歴戦の英雄の話
アルベリア王国は今日も忙しい。
「クラスト王国から使者が至急の要件とのことで謁見の要請が来ております。」
(急に忙しいな。)
「西部にはエグランティアの銀蛇とフェティダのドゴスを派遣しニルヴァ軍と合流」
「マイルズにはランカ地方軍8000と俺が率いる国王軍30000を向かわせるからガーメオン長官にランカ地方軍派遣の指示を送れ。国王軍招集の命令を各部隊長へ」
俺は謁見の間に向かいながら指示を出して行く
「私が国王ヒーロ。クラスト王国のご使者よ、いったいどうされたのですか?」
至急とのことだったので早々に要件を聞いた。
「ファルマイルズ王国が大メルベーゼ金山朝と共に北の国境を越えて侵攻してきたので、援軍をお願いしたいのです。すでに国境の砦は落とされた知らせが…」
(タイミングわるぅ)
「敵の数とクラスト王国の兵数は?」
カエデが尋ねた。
「敵兵約50000、我が国の兵は約30000ほど」
(20000ぐらいは必要やな)
「あいわかった!歴戦の英雄を大将として援軍を派遣いたす!」
「キョオウキを大将としてドルベ全軍とルゴサの大隊2つを率いさせて援軍に向かわせろ!ドルベには本国から防衛隊を派遣する」
(この編成なら敵の王都到達までに間に合うかもしれん)
「感謝いたします!本国に至急伝令を送ります!」
「使者殿しばしまたれよ。」
俺はその場でクラスト国王への手紙を書き使者に渡した。
2日後国王軍の招集が完了したので、シルヴィエに国を任せマイルズ王国へ援軍に向かった。
ちょうどその頃、ドルベ軍にも伝令が届いた。
「久しぶりの戦が援軍とは」
キョオウキ将軍は少し不服そうだった。
「将軍!援軍でも何でもいいじゃないですか!暴れまくりましょう!」
副官補佐のテファンが嬉しそうにしている。
「そうだな、久しぶりの暴れる機会、蹂躙してやろう。全軍ルゴサ軍との合流地点まで全速で向かうぞ!」
怪鳥というよりハヤブサの如く進軍を開始した。
キョオウキ将軍はヒーデンベルグ王国で生まれ、16歳で星騎士となった英雄である。
ヒーデンベルグは古い国だが13神が作った国ではない。
古い国は黄道にない星座の名を冠する神様をゼークト神と共に信仰していた。
ヒーデンベルグ王国は鷲座の神様を信仰し、星騎士を任命する許可を時の教王から得ていた。
キョオウキ将軍は1度は滅んだヒーデンベルグ王国の復活の立役者の筆頭で、16歳で名持ちの将を20名以上討ち取ったことで大陸全土に名を馳せた猛将でもある。
ドルベ軍とルゴサ軍は合流し一路クラスト王国の王都ポルコの付近まで来た。
王都のすぐ北にあるバル村は教会を中心とし要塞化していたこともあり、敵の進軍を止めることに成功していた。
「ボルス様!王都の南にアルベリアの援軍が到着した報告あり!」
クラスト王国大将軍ボルスの元へようやく良い知らせが届いた。
「アルベリアの大将に王都の左右に軍を二つに分けて進軍して、挟撃するよう伝令を出せ!そのたタイミングで我々も撃ってでる!」
敵の魔法攻撃が続く中、伝令が裏から飛び出して行った。
「バル要塞から伝令来ました!」
キョオウキ将軍は伝令から手紙を受け取り読むやいなや
「ここよりワシらが右からルゴサの2隊が左から進み、バル要塞の前に布陣をしているファルマイルズの野郎を挟撃するぞ!」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」
兵たちの士気は絶好調だ。
王都の右側を抜け、少し高い丘に登るとバル要塞が見えた。
「全速力で行く、みな遅れるなよ!」
キョオウキ将軍麾下の先鋒大将ダレンが先頭に出て敵左軍に突撃を開始した。
「我々も続きましょう。一気に殲滅して国境まで戦線を押し上げる」
キョオウキ将軍も突撃を開始した。
「お、キョオウキ将軍が行ったな。俺たちも突撃開始ぃ」
