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第四十一話「少年ディオン」

「今まで出没した魔物の数と種類を教えてくれ」

「アラクネーが二回、ヒュドラと、オーガが一回ずつ。一番新しいのはグレンデルが一回です」



 ベルナールとディオンは二人で森の中を歩く。ディオンは名前も全て把握していた。


「今まで魔物を倒したことは?」

「それは……、ありません。レイルシーさんから戦いは禁じられています――」


 ディオンは一見して魔導闘士(ソーサエーター)の格好をしている。腰に下げている剣も魔導具のようだ。


「――単独では危険だと。ここではパーティーを組めませんし……」

「それはそうだ」

「ベルナールさんはSクラスの冒険者、勇者なのですか?」

「うーん、昔の話だよ」


 そうだ、と言えば嘘になってしまう。隠すことでもないので、ベルナールは事情を説明した。


「つまり今の俺は冒険者ではない。お前さんと同じGクラスのヘルプ扱いだ」

「まっ、まさか! 僕が勇者と同じだなんて!」


 アレットとロシェルは実力がDだが、登録はFクラスの冒険者だ。登録さえすればディオンも同じFとなる。


「はははっ、そんなことはないぞ。まあ、今日はよろしく頼むよ」

「はい……」


 ディオンは少し困ったように笑う。ムダ話をしながらも周囲に気を配り続ける少年に、ベルナールは感心していた。


 小物ぐらいを見つけて狩りたいが、平和な森ではそれも叶わない。


 ベルナールは昨日と同じようにお茶や山菜などを採った。ディオンは穴場なども熟知している。子供のころから慣れ親しんでいる森なのだ。平和な時間(とき)だった。


 しかし本来の仕事を忘れる訳にはいかない.


「今日も魔物は出ないか……」

「三、四日に一度はこちらに接近して来ますから、もうそろそろではと……」

「ふむ……」

「二人はペアで追っていました。あれでは包囲は……」


 この少年は出現するタイミングを計りつつ、その不手際も見抜いていた。頭の良い子なのだろう。


「軍だからなあ。何を考えているのか……」


 森での戦いは、二人の場合は接触から一撃、せめて二の矢で倒さねば魔物には逃げられてしまう。だから冒険者のパーティーは四人編成が多いのだ。


 予め包囲を想定しつつ、獲物を囲む配置についてから攻撃を開始する。王都から来たのならば、新ダンジョンで戦っていた新兵なのだろう。


 力を過信しているのか、まだ訓練の途中のようだ。バカでもなければ、少しはこれから考えるだろう。


 二人はディオンの案内で森の深部まで探索した。しかし今日も魔物の気配は感じられない。


 小川沿いに腰を下ろして、レイルシーが作ってくれた昼食をとる。


「午後は戻りながら、魔物を狩る訓練でもするか?」

「ぜっ、ぜひ! よろしくお願いします」

「うむ」


 ディオンからは、やる気が満ち溢れている。


「その魔導具の剣はどうしたんだ?」

「レイルシーさんが村の予算で買ってくれたんです。街の武器屋でです」

魔導闘士(ソーサエーター)か……」

「はい、今は魔力を使う訓練もすればいいと、村の元冒険者たちにも言われました」


 おそらく間違いではない。この少年の可能性は、まだ定まっていないのだろう。


 結局今日も薬草とキノコ採取に明け暮れ、そして二人は訓練をしながら剣を振るい、集落へと戻った。



「お疲れ様、収穫は?」

「今日も食料の調達さ」


 ベルナールとディオンをレイルシーが出迎えてくれる。


「それでも助かるわ。今は物騒で森に入れないしね。ディオン、調理場に持って行ってくれる? さっそく今夜の料理に使いましょうか」

「はい」


 ディオンは薬草と山菜、キノコなどが入った袋を抱えて建物の裏手へ行った。


「あの子、冒険者としてはどうかな?」

「センスはあるよ。独り立ち出来ると思うが……」

「そう、それは良かったわ。学校の課程が終わったら街に出る予定なのよ。本人の希望でもあるの」

「俺が昔いた店の部屋だが、そのまま残してあるらしい。そこに住めばいいよ」

「あはは、あの倉庫――、用心棒部屋ね。そうね、ディオンもシャングリラの子だしね」

「ん?」

「母親は店で働いていたの。病弱な娘で、あの子を生んだ後すぐに亡くなったのよ……」

「うん……」


 昔からよく聞く話ではある。そして父親がどうとかもだ。ベルナールはその辺りの詮索はしない。


「ここに住んでいるのよ」


 レイルシーは共用棟を見やる。この村の女性全てが母親代わりの少年だった。



 夜はベルナール来訪を聞いた村人たちが、酒を持って共用棟の食堂に集まった。


 店の娘といっしょになった元冒険者も何人かいるので、昔話に花を咲かせる。戦力外通告を受けた話なども出た。この村の同年代も元冒険者となっていたのだ。


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