三
キラキラ星からクリスマスキャロルに曲が移る頃、私はマスターが運んできたフライドポテトを口に運んだ。適度な塩気で実に美味い。
「風香。あーん」
何と無しに唐突にバカップルをする事にした私は、左手で持ったフライドポテトをカノジョの口元へと運んだ。
「あーん」
カノジョは少しだけ恥かしそうにしながら、小鳥のように口を開き、私の手のフライドポテトを食べた。
「うん。美味しい。飛鳥も、ほら、あーん」
お返しとばかりにカノジョも机にあった骨なしチキンを私の口元へと持ってきた。せっかくなのでいただく事にする。
バカップルぶりにも大分慣れた。
「今日は楽しかったわ」
「そうだな」
「飛鳥、本当に踊るの下手なのね」
「だからソーラン節しか踊れないんだって。小学生の時に習ったのがそれだけなんだって」
歌ったり踊ったりのクリスマスイベントも終わり、そろそろ日を跨ぐかと言う時間帯、私とカノジョは既に帰宅していた。
今はソファに座りながら何となしにだらだらとしている所である。
テレビも付けていない空間はとても静かで、私達の息の音が聞こえる程だ。
気付いたらカノジョが私の右手を握っていた。
それに私は眼を細める。
こうしてカノジョとクリスマスを祝うようになって四年になる。
思えば色々あった。
カノジョの彼氏に成った当初はあまり上手く彼氏を出来ていなかったと思う。
カノジョにどう接すれば良いのかが分からず、何度も失敗し、何度も危ない場面があった。
それでも、とりあえず今日この日を迎えるまで彼氏を続ける事が出来た自分を私は褒めて良いのだろう。
「ねえ、飛鳥」
カノジョが静寂を破った、とても静かな声で。
「何?」
カノジョに顔を向けると、私達の眼が合う。
カノジョの瞳の中に私の姿が写っていた。
「キス、して」
カノジョは瞳を閉じ、私は口元を笑わせた。
「喜んで」
ああ、確かに今の私は幸せである。