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第十一話「臨時収入」

「助けてやろうか。デフロット?」

「おっ、おっさん!」


 四肢は動かず首だけを曲げて地面からベルナールを見上げるデフロットは、無様な姿に見合わないように叫ぶ。


 そこには累々のようにパーティーのメンバーが突っ伏し、ドラゴンと対峙するように、やはりデフロットが倒れ動けないでいた。


 ドラゴンも動けないほど消耗し、攻撃を受けて今の状態なので相打ちと言えなくもない。


「ヘルプはいないのか? ケチったなあ……。大物勇者にはなれんぞ」

「――くうっ……!」


 たとえ戦力にならずとも低ランクの冒険者を傭えば、戦果確認をさせたり怪我人の搬送を手伝わせたり、最悪の場合はギルドに救援願いとして走らせることもできる。


 街全体の脅威になる魔物出現には、ギルドへの通報義務があった。パーティーが全滅してはそれも叶わないからだ。


「おいっ! 助けろよっ!」

「助けて下さい、だろ~?」

「クソッ!」

「このままじゃ、先にこのドラゴンの方が復活するぞ。どうする?」


 他のパーティーメンバーは気を失っているか、意識朦朧でうなっている。かなりの激戦だったようだ。


「高周波の鳴きで皆、気絶しちまった。俺は昔経験があったから咄嗟に耳を塞いだ……」

「だったら事前に教えておけばよかったんだよ。おまえのミスだな」

「ぐっ――」


 相手はA級手前のドラゴン! ベルナールはいくらむしり取ってやろうか? と算段した。


 そして金額を提示する。


「どうだ?」

「チッ、高えよ! ぼったくりやがって!」

「それはないだろ?」


 だいたい獲物の三十パーセント程度で妥当な金額だ。約束を反故にさせないためにも即金で払わせるのが冒険者の流儀だ。


 彼らはヘルプに支払う現金をつねに持ち合わせている。


「クソッ!」


 デフロットはかろうじて動く右腕で、ずっしりと重い革袋を放り投げた。


「トドメを刺せんのかよ? ロートルに……」

「昔、教えただろ? 最小の魔力で最大の攻撃力を発揮するコツを……」

「……」

「まだ、できないのか……」


 ベルナールは眠るように静かなドラゴンの前に立つ。剣を抜いて構え集中した。


 体内のなけなしの魔力を絞り出し、切っ先を目安に一点を見つめる。


「ふーーっ……」


 大きく一度息をついてもう一度体内の魔力を探り直す。


「とっ、とっ、こうだな……そう、こうだ――」


 閃光と空気を切り裂く音と共に、ドラゴンの首に大穴が穿(うが)たれ魔力が飛び散る。


 それは核を直撃し、目を大きく見開かせ体を震わせたドラゴンは完全に絶命した。


 纏う魔力が溶け始め地面へと吸い込まれていく。


「これには集中する時間(とき)が必要だ。誰かが時間を稼がねばならん。その為におまえたちはパーティーを組んでいる、と言ってもいいな」


 ベルナールは剣を鞘に収める。倒れている冒険者の肩を順に揺すると覚醒を始めた。ただの気絶だけで誰も怪我はしていない。


 地面に突っ伏す魔法使いらしき少女を抱き起こした時に、ベルナールはある仕掛けに気が付いた。


「なるほど……」


 一瞬、余計なお世話かとも思ったが、手負いとなったあのドラゴンが他の冒険者を襲った時のことを考えすぐに打ち消す。


「うっ、うう……」

「じきに目を覚ます。この授業料はまけといてやるよ。ヘルプの金はありがたく頂いていく」


 ベルナールは革袋から約束の金額を取り出す。


「クソッ! クソ……」


 デフロットは芋虫のように地面に横たわりながらも悪態をつき、ベルナールは苦笑した。


「クソはお前だよ。こんなことになって……。仲間に土下座してあやまりな」

「くそ~~っ、何が違うってんだよ~……」


 デフロットのその言葉はベルナールに響かなかった。何が違うは誰かと比べている感想だ。自分たちの道を進んでいるはずなのに――だ。


 ベルナールは、おまえたちは本物の死線を潜っていないからだ、と言いそうになってやめた。


 もう時代が違うのだ。彼らには彼らなりの強くなる方法がある。


「生きてギルドに帰るまでが仕事だ。帰り道も気を抜くなよ」


 このパーティーは仲間同士の役割があり、それを分担している。こいつらはまだまだ強くなるな、と思いつつベルナールはその場を後にした。


   ◆


 ベルナールは夕方セシリアの店に行き食事をする。今日の出来事を話すと彼女は肩をすくめた。


「新人いじめはほどぼとにね」

「いじめじゃないよ。助けたんだ。そして儲かった。それにあいつらは新人じゃないさ。確かBランクだったかな?」

「新進気鋭と言ってもそんなものなのよね――、最近はAに上り詰める冒険者っていないわよね」

「まあな」


 食事を平らげビールを飲み干したベルナールはお代わりを頼む。


「だけど何かしら逃げる手立ては考えていたんじゃないかしら? 一応Bランクだし」

「そうだな。あいつの口ぶりじゃあ、そんなふうじゃなかったけど、そうでもない」

「まがりなりにもここまで戦ってきたのだし、他のメンバーが色々とフォローしているのよ。どこのパーティーだってそうだしね」

「そうだなあ……。そうだよなあ。悪いことしたかな?」

「いいんじゃない? 最初からあなたにヘルプを頼んだのと同じだもの」

「まあね」


 それにしてもパーティーには色々と事情があるものだと、ベルナールは二杯目のビールに取り掛かる。


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