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第二十七話「開戦、新階層」

 ラ・ロッシュの侵入口は早朝にもかかわらず冒険者たちでごった返していた。今日から数日、鉱山の仕事は休止となっている。


 時間差で終結したパーティーたちは次々にダンジョンへと潜って行く。


 第一列は他が配置に着いた後に最後に入城する。久しぶりの新階層突入儀式だった。


 エルワンを先頭にベルナールたちはダンジョンの下へ下へと向かう。途中、他ギルドから来た冒険者たちが、こいつらが第一列の連中か! と無遠慮な視線を向けてくる。


「けっ、大袈裟な話だぜ……」


 注目を集めている照れ隠しなのか、単に平常通りなのか、デフロットはそう言って周囲に配置されている冒険者たちを見回した。


「あまり入れ込むなよ……」

「ふんっ!」

「バスティは王都のダンジョンで経験済みか。どこの配置だった?」

「ずっと後ろですよ。最初は軍の連中が入りましたから」


 それは確かにそうだろう。軍の威厳を保つ為にも必要な措置だ。


 Bランクのセシールにしても軍と聞いて少し緊張した表情になった。話の流れが悪かったとベルナールは反省する。皆初めての経験なのだ。緊張するのも無理はない。


「先頭だからって危険という訳ではなかったみたいです。問題は攻略の中盤以降でしたね」

「ほう……、説明してくれ」

「強敵が現われた時に後ろが詰まって後退も出来ないんですよ。先頭のやつらが引きたくても、後ろの連中が我も我もって前に行きたがって……」


 それは昔もあった。そしてその対策も考えられていた。


「この笛でギルドの職員が連絡をとり合う。そして冒険者たちに指示を出す。元冒険者たちにも手伝ってもらう。ギルドの指示には絶対従ってもらうからね」


 エルワンは胸に下げられている三つの笛を見せた。昨日の酒場に集まっていた連中はその仕事に就くのだ。


「強敵とやらが現われたら、俺が倒すから問題なんてないって」

「デフロット、ギルドの命令は絶対だ。もし逆らったら冒険者の資格剥奪だよ?」

「そっ、それは困るな……」

「なんだ、ベルさんと同じになっちゃうんだ。私はそれでもいいわ」


 セシールの冗談に、皆はクスクスと笑い緊張がほぐれる。しかしベルナールは笑えなかった。


「さてと……」


 封印の前には第二列担当の冒険者たちがいた。エルワンは進み出て大ぶりの魔核を取り出す。解放の(キー)だ。


 それを封印のプレートにかざした。二つの魔核は共鳴して光り始め、地鳴りのような音が周囲を包む。


「ベルさん……」

「大丈夫だ。心配ないよ」


 ベルナールは不安そうなセシールに頷いてから、アレットとロシェルを見やる。


 封印は周囲の岩石と共に下層へと崩れ去り、ぽっかりと新階層への口が開いた。


 エルワンが下を覗き込む。


「よしっ、いいだろう。作戦開始だ!」

「バスティ以下三名。入りますっ!」


 それが王都のやり方なのか、バスティは名を名乗り人数を言って開口に滑り込んだ。


「ふんっ、デフロットと仲間が三だ。行くぜっ!」


 そして同じようにデフロットのパーティーも続く。


「元勇者と三少女。行ってきますっ!」


 どう言おうかと考えるベルナールに、セシールが代わりを務めてくれた。


 ベルナールたちもすぐに後に続く。急斜面を滑るように歩き進むと、ぼんやりと明るい出口が見えた。


 第六階層の側面に出ると、そこでは既に戦闘が始まっていた。


 左右に広がる空洞にはそれぞれに先があった。壁天井、そして地面までもが細かい魔核でぼんやりと光っている。人に踏み荒らされていないからだ。


 敵はアラクネーの群だった。巨大な黒い蜘蛛の頭部に、人のような上半身が付いていた。それは首から上がなく、そこが蜘蛛の頭部である。C級程度の魔物だ。


 それぞれのパーティーが左右に分かれて戦っているが、バスティ側の敵が薄かった。


「デフロット! そのまま持ちこたえろ」

「楽勝だぜ」

「バスティ! そっちの戦線を押し出すぞ。後続が入る空間を作る」

「了解ですっ!」


 前衛に剣士(フェンサー)のバスティと剣闘士(グラディエーター)のアレクが並び立ち、魔導闘士(ソーサエーター)魔法使い(ウィザード)の二人が側面を魔力攻撃している。


「セシール、ロシェル。弓だ」

「任せてっ!」

「はい~っ!」


 曲射で次々に打ち込まれる矢が、後方で魔力を炸裂させる。アラクネーの群が浮き足だち始めた。


「よし、アレット。後に続け」

「はいっ!」


 やや引き始めた左翼に二人は突っ込んだ。ベルナールが次々に敵に致命傷を与えながら、続くアレットがトドメを刺す。


 二つのパーティーがじりじり前進を続けると後続の第二列、北ギルドの冒険者たちが侵入して来る。


 一部がデフロットに加勢しつつ、残りが一気にベルナールたちの前敵になだれ込む。戦線は一気に前進した。


「よしっ、弓はもういいな」


 二人は弓を背中に収めて剣を抜く。ベルナールたちは少し後方に下がった。


「あ~ん、踏まれて矢がボロボロよ」


 セシールが自分の矢を回収しながら言い、ロシェルもそれにならう。このような乱戦ならではの問題だった。


 新階層には次々に三列、四列と後続の冒険者たちが溢れ始める。そしてギルドマスターのエルワンもやって来た。


「どうですかね?」

「順調じゃないかな?」

「そうですか……」


 そして周囲を見回し地図を取り出す。


「あっちが、巨大ホールがあると思われる方向ですね」


 そう言いながらデフロットが戦っている方を指差す。


 地図には第四、五階層が色違いで描かれていた。地底から湧く魔力は地脈を通り地上を目指すので、低層の状況からおおよそ第六階層の状態が分かるのだ。


 マークス率いる守備隊がバリケードを運び込み始めた。


「どっちを封鎖するんだい?」

「あちらを少し進んでから一時封鎖しましょう。先に巨大ホールがあるはずです」

「分かった。よーしっ! バリケードを持って全員押し出せいっ! 冒険者は援護を頼むぞっ!」


 マークスは怒鳴るように部下たちに指示を出す。


「エルワン、俺たちは逆へ進む。適当なところでデフロットたちをこっちに寄越してくれ」

「分かりました。落ち着いたら私もそちらへ向かいますよ」


 ベルナールたちは、先へ進んだバスティのパーティーを追った。


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