ヨーテモの命令で猫の爪大隊と桃蛇大隊は敵右軍に突撃を開始した。
破壊兵器を使い要塞を攻撃をしていたファルマイルズ軍30000人はその挟撃に混乱した。
突然のアルベリアの援軍の到着と、見えた時には突撃を受けるという衝撃での混乱だった。
しかも突撃が始まるや、要塞からクラスト王国軍1万が出てきた。
「このまま攻めて敵を殲滅する。」
キョオウキ将軍は敵を薙ぎ倒しながらさらに敵軍に突っ込むダレンを見ながら、将軍自身は敵陣北部に回り込み包むように兵を展開して行く。
このまま敵を降伏させようとしたが
「敵襲!敵襲!」
キョオウキ将軍のところへ報告が来たが
無数の弓が降ってきた。
キョオウキ将軍は冷静に弓をいなしながら
「物理障壁魔法の展開、敵軍の伏兵の居場所の報告を急げ!」
命令を出したが
「「「おおおおおおおぉぉぉぉ!!」」」
雄叫びと共に敵の騎兵が突っ込んで来た。
「フン!!」
キョオウキ将軍は大刀を振り回して突撃する一隊の勢いを止めた。
1万兵もの伏兵の挟撃は凄まじかったが何とか持ちこたえ、桃蛇大隊が敵の伏兵の左側から襲いかかり大乱戦となった。
「将軍、敵も愚かですね、我々に乱戦で勝てると思っているのでしょうか」
テファンが話しながら、敵を薙ぎ倒していく。
「少し本気を出しましょう。」
キョオウキ将軍は両手に太刀を持ち敵を切り刻んで行く。
乱戦の中で縦横無尽に暴れ回る将軍はまさに怪鳥、自由に敵を倒していく。
挟撃してきた伏兵の一部が逃げてしまい残った伏兵が壊滅しかかった時
キョオウキ将軍の将軍の腕に魔法矢が刺さった。
「ん?」
すごい射手でもいるのかと放たれた方向に目を向けると
残った伏兵ごとアルベリア軍に向かって、緑に光る無数の魔法矢が襲いかかって来た。
「バリア!」
気づいた者はなんとか魔法障壁を出せたが
かなりの兵が魔法矢によって射抜かれた。
キョオウキ将軍も障壁を出したが、何本か刺さっていた。
軍を立て直そうとしていると、矢が放たれた方向からさらに敵の伏兵が現れた。
緑のオーラを纏った騎士を先頭にして突撃してくる。
それを見たキョオウキ将軍は
「縁というものは面白いものだな。動けるものは俺に続け!」
キョオウキ将軍は紫のオーラを纏い新たに来た伏兵に向かって突撃した。
ガキン!
緑と紫のオーラがぶつかり、キョオウキ将軍と敵の将軍が太刀を交えた。
「やはりあなたでしたか、このような形で再開するとは」
緑のオーラを纏った男がキョオウキ将軍に話しかけた。
「お前はなぜここにいる!せっかく復活した王国を裏切り寝返った先の国も裏切ったのか!」
2人は得物をぶつけながらしゃべり続ける。
「クズの国王を見限って寝返った先の国もクズだった話ということさ。」
「カミラスよ!ルグラン国王はクズではない!まだ若輩だった俺に部隊を使わせて暴れさせてくれるような王は他にいない!」
「あなたは国境警備軍にいたので知らないかも知れませんが、私は王都防衛軍にいたので国王の暴挙を知っていたのですよ。」
「国王の暴挙とは何だ!そんなもの噂すらながれていなかっ……」
キョオウキ将軍の体を3本の槍が背後から貫いた。
「ガハッ」
キョオウキ将軍は吐血しながら胴を貫いた槍を抜き、投げた者達に投げ返し殺して行く。
投げた者達は倒した桃蛇大隊の中隊長の鎧を纏い旗を付けたファルマイルズの兵だった。
「残念です。せっかく再開できたのに、こんなことになってしまって。」
そういうとカミラスは周りのファルマイルズ兵と共に開いた要塞に向かっていった。
「テファン、退却命令だ。俺の体を本国に連れ帰ってくれ…」
重い荷から解き放たれた顔をしてキョオウキ将軍は絶命した。
すぐさま退却の矢が打ち上げられ、テファンがヨーテモが残存兵をまとめ、アルベリア王国に退却した。
大陸最強の1人と言われた男がこの世界から消えた。
活躍した途端フェードアウトする将軍




