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第七十九話「遠方より来たる」

 森を駆けて抜けて魔物を狩り、ダンジョンに潜り弟子たちを見守る毎日。ベルナールにとっては平穏であり、満足な日々であった。



 今日も弟子たちと分かれてからギーザーに顔を出し、そして二件目はこの店だ。最近の稼ぎはまあまあである。


 ベルナールがセシリアの店に入ると珍しくカウンターに先客がいた。長い金髪を後ろで縛り冒険者の恰好をした男。そして隣には子供が座っている。


 セシリアとセシールが目を輝かせながら二人掛かりで接客をしていた。


「あっ! べル!」


 気が付いたセシリアは声を上げ、その男が振り向き立ち上がる。


「お前は――」


 ベルナールは二の句が継げず一瞬かたまった。夢でも見ているのかと思った。


「――アンディック……」

「お久しぶりですね。ベル……」


 互いに歩み寄り、手を差し出し合ってガッチリと握手を交わす。


「ああ、本当に久しぶりだ。それとディオンもよく来たな」

「先にシャングリラに挨拶をしてきました。こちらに来ると言ってたので声を掛けたのですよ」

「よろしくお願いします」


 立ち上がったディオンはペコリと頭を下げる。


「おおっ、明日からウチの――、いやセシールのパーティーに入れ。俺はギルドをクビななったしな」

「聞きました。おかしな制度で申し訳ない」

「お前のせいじゃないだろう」

「まあ……」


 三人共にカウンター席に座り、セシリアは手際よくビールを差し出す。二人はジョッキ軽く合せた。


「ところで、どうしてこんなところへ……」


 突然目の前に現われた懐かしい顔にベルナールは思わず聞く。


「こんなところなんてご挨拶よねえ?」

「あっ、いや、このこの街にってことだよ」


 セシリアの突っ込みにベルナールは言い訳するが、これは古くからの仲間ゆえの会話だ。そして目の前にいるこの男もまた古い仲間であった。


「分かってるわよ」

「ああ、しかし驚いた」


 男の名はアンディック。Sクラスの魔導士(ソーサラー)である。かつてはベルナールのパーティーで勇者の名をほしいままに活躍していた。


「本当に久し振り。手紙をもらったのに返事も書かないで悪かったね。こちらを訪ねる予定が持ち上がったから……」

「いや、来てくれ嬉しいよ。どうしたその格好は? 王宮のお抱え魔導師はクビになったのか?」


 冒険者の魔導士(ソーサラー)から王宮に入り魔導師となった旧知の友は、普通の冒険者姿である。


「べルじゃあるまいしねえ……」

「この街で仕事の服は仰々しいので着替えてきましたよ。さすがにここであれ(・・)では……」


 セシリアが突っ込み、アンディックは笑って返す。威厳のある王宮魔導師の衣装では、この街で着ては、目立ってしょうがない。


「まあ、そりゃそうか」

「ダンジョンの新しい階層を見学に来ました。勝手知ったる場所ですし、視察に行ってこいとも言われましてね」

「なるほどな。早速明日にでもウチのパーティーで案内する」

「助かります。それから悪いのですが私の身分は伏せてお願いします」

「まあ、それがいいな」


 あくまで私的を強調しなければ、またギルドマスターが余計な詮索をするだろう。


「部下たちが御世話になったようで。そちらも助かりましたよ」

「ん? 部下――レディスたちのことかあ?」

「ええ、実はあの部隊の面倒を見ているのは私なんですよ」

「なるほど。そうか、そうだったのか……」

「開拓地がこの街の近くだったので、輜重隊に付ける護衛任務に志願したのです」

「そうか、大変だなあ……元気の良い若い連中ばかりなんだろ?」


 ベルナールはアルマの顔を思い浮かべた。あれが部下では骨が折れる。


「ははは、若者の面倒をみるのが私の主な仕事ですよ」

「そうか、俺もそうだよ。そうだよなあ。俺たちも歳をとったよあ……」


 ベルナールは遠くを見るような目になって、ビールジョッキを傾けた。


 そして静かに二人を見ている少年もいたと気が付く。冒険者に憧れている魔導闘士(ソーサエーター)だ。


「ディオンはまだ学校だよな。いつまでいられるんだ?」

「学校は建物の工事で一週間お休みなんです。街ではシャングリラの部屋を使わせてもらいます」

「ほ~、それは良かった。お前も顔を出したのか?」


 ベルナールはアンディックに話を振った。


「もちろんです。マダムに挨拶してきました。私の部屋も用意してくれるそうです。それからベルによろしく、とマダムに言われましたよ」


 アンディックはそう言って肩をすくめる。何かしら聞かされた、との表情だった。


「そうか……。しばらくは用心棒が二人もいてあの人も安心さ。セシール、明日は全員でダンジョンに行こう!」

「ええ、同年代の男の子と一緒に戦うなんて、アレットとロシェルも喜ぶわ。それに王宮魔導師も一緒なんて――!」


 そう言って目を輝かせる。セシールは子供の頃から若き勇者たちの活躍を聞かされて育ったのだ。


「二人も弟子がいるのですね。ずいぶんと大所帯のパーティーになります」


 アンディックは既に、アレットとロシェルについてセシールから聞いているようだ。


「ああ、明日は賑やかなクエストになるぞ。セシリアも来いよ!」

「私はお店の準備よ。楽しんでらっしゃいな」


ここまで書いてようやっと、あらすじを回収できました。

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