七
程なくして花火が上がる以外のイベントも無く今年が終了し、新年となった。
「「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」」
定型文と成っているやり取りを終えて、やっと私達が並んでいた行列が動き始める。
行列という物は動きが無い間は長く感じる物だが、いざ動き出してしまえば待ち時間が短く感じる物であり、体感的にはあっという間に私とカノジョがお賽銭を投げ入れる番と成った。
大国主神社の賽銭箱の周りには届かなかった小銭の山々が築かれていて、それらを回収する神社の人々の苦労が忍ばれる。
ここはしっかりと賽銭箱に五円を入れたいものだ。
「「せーの」」
私とカノジョは掛け声を合わせて、カノジョは右手で私は左手で五円玉を投げた。
二つの五円玉は放物線を描いたが、一つだけが賽銭箱に届き、一つが届かなかった。
「あらら」
届かなかったのは私の五円玉である。
まあ良い。そういう事もあるだろう。
その場で二礼二拍手一礼を行い、私は今年の願いを告げた。
内容は決まっている。
〝しっかりと全てを終らせられますように〟
一年の始まりに全ての終わりを願うなどやや矛盾しているかもしれないが、今のところ願いがこれしかないのだから仕方ない。
願いを終えた私とカノジョは脇に逸れ、おみくじを買った。
カノジョは大吉であり、私は末吉である。
「大吉だわ。幸先が良いわね」
「俺、末吉なんだけど」
「まだまだ運が上がるという意味なのだからこれもまた幸先が良いわよ」
カノジョのおみくじ論を聞きながら私達は人の流れに従って神社を後にした。
「じゃあ、家まで送るよ」
「ええ。エスコートよろしく」
深夜の時間帯、うら若き女性を一人で帰すなど彼氏として失格である。
立花家に帰宅した時には既に丑三つ時と成っていた。
家族は皆全員寝ているであろうという私の予想とは裏腹に、欠伸を噛み殺して帰宅した私を迎えるように二階からトントントンとつぐみが下りてきた。
「おかえり、兄ちゃん。あけおめ、ことよろ」
「ただいま。あけおめ、ことよろ。寝なくて良いのか?」
「冬休みは基本的に夜更かしするの。若さの特権だね。そろそろ寝るけど」
風呂は朝に入る事にして私も寝る事にしたが、その前にやる事がある。
私は居間へと入り、ある一角の前で正座した。
そこには線香とマッチに香典が置かれている。
私はマッチで火を点した線香を立てて、チーン、と鈴を鳴らす。
「あけましておめでとうございます」
手を合わせて眼を瞑る私の脳裏には見慣れた彼の姿がはっきりと浮かんでいた。




