表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

6:職場到達

シェフに頭を下げ、食堂をあとにした私たちは、私の職場へ向かっていました。


「部屋巡りより、こっちがメインだったの忘れてた! はい、まずはここ! フローレンスはずっといるかもしれないのかな? ここが医務室でーす! ベッドも15台! 器具はある程度はあるというお買い得物件!」


「わ、これはすごい……!」


the 医務室。小児科みたいな雰囲気は毛頭なく、真っ白で統一された医務室。


村の病院はもっと暖色系のものが多くて、白と言えば、先生の白衣と、マスクと、ガーゼと、包帯と、と言うくらいで、ベッドや壁なんかは全く白ではありませんでした。


それに比べたら、いくら王城の医務室で、衛生に配慮しないといけないとはいえ、殺風景に見えてしまいました。


どうにかして改造しようと部屋をぐるぐると回っていると、薬品棚ががたがたと動き出しました。


こんな夕方から、ポルターガイスト現象でしょうか?


薬瓶が倒れそうなので慌てて棚に近づき、扉に手をかけたところ、触れたところが青く光り始めました。


「あっ! あたしが説明しようとしたのに、勝手にやっちゃってるじゃん!」


「えっと、これはどういうことかな?」


青い光が黄色に変わると、薬品棚が右方向へスライドし、地下へと続く階段が出てきました。


「まあ、入ってみたら分かるぞ。」


かつての(初めてあった時の)様な、落ち着いた口調でエレオノールさんは言いました。


階段を恐る恐る降りてみると、王子の部屋の仕切りを全部取り払ったくらいの大きさの、研究所のような部屋がありました。


かつての医師が残したものか、手記が机にばらまかれていて、興味深いものもいくつかありました。


「ここがフローレンスの研究室、薬の調合だったり、投与実験だったりはこっちで行うよ!」


「すごいけど、これ全部私のになるの?」


「そうだぞ? なんて言ったって宮廷医師だからな。」


私が指さした先は、膨大な数の本です。部屋の半分は本で埋め尽くされています。


ミラから少し遠い街の図書館で見た医学のコーナーの、何倍もの本が並んでいるのを見て、国の中心ってすごいなあ。なんて、素直に感心しました。


ふと目をやると、本棚の一角にマリーがいました。


「どうしたの? なんかあった?」


そう声をかけると、マリーは床が割れんとばかりの勢いで地面を踏みつけました。


あまりに突然、こんな行動をしたので唖然としていると、がたがたと、また何かが動く音がしました。


「フローレンス、覚えてよね? ここを、今ぐらいじゃなくてもいいけど強く踏みつけると……。」


作業机の隣の何も置いていない無いスペースに、扉が現れました。


階段はなく、そのまま進むと、隠し部屋の隠し部屋がありました。


「……。これも、私の?」


「もちろんだよ? だって宮廷医師だし!」


隠し部屋の隠し部屋は、書庫になっていました。


この部屋にある本を全て読み、理解しようというのなら、一生を掛けても、いや、不老不死あたりにならないと、読み切れないかもしれないほどの本に、圧倒されました。


先程の隠し部屋にあった本は、どちらかと言うと図録、比較的有名な著書が並んでいました。


しかしこの隠し部屋は、初めて聞く名前の本や、出版数の限られたレアな本が多く、より詳しく調べるための資料室のようでした。


「いつ見てもこの部屋はすごいな……。」


エレオノールさんはぐるぐると回りながらそう呟きました。


「今日からこれがフローレンスの拠点なんだな、なんて思うと、あったばかりだと言うのに、少し嬉しいよ。」


「あ、フローレンス。ここに篭もりっぱなしになっちゃダメだよ? 根詰めて作業します、って言うなら事前に言っておかないと食事置いてくれないし、何より会いに行きづらいから!」


「分かってますよ、マリー。そんなことないと思いますから!」


「そう言って、趣味は読書なんでしょ? きっと。読みふけってそのまま、とか今まであったんじゃない?」


「う、ご明察で……。」


フローレンス・スタンリー、趣味は読書です。


特に村に遊ぶものなんかはなかったので、村長さんの家にある本をずっと読んでいました。


村長さんの家の本を全て読みあさり、3周目に突入しようとした所で、声をかけていただき、図書館の場所を教えられました。


そんなことを続けている間に、どんどん読むスピードも早くなり、今では人よりかは早くなったと思います。


「本の読みすぎでここに閉じこもるの禁止! あと、ご飯抜くのも禁止! それから、目が悪くなるのもダメ!」


「はいはい、わかってますよー。」


そうは言いますけれど、これは宝の山ですよ?


見れば心を掴まれて離さない、宝石やアクセサリーなんかと同じ価値のある、貴重な本です。


これは夜通し、読まずにはいられない。なんて、本好きの血が少し騒ぎます。


マリーやエレオノールさんに、変な心配をかけさせる訳にはいかないので、一度に5冊ほど自室に持って行って読書しましょうか。


娯楽の読書、と言うよりかは完全に勉強ですが。


「これ、全部覚えられたら凄いよなぁ……。」


小声で目標を呟くと、隣にいたエレオノールさんが少し考えて、こう言いました。


「いつだったかは思い出せないが、この家の医師に天才がいたみたいだぞ? なんでも、蔵書は全て暗記、この宮廷の医師になってからは手術や手当にミスは1度もなかったようだ。」


「そ、それはすごいですね。ちなみにお名前って分かるのですか?」


「多分、そこに散乱した紙類に論文があると思うんだ。そこに名前は書いてあるんじゃないか? 宮廷医師を辞めてはいるが、小さな村でまだ医師をやっている、という噂は国王様から聞いたが。」


後で片付けがてら、論文を探し出して名前を知ろう。そうしたら、彼または彼女の様になれるように努力しましょう。


私の目標その1は功績を讃えられることですが、その2、その人に近づき、出来れば超えること、なんて目標が増えました。


「フローレンス、今何時? さっき腕時計部屋に置いてきちゃって。」


マリーからの要望で時計を見ると、17:55となっていました。


「や、やばいかも。18:00までに部屋って言ってたのに、もう55分になってる……。王子の部屋からここまで何分くらいかな?」


「ざっと15分くらいか?」


「それもう遅れるの確定だ……。もうゆっくり行こう。」


「いや、走れば5分で着くんじゃないか?」


「そうだよ! あたし近道知ってるからそこ走っていこうよ!」


「えっ、走るの?」


「考えている間にも、時間は刻一刻と過ぎます。それなら走り出した方がよろしいかと!」


エレオノールさんは食堂に行くときよりも、スピードを落として走り出しました。


「ほら、行くよ!」


「……もう、逃げられないね。」


マリーから私に向けられた左手に右手で応え、本日二回目の猛ダッシュに覚悟を決めました。




前々回に比べたら短いですが、まさかの医務室単体で話が終わってしまいました。走り出したので次は留守番組ですよ〜〜!

そんなことよりも、主人公描写より他の子の方が描写多いって言う事実。


また、ブクマ、評価など、お待ちしております!

友人にオススメしてもええんやで……!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