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第二十三話「デフロットのパーティー」

 そこは辺境の寒村であった。


 北の大地の開拓地。寄り添うように生きる開拓民の集団。


 冬は長きに渡り雪に閉ざされ、春ともなれば魔物の脅威にさらされる忘れられた土地。


 そしてその魔物と戦える数少ない魔力を使う者、この村の冒険者。東の少年デフロットと西の少女ステイニー。


 それは互いに獲物を追っての偶然の出会いだった。


 そして二人は逃げるように村を出る。


 ただ魔力を持ち、冒険者としての才能がある同年代、というだけの価値を認め合った二人であった。


 村を出る前はロクに話したこともなかった二人。


 ただただ、互いに持っている力を信じ合い、それだけで手を取り合った二人……。



   ◆


「こんなにもらえないよ。戦っているのは今日もデフロットだけだ」

「そうよ。私たちはいつも支援魔法ばかりで……」

「いや、それが俺たちの戦い方さ。何よりの協力だぜ。だからウチは、報酬は頭割りでいこう。ステイニーも賛成してくれた」


 いつも東の村で先頭に立って戦っていたデフロットは、それしか戦い方を知らなかった。


 そしていつも西の村で大人たちに、支援だけだと便利に使われていたステイニーもまた、他の戦いを知らなかった。


 この街へ来て、パーティーを組み仲間にも恵まれた。


 デフロットが素直に打ち明けた自分に出来る戦いを、この二人の新しい仲間は理解してくれた。


「僕は前いたパーティーじゃあ、支援しかできないヤツだって結局追い出されたんだ。支援で喜ばれるなんて不思議な気分さ」


 そう言って笑うのは魔導士(ソーサラー)のドルフィルだった。


「似たようなものね。もっと上手い弓使いがいるって、私も支援ばかりだった。上達するのはそっちばかりだったわ」


 弓使い(アーチャー)のローレットが言う。


   ◆


 クエストを順調にこなし金を稼いだ。若手の中で頭角を現し、そして北ギルドの中でも目立つ存在となった。


 常に強力な獲物を求めてダンジョンに潜り、森を駆け抜ける日々だった。


 肩で風を切り、いつかは訪れる壁に、うすら寒さ覚えながらも周囲に気を吐いてデフロットは自分を鼓舞した。


 そしてやって来た運命の時。


 ついにパーティーの限界が見え始めた。


 クエストを立て続けに失敗し、デフロットは自分の力のなさに、はらわたが煮えくり返る。


「なぜべルナールさんは、デフロットにS級キラーの技を教えたのかしら?」

「できねえって思ってたからだろ! ムカつくおっさんだぜ」

「そうかしら?」

「俺はベテランって奴らが嫌いなんだ。あいつら偉そうに講釈をたれるだけで肝心の技を教えやしねえ……」

「でも……」

「村の大人たちだって、そうだったろ?」


 ステイニーは無言で頷く。この街も同じだ。


 以前に自分で戦いもしないリーダーの巨大パーティーから、スカウトが来たことがあった。


 所属すれば稼ぎが倍になると言われたが、金なら今でも十分だ。たいして興味はなかった。


 どうせ自分たちで獲物も選べない、ただ効率的にクエストをこなして金を稼ぐだけの、ただの歯車になるだけだ。また利用されるだけなのだ。


 実際にそんな歯車になって金勘定ばかりしている冒険者も大勢いた。


 ピンハネしているだけの、もはや自分では戦わないおっさんの為には戦えない。


 目指すは勇者の称号だ。デフロットは本当に仲間に恵まれたと思っている。


 勇者パーティーになる、との気恥ずかしい夢を共有し互いに文句も言わず、意見を交換しながら黙々と日々のクエストをこなしていた。


「ベルナールさんは昔から色々教えてくれたわよ」


 ステイニーは諭すように言う。


「ああ、そうだ……」


 確かにそうだった。デフロットは心の中でも頷いた。


 しかし昔は何を言っているかサッパリ分らなかったのだ。ただ今なら少しは理解できる気がした。


「くそっ、これが俺の限界なのか……。あのおっさん、軽々とあんな技を……」


 デフロットは今なお自信と余裕に満ち溢れている、元勇者の姿を思い出す。


「僕たちは君の上昇思考に惚れてパーティーを組んだんだ」

「……」

「べルナールが勇者だったのは昔のことよ! 年齢を考えて。この街ではデフロットが、このパーティーがトップに立つしかないんだから」


 ドルフィルもローレットも元気づける為か、打ちひしがれているデフロットを奮い立たたせるように言う。


「あのおっさんは二度も技を見せてくれた。俺はあの技を極めたい。皆、力を貸してくれるか?」

「もちろんだとも。皆でもっともっと上に行こう」


 ドルフィルが頷きながら言い、ステイニーもローレット力強く頷いた。


   ◆


 デフロットは小汚く狭い部屋を見回す。こんな生活で申し訳ないと思う。しかしステイニーも気にしていない。今は腹一杯メシを食えるし酒も飲める。


 ただそれ以外に金を使わないだけだ。


「さて、行きますか! デフロット」

「ああ、今日も稼ぐぜ! ステイニー」


 今はそれぞれの家族とは和解していた。それは毎月一定の仕送りを欠かさないからだ。


 そして金を貯めていた。何か特別な目的がある訳ではない二人であった。


 どこかで良い思い出などない故郷の為と思っているのかもしれない。たぶん同じように考えている二人だと、デフロットはステイニーを見つめる。



 いつものように早朝、ギルドの前で仲間と待ち合せる。そして掲示板の前に立つ。


 皆で相談し、北西の森での狩りと決め、仲間と共に目的地へと向かう。


 デフロットは初めてこの街でパーティーを組んで、初めてクエスト行く日と同じような、新たな日だと感じる。


 今はもう二人っきりではなかった。


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