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疑殆帯同  作者: 穏田
第三章
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 文化祭までには衣装が完成すると、目途めどが立った衣装係の女子たちが小さく歓声を上げる。

 きゃあきゃあと可愛らしい声を上げる様子は周りのクラスが授業中だからか控えめだった。隣のクラスの女子とは大違いだなと男子はヒソヒソと噂する。クラスごとに女子の種類が違うようだ。

 おれたちのクラスはまだマシと誰かが言えば誰もが深く頷いた。

「ゴミ袋ドレスから卒業できてよかったな、駒緒」

「俺は女装から卒業したい」

 劇の練習を始めてから、まれに姫と呼ばれるのが我慢ならない。姫と呼ばれるのに相応しいのは杏奈だと主張し続けていたが、舞台監督の当人に拒まれ続けている。

 やたらとスパンコールがくっついた完成間近のドレスはキラッキラしていて目に悪い。

 絶対着たくないと駄々を捏ねれば衣装係の女子に泣かれた。

 俺が泣きたい。

 継母役の礼治れいじが姉に借りてきたという地味なドレスを手に教室の隅でくるくる回る。羨ましい。俺も姉が欲しい。

「何で俺なんだよ」

「また言ってる」

 ちょうど教室に戻ってきた杏奈が、呆れた表情で駒緒の頭に軽く手を置く。自習中だからって校内をうろつくのはどうかと思う。そんなことをしているから俺なんかを見つけてしまうのだ。第二、第三の俺が出てきたらどうしようと内心恐々としている。

 ぐっ、と頭を掴む手に力が入る。

 何をしているのだろうと目を動かすと上履きを脱いでストッキングの先を引っ張っていた。短いスカートの中が見えそうだ。その罠にはかかるまいと視線を逸らそうとしたができなかった。

 それでも他の男子の視線も感じる。もったいないと思いながら杏奈の腰に腕を回して引き寄せた。

「パンツ見える」

 不思議そうに見上げてくるので正直に言えば、更に首を傾げる。

「見えないよ。中に穿いてるもん」

 そういうことじゃねぇんだよと言ったところで女子には分からないのだろう。突然足の爪先を引っ張り出す女子の気持ちも男には分からない。男女の違いってこういうことだ。

 少し強引に膝の上に乗せたせいでバランスが悪い。俺のことイスだと思えと言った途端、杏奈は遠慮なく座り直した。

「上履き。駒緒、上履き取って」

 足をパタパタ動かしながら彼女は振り向く。

 思わず、それ取ってやったら、なんて交換条件を提案する言葉が口から出た。

「今までどこ行ってたか、教えてくれたら取ってやるよ」

 杏奈がひどく嫌そうな顔をする。しかしこればかりは譲れない。こいつは放っておくとすぐにどこかへ行ってしまうのだ。

「職員室」

「何しに?」

「先生に勉強教えてもらってた」

「おまえ勉強できるだろ。もう自習中に出歩くの禁止な」

「うーん」

 曖昧に返事をして杏奈は視線をさまよわせる。

 面倒くさいと思っているときの対応だ。案の定すぐさま気付いた嶋が寄ってきてしまう。

「なにやってんの、おまえ」

 静かに寄ってきた山岸の視線が痛い。こいつも昔、杏奈ファンクラブとかふざけたものに入ってたことを思い出した。

 そんなにいけないことかと心のどこかが呟くが、聞かなかったふりをしてふたをする。

 だが、謝るつもりも全くない。

 最近の駒緒おかしいと言う彼女こそ、変わらなさすぎるのだ。

「なにやってんだろうなぁ」

 知らず知らずのうちに頭を抱えると、何も知らない山岸が傍らで溜息を吐いた。


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