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素直さが眩しい彼女

作者: 西澤 瑠梨

ショートストーリー。バレンタインと絡めてありますが明るい話ではないので苦手な方はお気をつけください









来たる2月14日。





彼女は今年も、くれるだろうか





素直で可愛くて優しくて俺には勿体ないくらいの、彼女。あまりにも愛しくて手放したくなくて、仄暗い欲望が見え隠れする。

今年はクッキーか、ケーキか、それとも他の何かか。くれない可能性は、おそらく、というかほぼ、ない。それでも不安になってしまう自分がいた。



少し恥ずかしそうに、ちょっとだけ目線を外して、そっと差し出される箱。去年より上手くなったラッピングにいじらしい努力を感じる。可愛くて仕方がない。お礼の言葉だけでは足らず、思わず零れ落ちた笑みに、彼女は少し照れながら同じように微笑み返してくれた。ふと気づく。ラッピングに添えられたメッセージカードを縁どっているこの花言葉はアイリスだ。花言葉は、「あなたが大切」



彼女は無自覚に、俺の心の琴線に触れるのだ。





「なぁ、俺がもし遠くへ行くことになったらどうする」





彼女は素直だ。ちょっと顔を顰めて、嫌だなって思うよって。しょうがないことがあるのは分かっているけれど、でも嫌だと。そんなことを気負いなく言うのだ。その素直さが、少し妬ましくて、眩しい。



自分なら言えるはずもない。柵に囲まれずにはいられない。彼女と離れるのは嫌だ。それでも、彼女が自分と同じ思いじゃなかったら?思いの丈が等しくなかったら?そんなことばかり考えてきっと答えることも出来ずにうやむやにしてしまうだろう。

要するに怖いのだ。思いの丈をぶつけて、嫌われてしまわないか、逃げられてしまわないか。彼女のことは、好きだ。でもそれが愛か恋か、はたまた別の、ただの独占欲なのかわからなくなる。



どこかに閉じ込めて、鍵をかけて、一生俺だけを見て、俺だけに全てを捧げてくれればいいのに。彼女の瞳にうつるのが俺だけならいいのに。

そんなことばかり考えていたらいつの間にか彼女が俺の瞳を覗き込んでいた。




「好きだよ」




彼女は俺を真っ直ぐ見据えてそう言う。俺の瞳が不安に揺れていたから、と。

ああ、なんで、どうしてこんなにも彼女は。俺の心の琴線に触れてくるのだろう。



たまらなくなって彼女を抱きしめた。ごめん、と謝る俺に、なんで謝るの、と少し笑った彼女は綺麗で眩しくて、とても愛しくて。






あぁ、その笑顔ごと永遠に俺の腕の中に閉じ込めたいーーーーー













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