に! 楓とカエデ
最後の数行は今日、他はいつ書いたかきおくがない…
「へー、ふーーん」
せっかく話してやってんのに、この反応ですか…。
五十センチぐらい離れたところに座っている少年、アキを横目で見ながら溜息をつく。
はぁ~~~……。
『誰』と言われたから、答えた。『どっから来たの』と言われたから、答えた。『なんで来たの』と言われたが、答えられなかった。自分でもわからなかったから。
自分なりに頑張って説明したつもりなのに、アキは暇そうに土いじりをしている。
「もう、いい。話さない」
むかついたから言ってやった。すると、予想外の反応。
言葉を吐いた瞬間、アキがばっ、とこちらをむいた。
「え、ごめん、ついっ・・・」
まさかまさかの反応に、こっちがたじろいてしまう。
「ご、ごめん…」
なんで私が謝らなきゃ……
「わかったよ。今回は許してあげるからさ」
「ほんと‼?」
目の色変えてきたよ。調子いー。少し呆れる。
「ねえ、カエデの木、見た?」
「え?」
カエデの木?そんな木、なかった気がするんだけど…
「その木、どの辺にあるの?」
「ん、少し前の開けたとこ」
もしかして、あの木のこと?(一話参照)
「あのさ、それ、ねじれた感じの?」
「うん」
それカエデじゃないんじゃ…
「カエデだよ!!!」
「ぇ!??読唇術?どうやって心読んだの!?」
そんなキレなくたっていいじゃん。
「だって、あれはカエデの木の形じゃないじゃん」
「ううん、あれ、カエデだよ。楓がいってるもん」
は?カエデが自分をカエデだって…、ここの植物は言葉もしゃべるの?
「ごめん、意味不明」
「え~~」
「わかるように説明して」
「は~~~ぃ」
「ねぇ、あの木、もっと近くで見てみた?」
言われて思い出すのは、木の空洞にいたあの少女。
「うん」
「中に女の子いたでしょ」
「あぁ、いたね」
「あの子の名前が楓なの」
「で、あの木もカエデ」
「はぁ」
「だぶんもう少しで目を覚ますと思う」
「どっちが?」
「人の方」
「なんで」
「もうすぐ春だから」
「今は冬なのね」
「たぶん」
「たぶん‼?」
たぶんって…どんだけ自分の周囲に無関心なの?
それ以前に、私そんな遠くの国にきてたの?
「で?」
「それだけ」
あぁ、そうですか。あっそ。
「これから行かない?そろそろな気がする」
「別に、良いけど」
☆★☆★☆★
数十分ぶりのカエデの木。先ほどと変わらず、どっしりと立っていた。
アキと二人で中をのぞく。
あれ?
いない。さっきまでいたあの女の子、楓ちゃん、だっけ?が、いなくなっていた。
「あ、今日だったんだ」
アキが木の上の方を見上げ言う。すると。
ひょこっ
枝の隙間から、一人の少女が顔を出した。
木漏れ日を浴びてキラキラ光るホワイトシルバーの髪、すきとおるコバルトブルーの瞳。
どこか神聖な感じのする彼女は、鋭い瞳でこちらをみていた。
と、突然木の上から飛び降りてきて、見事な着地。
「久しいな、アキ」