ゼークト教国の話
外遊に大忙し戦記物なのに戦がまだない。
昨日は出席できなかった王太子のベルフェゴルを含む王族達に見送られゼークト教国に向かった。
ゼークト教国は面積は小さいが力のある国である。
聖地巡礼の人達のおかげで財力があり、大陸各地に教会を持ちそこには僧兵もいる。
国軍は重装歩兵と弓兵主体である。
牧場がないので馬が少なく騎馬隊はおらず、馬は全て戦車隊につかっている。
教王は8年に1度コンクラヴェと呼ばれる選挙によって選ばれる
各地の教会の地方の代表と教王になる資格を持つもの達によって選ばれる。
2年前の選挙は三つ巴状態でギリギリの得票数で聖マクレール4世が教王となった。
政治的な思惑が絡まっているので禍根を残す形ではあったが、そんなことは今に始まったことではないそうだ。
イーリス王国の飛龍船は長距離移動ができるので、そのままゼークト教国の飛龍船用の広場に降りた。
(何か騒がしいな)
聞けば異教徒が聖マクレール四世が乗った馬車を襲ったそうだ。この国はゼークト教信者しかいない国で外部から来る人もほぼ巡礼者、なので馬車の護衛も最低限だったようだ。
護衛が優秀だったおかけで、少しケガをした程度ですんだらしい。
「これは謁見は難しそうやな。」
しょうがないので、国営の宿屋へと向かった。
部屋でくつろいでいるとフロントの方が騒がしかったので行ってみると、蟹座の紋章が描かれた黄金の鎧を着た兵士数名がいた。
「ここに外部から来た者が泊まっていると聞いた、その者を呼び出せ!」
ホテルの人が国賓が泊まっているだけだと説明しているのに聞く耳を持たない兵士に困っていた。
「外部から来た国王だけどなんか用?」
俺のちょい嫌味を込めた返事に
龍人達の一部がクスクス笑っている。
兵士達は直接国王が来ていると思ってはなかったらしく平謝りしてきた。
「これはすみませぬ。外部から異教徒が入り込んだようで外から来た者達に話を伺いたく思いまして。」
「教王のケガの具合はどうなんです?」
俺は真っ直ぐ兵士の目を見て聞いてみた。
「回復魔法で傷はありませんが、体調は良くならず状態異常を回復する魔法も効かなくてお手上げ状態なのです。」
兵士は包み隠さず教えてくれた。
「呪いとかってあるんですか?」
俺のその言葉で兵士達はハッとした。
「呪われた武具で傷を負わされると呪われると聞いたことがあります!」
回復の糸口が見えたようだ。
「今、呪いを回復できる魔法が使えるのが教王様とコンクラヴェで負けた2人の枢機卿しかいないぞ!」
枢機卿に頼むと都合が悪いようだ。
「治せるかはわからないが回復魔法をかけさせ欲しい。」
俺は真剣な眼差しで兵士に頼んだ。
「わかった。教王のところまで案内いたす。」
カエデとメープルを連れ兵士について行った。
残りのメンバーには犯人探しとゼークト教国にいる密偵への命令の伝達を頼んだ。
教王の部屋に入るとベッドの周りに数人の貴人のような服をした者達が囲んでいた。
「彼らは猊下の派閥の枢機卿達で祈りを捧げているのです。」
横にいる兵士が耳打ちしてきた。
祈りを捧げているのにもかかわらず、明らかにあやしい空気が部屋中に漂っていた。
(けっこうやばい呪いかも)
教王の顔も紫がかってるし、呼吸も速い。
とりあえず俺は解呪っぽい呪文を唱えてみた。
「ディスペル」
「マレディクション」
「フーチ」
「ディスペア」
どれも効果がなかった。
(こうなりゃやけや)
「バーストヒール!!」
(呪いぐらい解けろや!!)
緑の光が炸裂したかと思うと
教王の呼吸が落ち着きだし、顔色も良くなってきた。
「ワシはどうしたんじゃ?」
目をパチっと明け教王がむくりとおきあがり近くにいた兵士に話しかけた。
「「「猊下!!」」」
兵士達が泣きながら喜んでいる。
「マクレール猊下、あなたは刺客の刃で呪いがかかってさきほどまで危ない状態でした。」
「そなたは誰か?」
「私はアルベリア王国国王ヒーロと申します。さきほど入国させて頂きました。」
「あなたが常勝将軍と名高いヒーロ殿でしたか、このような形で申し訳ない。」
「いえいえ、猊下が回復されてよかったです。」
「お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「ワシに答えられることならなんでも聞いてくだされ」
「さきほど猊下の呪いを解くために色々な魔法を唱えてみたのですが、結果どれかわからないまま呪いから回復されたので解呪の魔法の名前をお教えいただけませんか?」
呪いの武器があるなら対策したい。
「教えることはできますが、使いこなせるかは別問題なのですがよろしいですか?」
「よろしくお願いいたします。」
「ディスペリエント」
小さな緑の光がほわっと周りを照らした。
「うなされてる時に呪いの可能性に気づいたんじゃが高度の魔法なもので無詠唱で放つことができず参っておったんじゃ。」
(ん?)
「無詠唱で魔法が放てるのですか!!」
俺は食い気味に猊下に質問した。
「大昔、この大陸に国ができ始めた頃、創造魔法しかなかったんじゃ
創造魔法とは頭の中で思い描いた魔法と放つ時に唱えた呪文の相性が良かったら発動する魔法で、万能すぎる魔法じゃった。
放つ言葉との相性がとても良いと頭の中で唱えて放つこともできた。
じゃがその魔法は神から加護を受けた者しか使えず、人々は精霊に頼り魔法を使うようになったんじゃ。
魔法は言葉に乗せて放つ方が効果は高いのだが無詠唱でも放つことはできる、じゃが魔力が込めにくいとにかく込めにくい。
言葉に出しても込めにくいから魔法石が必要なのじゃ。
高度な魔法には魔力の緻密な調整と量がが必要なためさらに難しくなっておるんじゃ。」
(なるほどなぁ。面白いことに使えそうだな)
「そういえば猊下、刺客に心当たりは?」
「おそらくコンクラヴェでギリギリ負けた2人のどちらかであろう。2人とも力を持っているからしっかりとした証拠がないと糾弾できん。」
こういうことは教王になってから何度かあったようだった。
明日また謁見することになり宿屋へと戻った。
きな臭くなってきましたね、次回どうなるのやら




