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第十四話「北の開口、ラ・ロッシュ」

 遠くに見えるなだらかな斜面の岩肌に、大きく口を開けた開口。


 元は木々に覆われ森の一部であったが、今は適度に伐採され岩肌が露出している。


 周囲にはバリケードなども点在していた。そして周辺は小さな街の様相を呈している。


 北の開口、ラ・ロッシュ。


 北のギルド出張所はこのダンジョンのために作られた、と言ってもよい。近郊に三つある大開口のうちの一つだ。


 そして北ギルドの、冒険者の三分の一はここを根城としている。


 かつての溶岩道と魔力の通り道が、地下に複雑なダンジョンを形成させていると言われていた。


 今、地表に開口を持ち、発見されているのはほんの一部に過ぎない。


 大地の核が魔力を作り出し、そして人間に作用して冒険者の力を生み出し、そして魔物も生み出してした。


 ダンジョンに魔物が多く強力なのは、その核により近い場所にだからだ。


「ここに来るのも久しぶりだな」


 現在の攻略階層は五で、冒険者たちは主にそこで戦っている。


 ベルナールは半年近く前にバスティを案内して最深部まで降りていた。


「中で戦ったのはもう三年も前か……」


 あまり活気のない街の通りを眺めながら歩く。昔は冒険者たちが大勢いて賑わっていた。


 街を過ぎてしばらく歩くと、今となっては大袈裟な砦が見えた。丸太を組んで定期的に補強もしている、このダンジョンの最終防衛線だ。


 今も少数の守備隊が駐屯している。しかしこの開口部から魔物が大挙して押し寄せる、などの心配はほとんどされていない。


 ベルナールは柵の戸を開けて周囲を見回しながら中へと進んだ。記憶とは特に変わりはない。


 気が付いた若い兵が慌てて駆け寄ってくる。


「おっさん、今日は立ち入り禁止だよ」

「そうなのか?」


 開口では鉱山労働者が採取物や道具を持ち出入りしている。


 三階層までは希少な鉱物資源が採掘され、そして魔物が産出する魔核はこの街の主力産業とも言えた。


「冒険者は入っていないのか?」

「そう、今は三層から下は、週に二日は閉鎖しているんだ。今日入れるのは鉱山の人間だけだよ」

「そうか……」


 全盛期は毎日腕に覚えがある冒険者が勝手気ままに出入りしていたが、噂には聞いていたが最近は管理が厳しいようだ。


 一時期クエストの死亡率が上がったのでギルドが管理を厳しくしたのか、もしくは週に二日は採掘作業に集中する為なのだろう。


「さあ、帰った帰った……」


 その若造はあっちに行け、とばかりに手をひらひらと動かす。


 俺も落ちたもんだ、とベルナールは下を向いて小さく笑った。


「おいっ、ベルかよ! 久しぶりだな」


 ベルナールと同年代のおっさんが声と共に現われる。


「あっ、隊長……」


 ここの守備隊長を務めるマークスだ。懐かしそうな顔をしてから、厳しい表情に変わり若い隊員に向き直る。


「おいっ、こいつは元勇者のベルナールだ。知らんのだから仕方ないが、あまりぞんざいな口をきくなよ」

「えっ? ゆ……勇者――?」

「そう、このダンジョンの階層や新隧道(ずいどう)を切り開いてきた男だよ」


 守備隊長のこの男も冒険者と同じ能力を持つ。


「しっ、失礼いたしました……」

「いや、いいんだよ。もうただのおっさんだしな」


 このような仕事は冒険者のように腕と度胸で大金を稼ぐチャンスはないが、月々決まった給料が出るので生活は安定している。


 若い者の誰もが一攫千金を夢見ているわけではない。また、途中から守備隊に転職するものもいた。


 マークスは結婚を機に冒険者から職替えしたクチだ。


「どうしたんだ? 久しぶりだな」


 マークスは人払いをするように、若い守備隊員に向かって手を振った。


 別段、内緒話をする訳ではないが、立場として昔馴染みとの会話を聞かせるのもどうかと思っているようだ。


「最近、中はどうなんだ?」


 ダンジョンに潜らなくなって久しい。ベルナールは様子を知りたかった。


「特に変わりはないよ。第五階層での狩りが続いている。定期的にそれなりの獲物が出るからな」


 昔、第五階層に一番に突っ込んだのがベルナールだったのだ。


「上は?」

「せいぜいC級が散発的に出ている。第一や第二階層はもう何も出ないな。今日のような日は俺たちが第三階層を警戒しているが、たいした魔物は出ないよ」

「そうか……」

「中に入るつもりなのか?」

「ああ、弟子が育ってきたんでな。それにヘルプの依頼がありそうなんだ」

「ヘルプ? どこのパーティーだ?」

「バスティのところだ。評判はどうだ?」

「あそこか……」


 マークスは少しばかり思案した。


「上手く言えないがセンスがあるな。王都で戦っていたんだろ? あそこは強くなるよ」

「ふむ……」

「評判もいいよ。強さを鼻に掛けないし美人ぞろいだしな。俺みたいなおっさんにも、ニコっと笑って声を掛けてくれる」


 マークスは破顔して言いベルナールもそっちかよ、と思い笑う。


 常に戦いにも余裕があり心も強いのだろう。負けや苦戦も引きずらないし、気持ちの切り替えも早い。その現れがこんな評判になっているのだ。


「中を見ていくか?」

「いや、誰も戦っていないんじゃあな……。教えてもらった情報で十分だよ」

「弟子ってあの女の子の二人か?」

「そうだ。C級程度を共同で狩る」

「まあ、お前さんがいるなら、それぐらいならな……」


 ベルナールは一度二人をこの街に連れて来たことがあり、マークスはその時に二人と合っていた。


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