦で優位に立てる。危なげなく戦いは終わった。


「どうでしょうか。アンディックさん……」

「素晴らしいよ。私も部下にこのように戦え、と言っているのだがね。それでも彼ら彼女らは自分が仕留めるんだと、全員で突っ込むんだ。私に指導者としての才能はないようだよ」

「ははっ、俺は人徳でパーティーメンバーには恵まれているんだ」

「私も二人の副官には(・・)恵まれているんですけどねえ……」


 アンディックの謙遜もベルナールの突っ込みも冗談だ。レディスもアルマも自由に戦って、そして生き残っている。人にとっての核心は様々だ。


 アレットとロシェルは強くなるために、そして何より家族を助ける為、報酬の為に冒険者となった。そして今のように戦う。どちらも正解なのだ。


 ベルナールは街に残り冒険者を続け、セシリアは、今は店が一番大事である。アンディックは王宮に入る道を選んだ。道は違えど全てがそれぞれの核心である。


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