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第六十一話「抑制と解放」

「おーいっ! 偉いやつらが集まって何をやってんだ?」


 いつもと同じようにデフロットたちの登場だった。そしていつもと同じ調子なので、ベルナールは苦笑する。


「ちょっとした調査だ。そっちはどうだった?」

「Bの弱いのを一にC級が二だよ。たいして数はいない」


 デフロットはいかにも不満げに言う。今の状況ではそのようなものだろう。しかしセシールと弟子の三人で潜るのは少々キツいか、などとベルナールは考えた。


「十分だろう。この場所もそろそろだぞ」

「おっ、そうか。俺が一番クジを引いてるんだ。腕が鳴るぜ……」


 デフロットはいかにも嬉しそうに言う。他のメンバーたちは後ろで顔を見合わせた。


「誰なのだ?」


 話に興味を持ったのか、アルマはベルナールを見上げる。


「ここでジャバウォックを共同討伐したパーティーだよ」


 とベルナールはデフロットたちを紹介した。そしてアルマは驚いたような顔になる。戦いのこととなると話の食いつきが違うのだ。


「おーっ! なかなかやるではないか! A級を倒すなどたいしたものだな」

「ん、なんだ? このチビは……」

「チッ、チビだとーっ!?」


 アルマの顔がいつぞやのように、みるみる赤く染まった。背が低いのだから仕方ないが、デフロットの言い方もどうにかならないかと、ベルナールは溜息をつきたくなった。


「ぶっ、無礼な!」

「あん? じゃあペッタンコンかあ?」


 無礼と言われたので、デフロットはむっとしたように言い返す。まるで子供の喧嘩なのでベルナールは、今度は溜息をついた。胸のことなど言うなよと。


「ぶっ、ぶっ! 無礼者――」

「デフロット! それセクハラよ。失礼じゃない!」


 さすがにステイニーが止めに入った。ベルナールは彼女の胸をチラリと見る。


「別にいいじゃねえか。背の高さや胸で戦う訳じゃねえし……」

「だからって……」

「ステイニーも小さいのが気になってんのか? 俺はそれでいいと思うぜ」

「こんな所でいちいち言わないの!」


 痴話喧嘩もいいかげんにしろと、ベルナールはフォローする。いつまでも続けられてはたまらない。


「デフロット。この娘たちは冒険者の恰好をしているが王都の騎士だぞ」

「なっ、騎士だと?! いや、その歳で凄いじゃないか……。騎士様なんて初めて見たぜ」


 デフロットは素直に驚く。この街に騎士など来るのはまれなのだ。


「むっ……」


 そしてアルマの顔色は普通の色に戻り、表情は素直に明るくなる。


「やっぱ強いのか?」

「単独で倒したのはB級までだが……」

「……」

「――だそうだ」


 ちょっと間が空いたのでベルナールは付け加えた。控えめに言ったアルマに対して、デフロットの次の言葉が気になる。


「その歳でそこまで戦えんならたいしたもんだよ。なあ? ステイニー」

「ええ、この年の頃はあなた、C級から逃げ回ってたわよ」

「ちっ、違――、敵を誘ってたんだ。作戦だよ」

「あらあら。そうだったっけ?」


 デフロットとステイニーのやりとりを聞いて、アルマはニンマリと笑ってから口を開く。


「私も最初は逃げながら戦っていたぞ!」

「そうだろう、作戦よ!」


 アルマのフォローにデフロットは胸を張った。どっちもどっちにしか見えない。


 デフロットは、言葉使いは悪いが、ただの天然で決して悪意はない。意外にアルマのような性格には合うのかもしれなかった。


 無駄話をしてしてもしょうがないので、ベルナールはデフロットたちに、簡単に事情を説明する。


「そうか、封印でこの街に来たのか……。まっ、俺は早く先に進みたいんだがな」


 デフロットらしい感想だった。だが下に行くのは、第五階層でもっと狩りを続けてからだ。


「俺たちはもう少し稼いでいく。ギルドマスター、巨大ホールの件は頼むぜ!」

「うん、出たら封鎖して声を掛けるから」


 ステイニーはベルナールの方をチラリと見て小さく頭を下げる。デフロットたちが戦う時は、ベルナールとバスティのパーティーも支援に就くのだ。



「さて、我々は帰りますか」

「うむ、そうするか」


 エルワンも暇ではない。ベルナールたちは地上へと上がった。帰りがけにマークスに声を掛ける。


「最近バスティたちは来ていないのか?」

「ああ、御無沙汰だ。人出の割には、獲物は少ないしな」

「巨大ホールに出現の兆候がある。他の小ホールにも小物が出るだろう」

「分かった。注意するよ」


   ◆


 そして公約通りに馴染みのスイーツ店に寄る。店主のママは、今回も直々に注文を聞きに来た。


「あらあら、年寄り二人に若い娘さんが二人なんてね。どんな組合わせなのかしら?」

「極秘任務だ。いつものおすすめを二つにお茶を四つだ」

「久しぶりねえ、エルワン。しばらく見ないからとっくに死んだと思っていたわ」

「ひどいなあ、街の仕事が忙しくてほとんどダンジョンには来ていないんですよ。私もスイーツを頂きます」

「三つにしてくれ」


 エルワンのパーティーにも女性メンバーはいたので、現役の頃はよくこの店にも来ていた。



 スイーツが運ばれレディスとアルマは無言でパクつく。お茶は例のお茶だ。成り行きで注文したエルワンは懐かしそうに食べている。


「レディス。王都のダンジョン近くにもこのような店を作りたいな!」

「どこかのお店が立候補すれば作れますわ」

「王宮のパティシエを派遣すればすぐにでも――」

「ダメです!」


 アルマはパンケーキの欠片で、たっぷりの蜂蜜をすくって口に入れた。咀嚼しつつ、次に何を言おうかと考える。


「王都の菓子工房がどこか名乗りを上げてくれるかな? なんなら私が声を掛けてみても――」

「それもダメです!」

「む~……」


 貴族様が安易に権力を行使してはいけないのだ。


   ◆


 満足のティータイムが終り四人は店を出た。支払いは全てギルドで済ます接待となる。


「もうこんな時間ですか、帰りは飛びましょう。空からも周囲を見たいですわ」


 レディスは傾きつつある太陽を見て言う。ベルナールとエルワンは顔を見合わせた。


「俺はもうあまり飛べない。街まではどうかなあ……。エルワン、お前はどうだ?」

「私も同じようなもので……」

「大丈夫ですわ。私が二人をアシストいたします」


 レディスが言い、アルマはニヤニヤとしながらベルナールを見る。


「私がアシストしても良いが、制御が今一つなのだ。レディスは優しく飛ばしてくれるぞ!」



 街を抜けてから四人は大空を飛ぶ。レディスとベルナール、エルワンはゆっくりと上昇した。


 一方アルマはうっぷんを晴らすように急上昇する。


「ふふっ、ふはははーーっ!」


 魔力伝達の声が頭に響く。そしてジグザクに機動して飛行を楽しんでいる。


「元勇者と私とレディスでゴーストを狩るのだからな! 楽しいじゃないか!」

「アルマ、おやめなさい」

「いいではないか。制御は難しいのだ」


 それは制御を得意とするベルナールとは対局にある、荒々しい魔力の解放だった。


 武器にもなるが、決して強さの証明ではない。戦いでもなく、若々しく、ただただ無邪気な解放であった。


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