第六十七話「討伐隊、出撃!」
いよいよ対ゴースト討伐部隊の出撃となった。
第一班はベルナールとセシール、レディスにアルマの四名。デフロットのパーティーが第二班で、バスティたちが第三班となる。
それぞれ既に先発し、おのおので北東の森、右翼と左翼を目指していた。これは牽制であり、あくまでも討伐の主力はベルナールたちである。バスティが囮と言っていた通りとなった。
そして一班の全員が中央ギルドの屋上に居並ぶ。
「さて、行くとするか……」
「一応、作戦とかを話し合いませんか?」
事前の打ち合わせなど何もせずに屋上まで来たので、ベルナールの言葉にエルワンは少し不安そうだった。
「ベルの魔力支援は私がするから、他の人は敵だけに専念して」
「それだけですか?」
「そんなものだよ」
ベルナールとセシリアの打ち合わせは、いつもあってないようなものだった。エルワンが拍子抜けするのは当然だ。
「俺たちは昔からこんなモンなんだ……」
強い人間たちで戦の次元を共有していれば、話すことなどはそんなものだ。状況は常に変わるのだから、綿密な作戦などは足枷にしかならない。
相手はゴーストだ。魔物ではないので動きが読めないのだ。
「それでけっこうですわ。短期決戦でいきましょう。時間は彼らに味方しますから」
「そうそう上手くいきますかねえ……」
レディスの言葉にも納得いかないエルワンは更に不安げにベルナールを見た。
「相手にこちらの情報を渡す前に一気に殲滅する。いい方法だ。前回もそれで決めた。アンディクの作戦だったよ」
「なるほど、そうですか!」
よく分からないがエルワンは納得したようだ。アンディクはこの街から王都へ行った者の出世頭だ。要は権力志向らしい。ベルナールは呆れる。
「何がなるほどだよ……」
◆
四人で高空を飛びつつ森を見下ろす。集中していたレディスは息を付いた。
「残滓とは何なのだ?」
ベルナールは昨日からの疑問をぶつけた。
「同族系なら分かる匂いのようなものです。これはたとえですわ」
ベルナールが魔物を追う時に感じる魔力の残滓とは違うようだ。
「ダンジョンの民なら分かるのか?」
「分かる場合もありますし、なんとなく感じるだけもありますわ」
ダンジョンの部族は無数にある。巨大ダンジョンを核とする大部族もあれば、小規模な集落で暮す民もいる。他の部族と交流をする者たちもいるし、しない者たちもいた。
つまり相手はレディスの出身部族か、又は交流がある者たちなのだ。レディスはベルナールに知られると分かっていて説明している。
「今、残滓は森の中を北へ向かって伸びています。魔力を補給する為に狩りを――そろそろですよ」
レディスにつられて四人の編隊は高度を徐々に落とす。
「いたわ、一体ね!」
セシリアは嬉々として弓矢を取り出し、攻撃準備を始めた。
「いいのか?」
「はい、あの一体は北に――、仲間の元に追い込まれますわ。私たちは先行して他を見つけます」
「いいだろう」
レディスとアルマは速度を上げて北へと飛んだ。一方セシリアは弓を絞り込む。
「今度は上手くいきますようにいっ――、それっ!」
放たれた超速の矢が森に吸い込まれて行く。木々の間で閃光が煌めいた。
「よしっ!」
セシリアは更に二の矢を準備する。これが魔力爆発であった。音や物理炸裂ではない。広がった魔力が一体のゴーストを追い立てた。
連続攻撃にゴーストは蛇行しつつ北へ遁走しているようだ。
「今度は上手くいったな。どうやったんだ?」
「本体への攻撃なら魔力を押さえ込まれる。でもそばで炸裂させれば――ね」
「なるほど……」
「追い込むだけならこれでいいわ」
セシリアなりに対ゴーストへの戦を考えていたようだ。致命傷にはならないが広がる魔力は敵を追い立てるには十分のようだ。しかしこの攻撃を続けていては無駄に魔力を消費する。
「下りるか」
「ええ!」
二人は目標を定めて降下した。木々の間を黒い巨体が疾走している。サイプロクスだった。
「よーしっ、俺の出番だな……」
ベルナールは剣を振りかざして肉薄、逃げるサイプロクスはチラリと後方を確認した。セシリアのアシストは容赦なくベルナールを敵の間合いに放り込む。
「おわっ!」
と、思わず声を上げるが間合いは絶妙だった。古馴染みは伊達ではないのだ。
振りかぶった剣が魔力をまとって煌めく。サイプロクスは凶悪な力を溜め込んだ右手を突き出した。まずはこの程度だなと、ベルナールはその攻撃に剣を合せる。
二人の力がぶつかり合いベルナールは地上に降り立つ。そしてサイプロクスと対峙した。
「やはり戦はこうでなくちゃあなあ」
空中戦など性に合わないし、またその力も無い。ベルナールは目の前の敵に感謝した。サイプロクスもそう思っているのか、胸に張り付いている人間の顔が不敵に笑う。




