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ふざけているのか?こちとら絶賛霊長類最強の人間様だ。

「なんだ、またアンタか…1人で飯食って寂しくねぇの?」


私が1人中庭のベンチに行くと、また彼が座っていて、そんな事を言ってくる。


「別に…余計なお世話なんだけど」


私は、いつも通りそう言葉を返す。他の人たちはクラスでご飯を食べているから、今までここには誰も来なかったし、静かに過ごせるからココが好きだったんだけど…一週間くらい前から、彼はそこに現れて、ご飯を食べるわけでもなく、ただ、空を見上げているような、そんな、変なヤツだった―――。





【~うさぎは1人だと死ぬらしい~】




そいつは、何故か毎日そこにいて、私に声をかけてくる。やれ「体育めんどくね?」だの、「今日帰ったらなにすんの?」だの、他愛ないものが多いのだが、その日は私の心に踏み込むような言葉を投げてきた。


「なぁ…おまえさ、友達いねぇの?」


「……は?」


友達?友達って、あの周りに気を使いあって群れてる集団の事?それとも、「いつも一緒!」みたいに言ってくるくせに、影では「うざいよねー」とか言いながらお互いを貶め合ってるバカの集まり?私は、そんな面倒な関係に巻き込まれるのはゴメンだし、1人でも勉強も食事もできる。だから、彼が言う"友達"と言うものが必要だと思ったことはなかった。むしろ、足を引っ張り合う事の何が楽しいかすら分からない。だから、私は彼に言う。


「別に、いらないでしょ? そんなの」


その言葉を聞いた彼は、少しだけ笑って、こう返してきた。


「ははは、寂しいヤツ。おまえがウサギだったらすぐ死んじまうだろうな」



正直、ムッとした。



なんで関係ない彼に、そんな事を言われなくちゃならないのか、だいたいウサギってなんだ。ふざけているのか?こちとら絶賛霊長類最強の人間様だ。それに学校は遊ぶ場所ではない。学ぶために来ているのだから、そんな事にかまけている暇などない。私は、友達とかいなくても、彼氏だとか、ましてや結婚等しなくても、1人で充分やっていけるように今、こうしているのだ。


男性が女性を養う時代なんて、疾うに終わっているわけで…これからは、私のような女性こそ社会に貢献し、立派な人と言うものになっていくのだ。それをなんだ、人を小バカにしたみたいに…


そんな事を考えていると、彼は、


「俺が友達になってやろっか?」


と言って、ニッと笑った。


「いいです。必要ないんで、だいたい、貴方も友達いないんじゃないの? 現に、昼休みに1人でここにいるわけだし」


「ははは、確かになー…なぁ、友達ってなんなんだろうな?」


そう言って彼は、また空を見上げる。そんなの私が知るか、関係もない。だから私は、その質問を無視して、食べ終えたお弁当を片付け、すぐにベンチから立ち上がり、クラスへと戻った。


クラスへ戻ると、何時ものように散らかされた机を片付ける。私の席を勝手に使い、食べたゴミをわざわざ引き出しに詰め込んで、もともとあった中身はゴミ箱に入れられている。


いつもの事だ、幼稚で、馬鹿馬鹿しい頭の悪いやつらのする事。


私はこんな事に、いちいち心を動かされたりなんかしない。これもたった3年間耐えれば終わることだし、もう二年生なので、あと約一年でこれも終わることだろう。


「馬鹿馬鹿しい…」


私は呟いて、さっさといつも通りそれらを片付けた。


(午後からは…体育か…めんどくさいな…)


考えてから、後ろのロッカーへと向かい体操服を取り出す。


「え……?」


体操服が、濡れている…それに、臭い――?


「え? なにこれ…」


私は体操服の臭いを嗅ぐ。すると、周りから聞こえる小さな笑い声


「ははは、マジ?宇佐(うさ)の体操服に弁当の汁かけたの?」「いや、だってアイツウザ子だしっ」「ウケるー、お高くとまると、あんなことされるんですね?分かります」「ははは」「はははは」



「はははははははははは」



―――どくどくと熱い血が私の頭へと向かう。たぶん、これは怒りと言うヤツだ……だが、


人は、対等な人間としか喧嘩をしないらしい、下に見ている人間とは喧嘩にはならず、注意になるのだ。だから、これは私の喧嘩ではなく、注意だ。そう言うつもりで笑っているバカたれ共の元へ向かい、こう言う。


「なんでこんな事するの? 恥ずかしくないの?」


「は? なにが? なんの話?」「えっ…? 意味わかんないんだけど、どうかしたの?」「えー、いきなりキレてくるとか宇佐さんこわーい」


「いや、怖いとかじゃなくて、貴女達でしょ? 私の体操服に変なのかけたの」


「は?マジ意味わかんないんだけど?言いがかりとかやめてくれない?ただでさえ存在がウザいのに、絡んでくんなっつーの!」

「さすがウザ子、やることなすこと全部ウゼーッ!」「きゃはは!」


「……だ、だって貴女達、さっき話していたじゃない、私の体操服にお弁当の…」


「はー? 証拠あんのかよ、しょ・う・こ!」


「マジこれ冤罪じゃね?」


「やだー、ウチ等捕まっちゃう的なー?」


「………っ!」


気づいたら、私は手を振りかぶっていた。無意識だった。あまりのふざけた態度に、我を失っていたのだ。


―――パチンっ!


私の掌が、ジン…と、熱くなる。と、同時にクラスがざわめき始めた。


「え?なになに?喧嘩?」「おい、今宇佐さんが吉田叩かなかった?」「えー、マジかよ宇佐こええ…」


――違う。


―――違うのに……


「痛った…」


―――これは喧嘩ではなく、注意で…


「うわっ、宇佐さん最低!」「だから皆にウザ子とか言われるんだよ!」


――ちがっ…違うのに……っ! だって私は被害者で…っ!


そう頭では思うのに、周りのプレッシャーから咄嗟に出た言葉は



「ご、ごめんなさっ…」


目頭が熱くなる。ダメ…こんなヤツに泣かされたくない…泣きたく…ないのに…っ! 謝りたくなんか…っ!私は……っ!


と、急にクラスの扉が開く。


――ガラガラ…


クラスの人達の視線が一斉にそちらに向けられる。


「えっと…あー、いたいた…えっとなんだっけ? やべ、俺アンタの名前知らねぇわ」


そう言いながら、そいつは私の方へと向かってくると、ポケットからおもむろに箸を片方取りだし、


「はい、忘れもん」


と言って、私の手にそれを渡してきた。そして、あろうことか、この空気の中、そいつは私に言うのだ。



「やっぱさ、おまえ友達いねぇだろ? 俺と友達になろうぜ!」




――――最悪だと思った。











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