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花弔風月  作者: 満月小僧
私のカノジョへの秘密
16/42

 晴れて兄が彼女持ちと成ってから、私とカノジョ、正確には立花家と望月家の付き合いが増えた。カノジョは良く私達の家に来ていたし、兄もまた良くカノジョの家へと遊びに行っていたからだ。


 これはつまり、私とカノジョの会う回数が一気に増えたという事である。


 図書室でカノジョと兄を見ていただけの私が、カノジョと話すようになったのだ。


 とは言っても、私とカノジョが話していた内容は専ら兄についての事である。兄の好きな食べ物、好きなテレビ番組、好きな音楽、その他諸々、カノジョは私とつぐみに良く質問をし、私達がそれに答えていた。


 本当にカノジョは兄の事が好きだったのである。



 そんな糖尿病に成りそうな甘々な一年間が過ぎ、私が高校生に成った頃、つぐみも我らと同じ学校に入学し、兄とカノジョは受験生であった。


 兄の背を見習った結果か否かは定かでは無いが、私の成績はそれなりに上位に食い込んでいたため、私は兄と同じA組、成績優秀者クラスへと割り振られていた。


 しかしながら、兄と同じ成績優秀者クラスに居たとしても、私と兄の成績には大きな開きがあった。兄はカノジョを押さえて学年の首席を取っており、私はせいぜい第十位程である。


 悔しさを覚えなかったと言ったら嘘に成るが、私は誰よりも身近で兄の努力を見てきた人間であったので、妬ましいとは思わなかった。


 私がしてきた努力など、兄の半分に満たないだろう。


 まあ、とにかく我らが立花家は長男の大学受験というイベントを控え、家族全員で兄を支えるという事が決定した。


 私は心の底から一年間兄をサポートするぞ、と意気込み、決意を固めていた。今まで世話になった恩を少しでも返そうと思ったのだ。


 けれども、私達の決意を知ってか知らずか、兄は私達の手を煩わせる事は無く、自身を律してカノジョと共に受験勉強をしていた。


 私達はペダルを踏み外した自転車の様に、あらら、と出鼻を挫かれ苦笑したのを覚えている。



 兄の努力は着々と結果を出し続け、夏の模試の時点で兄は志望校であるY大にA判定を取っており、その成績が落ちる事は無かった。


 兄の濃密な勉強量が伺える。ストレスも凄まじかった筈だ。


 だと言うのに兄は機嫌が悪くなる事も無く、穏やかなままで私達家族に接し、カノジョとも良好な恋人の関係を続けながら互いを励まし合い勉強を続けていた。


 また、受験生の一年間だというのに兄はそれなりに大変な最後の高校生活を送っていて、兄の周りで起こっていた友人関係の青春的な問題をいくつも解決していたりしたのだが、全く兄は良く体力が持った物だ。


 このため、兄の友人であった人々は皆兄に頭が上がらず、兄とカノジョの交際を祝福していた。


 兄とカノジョは学校公認の誰もが認めるお似合いカップルであったのだ。



 そして努力を裏切る事も無く、兄とカノジョは共にY大へと合格し、高校生最後のイベント卒業式を涙無くては語れない感動的な結末で終え、晴れて大学生になるまでのモラトリアム、春休みを迎えた。



 何故私とカノジョが現在の様な状況に陥っている事の核心となる出来事が起きたのはこの期間である。

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