新しい陣形を試してみた話
ファルマイルズ軍がほぼ壊滅。
次の敵の一手は
「伝令!敵左軍前列の横陣を残して北の丘裏に進軍!丘上に陣を張るカミラ王国軍に向かっております!」
「上から見下ろされていたファルマイルズ軍がしびれを切らしたのでしょうか」
メープルが俺に聞いてくる。
「敵の連合軍を掃討する部隊を除いて丘に向かって多重横陣!前列大盾部隊は鉄杭を付けて壁横陣の形に!」
(嫌な予感がする)
ヒーロの号令で丘に向かって3列の横陣が敷かれる。
指揮官の大半を失った大メルベーゼ軍は降伏した。
「陛下!本陣近くにに敵の気配多数!」
サンドラが敵を感知したようだ。
「本陣とアルベリア軍南端の2箇所に転送するための魔法陣を作成したようです。」
ヴァニラが敵の動きを感知し、肩の上で報告してくる。
「俺と飛龍隊は南端に向かう!本陣に襲撃してくる敵の着地点は俺の目の前らへんやから、盛大にお迎えしてさしあげろ!」
(南端ってことは転送用の魔法陣による捕虜救出が狙いか)
ヒーロは飛龍に跨り、全速力で南端の陣に向かった。
「魔法陣による転送を感知、敵が南端の陣に転送されてきます」
マントにいつの間にか付けられたポケットに入ったサンドラが魔法を感知した。
「襲撃者は捕虜に攻撃を開始しました。」
別のポケットに入っていたヴァニラが敵の攻撃対象を感知したようだ。
「捕虜を殺させるな!攻撃開始!」
凄まじい速さで飛龍隊が敵に落下しながら短槍を投げつける。
敵の襲撃者はわけも分からず槍が突き刺さり絶命していく。
ヒーロはケガをした捕虜を回復させることに専念した。
「襲撃者はカミラ王国の暗部のものですね。」
ヴァニラが襲撃者の腕の模様を見ている。
「すぐに本陣に戻る!ここの警備は厳重にしておけ!」
ヒーロはすぐさま飛龍に乗り本陣に急いだ。
(カミラ王国、面倒やな)
丘の上に1人の騎馬武者が現れた。
「我はカミラ王国前女王の弟のエルヒューイ。アルベリア王国の援軍のために軍を率いて来たが、アルベリアの捕虜虐殺、人質である我が国のサンドラ王女を盟約違反として処刑。あまりにも非道!これより我が国の正義のために攻撃を開始する!」
(このおっさん何をとち狂ったこと言い出しとんねん)
丘の上から重騎兵隊が突撃してくる。
ドギン!!
大盾と重騎兵隊の馬鎧のぶつかる音が戦場に響く。
本来なら大盾が割れるか突撃の衝撃で兵士が倒れ大盾ごと踏み越える。
カミラ王国軍は丘の上から駆け下り、突撃力を増し一気に戦場の主導権を握れるはず
だったが、
大盾は割れず、踏み越えることもできず
更には
敵の前方部隊が杭に突き刺さり身動きがとれず後ろから来た重騎兵隊に挟まれていく。
そしてその身動きが取れなくなった重騎兵隊を大盾隊の後ろにいた槍歩兵隊が敵に槍を突き刺していく。
カミラ王国軍は斥候を放っていたがアルベリア王国の大盾兵の装備を知らな過ぎた、というか大盾兵が異質であることと実戦初公開の陣が完璧に決まったことによってもたらされた結果である。
大盾というものは敵の矢を後ろの味方に届かぬように防いだり、敵の突撃の勢いを殺す役割がある。
大きくて多少の強度があり持ち運び易くするために、欅やアカシアなどの硬い木材に金属の補強を施したものがよく使われるが、アルベリアのものは材料こそ似ているが別物であった。
盾の形をした薄い鉄板に槐のような弾力と強度のある木材を交互に重ね、硬く弾力がある大盾を作ることに成功した。
さらに盾の左側面に凹型の溝を右側にそれにハマる凸型縦長の突起を付けて繋げられるようにした。
さらには大盾兵の武器である手斧を金属だけで作り、それを大盾の裏つけられるようにした。
それにも少し工夫をした。
手斧の柄の部分だけ大盾の下から突き出る位置で固定できるようにして、地面と大盾を繋ぐ楔として使えるようにした。
壁横陣とは大盾を壁のように横に繋ぎ、手斧で地面と盾を固定し、氷魔法によって盾の強度と地面との固定を強化した対突撃最強の陣である。
アルベリア王国の大盾兵はそれを完璧に実践したのであった。
カミラ王国軍前方重騎兵隊は壊滅、丘を降りてくるはずだった敵の中軍は壁横陣を迂回しアルベリア軍の右軍の深い位置に攻撃を開始した。
「敵の中軍、士気が高い割に攻めが緩いですね。」
ヴァニラが言う。
(確かに緩い)
「敵の後軍は丘の中腹に視認できています。」
敵軍の場所の報告が届く。
(何かおかしい、これは何かあるな)
「陛下!敵の中軍後方に視認できない部隊を感知!敵中軍よりも兵数は多いです!」
サンドラが見えない敵を感知した。
「インビジブルですね。魔法攻撃をしてこないと思ったら魔法はそちらに使っていたようですね」
メープルが冷静に分析する。
「後軍歩兵隊は丸盾密集形態で右側に後方で敵の攻撃に備えよ!その後ろに弓隊、さらにその後ろに騎馬隊を配置、歩兵と弓兵にインビジブルをかける!騎馬隊は敵後軍の方向に馬頭を向けて右側面に隙があるように見せろ!」
(感知能力ってやっぱすげーな)
暑くて溶ける今日この頃




