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第二十八話「魔境進行戦」

 バスティたちのパーティーを先頭にして進む一団は、快進撃を続けていた。


 メイン回廊にある支道への侵入を、ギルドの職員がテキパキと割り振っている。


 冒険者の群はそれぞれの獲物を求めて、処女地のダンジョンへと散って行った。


 アラクネーや小物の魔物と格闘している先頭集団の先に、数体のオーガが現われる。C級で人型の魔物だ。一角の頭部に毛むくじゃらの巨人で魔導具の棍棒を持っている。


「遠距離で狙えるか?」

「任せてよ。ロシェルは支援してくれる?」

「はい~」


 セシールが弓を引き、支援魔力が(やじり)を輝かせる。飛翔と打撃をそれぞれが担当する攻撃だ。


 冒険者たちを飛び越えた矢は、先頭のオーガに命中するかと思われたが、棍棒の一振りになぎ払われる。


「ちっ、あいつはB級のオーガだな。他を狙ってくれ」

「分かった!」


 攻撃の通用しない相手に固執するのは悪手だ。乱戦では倒せる相手から倒さねばならない。


 セシールは端のオーガに確実に矢を命中させる。


 戦っているバスティとアレクが、チラリとベルナールたちを見た。


「さて俺たちも突っ込むか。あのB級には近寄るなよ。俺が相手をする」


 全員が剣を構え、ベルナールはリラックスしたまま歩を進める。


「オーガの棍棒をまともに受けてはいけない。かわしながら牽制程度に下半身を攻撃しろ。無理はするなよ」

「「「はいっ!」」」


 珍しくロシェルの語尾が伸びなかった。


 迫り来るアラクネーに片手剣を十字に振って退ける。セシールたちは後方を固めた。


 そしてそのまま、この中で一番強力な魔物、オーガの前へと進んだ。


「さあ、おまえの技を見せてみろ……」


 B級のオーガは棍棒を魔力全開で振り下ろした。ベルナールは剣を斜めに軽く受け流す。棍棒が地面にめり込んだ。


 二度三度と続くが、ベルナールにはさほどの脅威とはならない。


 一瞬の閃光がオーガの首を跳ね飛ばす。バスティの援護だ。


「ふふっ……」


 笑みを浮かべたベルナールは軽く飛び上がり、そのまま軽々と首から下までを両断した。


「すいません、つい……」

「いや、これでいいんだ。俺もそうやって戦った。正解だよ」


 すまなそうに言ったバスティは笑顔になる。


 乱戦の中で強い者が強い敵を狩りまくるは当然だ。ベルナールとて苦戦しているパーティーを見つけては魔物の首を跳ばしてきた。


 そうして圧倒的な強さを見せつける戦いが、ベルナールを勇者たらしめたのだ。


 アレクとイヴェット、リュリュもセシールたちを支援してくれている。これが新階層の戦い方だった。



 アラクネーとオーガを掃討し、冒険者たちは奥へと進む。ベルナールとバスティたちは中段ほどに下がり、周囲の様子を伺った。


 分岐の支道が現われるたびに、中を魔力探査する。そしてギルドの職員がパーティーを割り振って向かわせる。


 バスティが言っていたようにイヴェットとリュリュの探査能力はなかなかだ。的確に中の脅威を指摘していた。


 先頭に立っているのは北ギルドの冒険者たちだ。散発的に出る小物やC級程度の魔物を倒している。


「順調ですね」

「ああ、今のところはな」


 ベルナールとしては撤退の判断に気を使うところだが、今のところそのような兆候はまったくない。しかし慢心が危機を生む。ベルナールは気合いを入れ直す。



 一行は二股の分岐路に差し掛かった。


 後続から続々と応援は駆けつけてはいるが、冒険者たちは支道にも分散しているので戦力は心許なかった。ここで二群に分かれるのは得策ではない。


「少しの間、後続を待つか……」


 ギルドの職員の指示で一旦進撃を停止し小休止とされた。


 ベルナールは剣を収めて脇に腰を下ろす。


 セシールは剣技についてなど、アレットとロシェルにアドバイスしていた。彼女は母親と同じ弓の名手ではあるが、剣技も一流である。



「おいおい、もう息切れかい?」


 デフロットのパーティー登場だった。更に数パーティーが到着する。


「お前たちを待っていたんだよ。そっちはどうだ?」

「バリケード作って待ちだな。時々出てくる大物を排除するぐらいだよ。こっちに行けってギルドマスターのおっさんに言われたぜ」

「それでいい。よしっ、進もうか。お前は俺と左だ。バスティは右に行ってくれ」


 ベルナールは立ち上がり、大儀そうに腰を伸ばした。


「了解です」

「俺はおっさんのお守りかよ……」


 よく言うな、とばかりにベルナールは苦笑する。


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