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疑殆帯同  作者: 穏田
第四章
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 確木しかもく女学校は森の中にあった。

 森の奥の奥の、そのまた奥。

 深い森の奥の中央に、その学校はあった。

 あったという表現は適切ではない――君臨していたのだ。その地は少女たちの楽園であった。

 大っぴらに男子禁制と口に出したりはしない。そういう時代ではないのだ。

 女人禁制、男子禁制と唱えたところで、昨今ではそれが通らないこともままあった。免罪符として成り立たない時代であった。

 男の庇護下から自立せよという風潮に合わせるように、自立した女が男を養う。そんなこともある現代社会では、性別に囚われていてはいけないと校長は言う。

 彼女は若く、精力的だった。前向きな女だった。

 校長の考えは実に合理的でシンプル。余地もない。

 伝統を重んじるべきと主張する周囲に「何をおっしゃいます」と微笑むのだ。

 その笑みに怯むことのない者が「校長!」と悲鳴を上げた。

「伝統とは、時流に染まってはいけないのです! 染まらぬからこそ伝統なのです!」

 それはもっともな言い分だった。文句の付け所のない立派な正論だった。

 それでも校長は譲らない。

 何も言わず、決意したことを粛々と着実に進めていった。

「いきなり共学にしようだなんて思ってないわ。女子校は女子校だからこそ価値があるのよ」

 しかし、と校長は続けた。「だからといって、女だらけの世界は駄目。いけないわ」

 そう思わない? ――聞きながら、彼女は長い髪を耳にかけた。

 パイプ椅子に座って、背筋を伸ばした駒緒は「はぁ」と気のない返事を返した。

「とても素晴らしいと思います」

「いけない理由に関しては言わないわ。それはまだ言わないの。誰にも言ったことないんだから」

「そうですか」

 興味はなかった。

 ただただ就職先が見つけることだけを祈っていた。祈られたくはない。祈るのみだ。

 これが就職活動において第一希望に考えている学校の面接だった。

 最初で最後にしたいと思っていた。

 校長は駒緒の答えに満足したようだった。足を組み直して「面接は以上よ」と言う。

「ありがとうございました」

「はい、さようなら」

 校長室を出る。

 掴んだ鞄の取っ手が指に食い込んだ。思わず溜め息が出る。

 今日の最終面接のために、どれだけの準備をしてきたか分からない。それが、たった3分にも満たない時間で終わった。鞄の中には、この学校の資料がぎっしりと詰まっている。

 そんなに短い時間で俺のことが分かってたまるかと舌打ちをした。

 次第に歩調が速くなっていく。

 振り向いた。

 誰かが付いてくるような気がした。

 クリーム色の廊下が延々と続いている。誰もいなかった。

 その先には誰もいなかった。後ろから付いてくるものはなく、影も形もない。それでも駒緒は知っている。知っているはずだった。

「――駒緒さん?」

 甘くかすれた声が彼を呼ぶ。

 ランドセルを背負った少女がこちらを見ていた。

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