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第三十二話「弟子の成長」

 翌日、冒険者たちは新たに現われた魔物を求めて、新階層に散って行く。


 ベルナールたち北ギルドの冒険者は三つ叉の先を目指した。


 ジェリックが先を読むかとも思ったが、特に発言もない。エルワンも知ってか知らずか、正攻法で戦力を均等に三分割する。


 デフロットが中心となる左にはエルワンが同行し、中央にはバスティたち。そして右がベルナールたちの一団だ。フィデールと呼ばれていた貴族が率いるパーティーと一緒になった。


 もちろん、それぞれの部隊にはギルドの職員が同行し指示を出す。



「今日の方が強い魔物は多いのかしら?」


 セシールは無視しているのか特に気にならないのか、以前在席していたパーティーには見向きもしないし話題にもしない。素知らぬ顔でそんなことを言う。


「その通りだ。巨大ホールがあるからな。他のホールにも魔力が溜まっているだろう」


 アレットは強い魔物と聞いて少し不安そうにし、ロシェルは目を輝かせる。


「まあ、俺たちはお似合いの獲物を狩るさ――、そら、お出ましだ……」


 前方に魔物の大群が出現した。小物ばかりにC級が若干混ざっている。


 セシールが弓矢を取りだしロシェルも続いた。弓使い(アーチャー)たちが次々に遠距離攻撃を仕掛ける。


「まったく……」


 微動だにしないフィデールを横目で見たセシールは、そう呟きながら弓を引く。魔力を温存したい気持ちは皆同じだ。


 中距離となりベルナールたち剣士(フェンサー)が前に出た。弓の攻撃が終わり一気に突入する。



 攻略クエストは順調に進んだ。意外にもジェリックはギルド職員に協力し、各支道を探査している。適当な人材、パーティーを脅威に合わせて割り振っていた。


 フィデールたちも、一つの開口内へと駆けて行く。


「さて、皆様にも働いてもらいますが……」


 やっとベルナールたちにもお鉢が回ってきた。


「もちろんさ、どこでも行くよ。ギルドを手伝っているのか?」

「取引ですよ。フィデールたちにC級程度の相手はさせないと……」

「なるほどね……」

「雑魚の相手も経験だと分かっていないんですね。おっと、皆さんにはC級上位の群を相手にしてもらいます」

「なんでもやるさ」


 このジェリックが探査して選んだのなら、無理のない相手なのだろう。ベルナールは頷いた。



 ベルナールたちが細く長い隧道を進むと、やっと出口が見えた。かたまってうずくまっていた犬たちがむっくりと起きる。


狂犬(マッドドック)の群か……」


 そして巣にやって来た闖入者たちに唸り、威嚇を始める。スピードと予測できない機動は弓矢の追随を許さない相手だ。


「セシールとロシェルは障壁でアレットを魔力支援だ。ここは剣士の出番だな」

「「「はいっ!」」」

「敵は素早い。動きをよく見ておくように……」


 ベルナールが前に出て、少し後方にアレットが続いた。


「全方位戦で対処する」


 ベルナールが立ち止まり剣を構えると、アレットは背後に回り警戒する。


 セシールたちは剣を抜いて出口まで後退した。ここならば正面からの攻撃だけを防御すればよい。


 狂犬(マッドドック)は主にベルナールたちを狙った。飛び掛かる鼻先に剣を振り下ろすと魔撃が飛び、悲鳴を上げてもんどりうつ。


 アレットの魔撃はまだ至近距離でしか発揮されないが、それでも実剣で戦うよりも有用だ。ただの女の子が冒険者たる由縁(ゆえん)である。


 次々に打ち倒されるも、犬の魔物はその名の通りベルナールたちに向かって来る。巣の中に入った侵入者を、狂ったように排除に掛かるのが本能なのだ。


 ベルナールは一撃で二、三匹を打ち倒し、ロシェルは障壁に守られながら確実に一匹ずつを倒した。



「こんなもんか。よくやったな、アレット」

「はいっ、師匠!」


 狂犬(マッドドック)は掃討され残敵は一となる。それは洞窟の隅でうろうろしながら二人を伺った。


「凄いわー。アレット、もうすっかり剣士(フェンサー)ね!」

「スゴ~~い!」


 セシールとロシェルが褒めちぎりながら駆け寄る。


「まだ一匹残っているぞ。アレット、やってみせろ」

「はいっ、師匠!」


 アレットは剣を右手に持ち、体の力を抜き狂犬(マッドドック)に向かってゆっくりと歩く。


 微妙な間合いで腰を落として、両手持ちに剣を低く引く。


 狂犬も身を低くして唸り始めた。アレットを敵と見定めたのだ。そして一気に間合いを詰めた。低く、そして飛び掛かる。


 向かってくる敵の動線に合わせてるように、剣を最初は低く、そして上に向けて斜めに振り上げ、切っ先が狂犬の鼻先をかすめた。


 まだ可愛らしい魔撃が飛び狂犬(マッドドック)は後方に飛ばされ倒れる。


 そう、それで良いぞと、ベルナールは師匠の言いつけを守っている弟子を見ていた。


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